オゾン層 オゾン層に関する近年の動き・フロン規制以後

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 言葉 > 場所 > > オゾン層の解説 > オゾン層に関する近年の動き・フロン規制以後 

オゾン層

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/13 08:49 UTC 版)

オゾン層に関する近年の動き・フロン規制以後

2006年、オゾンホールは2050年頃にふさがると予想された
国立環境研究所の記者発表[23]によると、今後しばらくは大規模なオゾンホールが残るものの、2020年頃からオゾンホールが縮小し始め、2050年頃には1980年レベルまで回復されるという結果が得られたとのこと。今の規制の中で2050年頃にオゾンホール消滅の期待が持てるものの、同時に今後数十年間に渡ってオゾンホールの大きい状態が続くという予測結果が出ている。またフロンなどがモデルの想定以上使用された場合には、オゾンホールの回復は更に遅れるとも述べられている。
フロンガス規制が効果を発揮 - オゾン層が回復中
フロンガスなどの排出規制の効果で、破壊が進んでいたオゾン層は1997年を境に回復傾向にあることが分かった(2006年8月31日)。フロンガス排出規制の効果で、破壊が進んでいたオゾン層は1997年をピークに回復傾向にあるという研究報告が、8月20日に発表された[24]。この研究は、米ジョージア工科大学の研究チームが米航空宇宙局 (NASA) と米海洋大気庁 (NOAA) のデータに基づき行ったもの。地球の成層圏内のオゾンの量について、気球や地上に設置された機器、NASAやNOAAの衛星などから得られた25年分の観察結果を分析した。今回の研究報告によると、北極/南極上空の成層圏内のオゾンは、1979年から1997年にかけて減少が続いていたが、1997年を境に増加傾向にあるという。オゾン量の増加のうちの約半分は、成層圏上部(地表から11マイル以上)で観察されている。オゾン量の変化には、太陽黒点周期や季節要因、成層圏内の風向きなど様々な要因が考えられるものの、この成層圏上部のオゾン量の増加は、ほぼ完全にフロンガスなどの排出規制の効果によるものだという。オゾン層破壊の人体への悪影響が最初に認識され始めたのは1980年。このレベルまでオゾンの量が回復するのは、今世紀半ばごろになる見込みだという。
2006年、気温の変動によって南極上空のオゾンホールが過去最大に
NASAなどによると、南極上空のオゾンホールが過去最大になる見込み[25]。南半球の冬期に、南極上空の気温が例年よりも低かったことが原因。これから夏に向かう南半球では、紫外線の量が例年以上になりそうだという(2006年10月21日)。米航空宇宙局 (NASA) と米国海洋大気庁 (NOAA) は10月19日、南極上空のオゾンホールが拡大し、9月下旬には過去最大となったと発表した。オゾンは、太陽からの有害な紫外線の多くを吸収し、地上の生態系を保護する役割を果たしているとされている。特に北極・南極上空を中心に、1979年以降減少傾向にあったが、フロンガス排出規制の効果もあり、1997年を境に増加傾向にある、とNASAとNOAAは8月に報告していた。今回報告された南極上空のオゾンホール拡大には、成層圏の気温が関係しているという。NOAAのデータによると、2006年9月後半の南極上空の成層圏の気温が、華氏で約9度、平均よりも低かったという。この時期のオゾンホールの大きさは、890万–930万平方マイル(北米大陸ほどの大きさ)から、1,060万平方マイルほどに拡大していた。対流圏および成層圏のフロンガス量は減少傾向にあるが、40年以上も大気の中に留まるため、南極地域上空での成層圏内のフロンガスの減少は、今後5–10年の間は年0.1–0.2%程度にすぎないという。このため年によっては、南極上空の気温変動の影響が、ガス減少の効果を上回ってしまうことがあるという。
2008年時点での最新状況・気象庁「オゾン層観測報告:2007」[26]
気象庁の最新データ・「オゾン層観測報告:2007」/2008/04/23によると、オゾンホールが注目された1980年代を中心にオゾン量の減少が進み現在も少ない状況が継続しており、南極オゾンホールは最大面積は依然として大きいと見られている。
しかし
  • 1980年の南極付近のオゾンホールは300万km²南極大陸比0.2倍程度であったが、2005年以後の現状では2500-3000万km²大陸比2.2倍程度に達している。(1992年には既に2500万km²に達していた)
  • 1980年時点の世界のオゾン総量を基準に考えた場合、2005年以後の現状では-3%強となっている。(1992–2001のピーク時で-6%)
  • 「オゾン層観測報告:2007」の図1世界のオゾン全量月平均値の推移、図5南極オゾンホールの最大面積の推移、を見ると有意な変化が著しい。
2008年現在、いまだオゾン総量は少なくオゾンホールは大きいが1980–2001頃までのようにオゾン総量減少一途オゾンホール拡大一途な状況から停滞、若しくは底を打っており事態の悪化傾向は止まって年度ごとの振幅を繰り返しながら緩慢な回復傾向を示している状況である。
国連環境計画などの予測
2023年1月9日、国連環境計画(UNEP)などは、南極上空のオゾン層が2066年ごろに回復する見込みだとする予測を公表した。30年以上前から続けてきたオゾン層破壊物質の規制を進めることが前提で、「オゾンの回復は軌道に乗っている」とした。オゾンホールが出現する前の1980年の水準までオゾン層が回復するのは南極で2066年ごろ、北極で2045年ごろ、その他の地域で2040年ごろまでとみられている[27]

  1. ^ a b 小倉 2016, p. 25.
  2. ^ 田中 2017, p. 17.
  3. ^ a b 環境省. “オゾン層を守ろう 2オゾン層の破壊とは?”. 2012年1月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年9月29日閲覧。
  4. ^ D. W. Fahey (2006年). “TWENTY QUESTIONS AND ANSWERS ABOUT THE OZONE LAYER: 2006 UPDATE”. United Nations Environment Programme. 2018年6月30日21:55:36時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年9月29日閲覧。
  5. ^ a b ozonosphere”. AMS Glossary. Glossary of Meteorology. American Meteorological Society. 2007年2月14日13:32:31時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年9月29日閲覧。
  6. ^ オゾン層の保護のためのウィーン条約 和文仮訳”. 環境省. 2011年9月29日閲覧。
  7. ^ Susan Hunt MA. “The History of the Ozone Layer”. www.ozonedepletion.co.uk. 2009年3月27日閲覧。
  8. ^ Bob Keesee. “HISTORY OF THE OZONE LAYER”. www.albany.edu. 2009年3月27日閲覧。
  9. ^ a b 島崎達夫『成層圏オゾン』東京大学出版会、1989年、224頁。 
  10. ^ 村上信明 (2020年6月). “第9講 フロンによるオゾン層の破壊”. 長崎総合科学大学. 2020年11月9日閲覧。
  11. ^ オゾン物語 オゾン層の話……地球のオゾン層の歴史”. エコデザイン株式会社. 2020年11月9日閲覧。
  12. ^ 川上紳一『生命と地球の共進化』日本放送出版協会〈NHKブックス〉、2000年、170-192頁。ISBN 4-14-001888-7 
  13. ^ 笹野泰弘; 遠嶋康徳 (2008年1月23日). “大気中酸素濃度の減少量から二酸化炭素の陸域生物圏吸収量の推定に成功 -放出された化石燃料起源の二酸化炭素の30%が海洋に、14%が陸域生物圏に吸収-”. 国立環境研究所. 2020年11月9日閲覧。
  14. ^ a b c 環境科学解説「オゾン層の破壊」 フロンによるオゾン層の破壊”. 国立環境研究所 (2004年11月10日). 2020年11月9日閲覧。
  15. ^ S, Chubachi (1984). “Preliminary result of ozone observations at Syowa from February 1982 to January 1983”. Mem. Natl. Inst. Polar Res., Spec. Issue 34: 13–19. NAID 10007208325. https://cir.nii.ac.jp/crid/1570854174570702592. Preliminary Result of Ozone Observations at Syowa Station from February 1982 to January 1983
  16. ^ 宮寺達雄 (2001年2月). “亜酸化窒素(N2O)問題とその低減技術”. 資源環境技術総合研究所. 2013年3月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月9日閲覧。
  17. ^ A. R. Ravishankara, John S. Daniel, Robert W. Portmann. Nitrous Oxide (N2O): The Dominant Ozone-Depleting Substance Emitted in the 21st Century. http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/1176985. 
  18. ^ 誠吾, 天知 (2013). “ヨウ素の地球化学と微生物: ヨウ素の揮発,濃縮,酸化,還元,吸着,脱ハロゲン化反応を触媒するバクテリア”. 地球化学 47 (4): 209–219. doi:10.14934/chikyukagaku.47.209. https://www.jstage.jst.go.jp/article/chikyukagaku/47/4/47_KJ00009158964/_article/-char/ja/. 
  19. ^ 環境科学解説「オゾン層の破壊」 オゾン層と紫外線”. 国立環境研究所 (2004年11月10日). 2013年4月3日13:13:17時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月9日閲覧。
  20. ^ Craig S. Long, and S. Zhou, S. K. Yang, and M. Gelman (2007年). “Variability of the Antarctic Ozone Hole during the Past Decade as Dictated by the Stratospheric and Tropospheric Meteorology”. ams.confex.com. 14th Conference on Middle Atmosphere. American Meteorological Society. 2007年11月15日閲覧。 “JP1.5”
  21. ^ Sinnhuber, B.-M.; Gathen, P. von Der; Sinnhuber, M.; Rex, M.; König-Langlo, G.; Oltmans, S. J. (2005-11-24). “Large decadal scale changes of polar ozone suggest solar influence” (英語). Atmospheric Chemistry and Physics Discussions 5 (6): 12103–12117. https://hal.science/hal-00301949. 
  22. ^ 大気の構造と流れ”. 気象庁. 2020年11月9日閲覧。
  23. ^ 大気圏環境研究領域 大気物理研究室. “環境省・独立行政法人国立環境研究所「成層圏化学気候モデルを用いたオゾンホールの回復予測」について”. 国立環境研究所. 2008年7月27日閲覧。
  24. ^ NEDO ワシントン事務所. “NEDO海外レポート NO.913, 2003. 8. 20”. 新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO). 2009年4月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年7月27日閲覧。
  25. ^ 気象庁. “昭和基地上空のオゾン全量が過去最小を記録”. 気象庁. 2008年7月27日閲覧。
  26. ^ 気象庁. “成層圏のオゾンは依然として少ない状態”. 気象庁. 2008年7月27日閲覧。
  27. ^ 南極のオゾン層「66年ごろ回復」 破壊物質の99%削減 UNEPなど:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞. 2023年1月12日閲覧。


「オゾン層」の続きの解説一覧




オゾン層と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「オゾン層」の関連用語

オゾン層のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



オゾン層のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのオゾン層 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS