ウルトラマンUSA ウルトラマンUSAの概要

ウルトラマンUSA

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/04 01:21 UTC 版)

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概要

M78星雲怪獣惑星ソーキンの爆発によって地球に飛来したソーキン・モンスターを追ってやってきた3人のウルトラ戦士が、アメリカ空軍のアクロバットチーム「フライング・エンジェルス」のメンバーと一体化を経てウルトラフォースとなり、地球の各地に落下したソーキン・モンスターに戦いを挑む姿を描く。

ウルトラマンキッズ』を除けば、本作品は『ザ☆ウルトラマン』以来10年ぶりに制作されたアニメでのウルトラマン作品である。『ウルトラマン80』の終了後の1982年、日本でのテレビシリーズは休止中であった中、円谷プロダクションはウルトラシリーズのアメリカにおけるキャラクター展開を見据えて現地法人ウルトラ・コムを設立し、ハリウッドでの劇場映画を目指して『ULTRAMAN Hero from the stars』の脚本が作成されたが、プロモーションや制作予算などの条件を考慮して、同社社長の提案によってまずはコストの大きい実写特撮ではなく長編アニメーション作品を製作することとなった[2][6]。本作品は1987年にパイロット版として製作され、好評であればテレビシリーズ化[4]や実写作品の製作も予定されていたが、興行的には失敗となり、シリーズ化は実現しなかった(ただし、視聴率は同時期の子供向けプログラムで第3位という好成績を収めた)[3][2]。アメリカでの実写作品は、その後にオーストラリア製作の『ウルトラマンG』(1990年)の成功を経て『ウルトラマンパワード』(1993年)が製作されている[7]

ウルトラシリーズでは初となるチームで活動するウルトラマンという設定で[6]、主人公は「フライング・エンジェルス」のパイロット、チャックスコットベスの3人で、それぞれウルトラマンチャックウルトラマンスコットウルトラウーマンベスに変身する。変身の際には特に用具は用いない。彼らはM78星雲から来たヒーローであり、設定上は他の「ウルトラ兄弟」たちも存在する世界が舞台になっているが、本編中では語られない。後年の映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(2009年)では当初は登場予定は無かったが、「設定上さしさわりないなら出したい」というスタッフの意向で[8]宇宙警備隊の隊員としての姿が描かれた。

アメリカでの公開を見据えて、個性的なメンバーによるヒーローチームという要素はアメリカのヒーローアニメの王道であり[9]、戦士として男性のウルトラマンと肩を並べて戦う「ウルトラウーマン」の登場やキスシーン、主人公の恋愛関係など、これまでのウルトラシリーズに無かった試みも多く取り入れられた[2]円谷皐は「(私が)ウルトラマンを男女3人にしたのですが、熱烈なファンのいる日本でなら抵抗があったでしょう」と語っている。

当初、ハンナ・バーベラ側から提示されたデザインでは、ウルトラマンがマントを付けていた。これは、アメリカでは「マントも付けずに空を飛ぶヒーロー」という概念が理解できなかったからだと言われている[3][10]。日米間で何度も打ち合わせを続け、ようやく決定稿のデザインに落ち着いたという。

モンスターデザイナーの一人である雨宮慶太は、本作品以前に企画されていた実相寺昭雄監督の映画『ウルトラQ 怪獣協奏曲モンスター・コンチェルト』用の怪獣デザイン公募に応募していたことがきっかけで起用された[出典 2]

国内公開は他の劇場版ウルトラシリーズの多くを手がけた松竹ではなく東宝の配給である。アメリカでは1987年10月12日にニューヨークPYX局など全米で初放送され、同時期の子供向けテレビ番組で第3位の視聴率を記録した[9][2]

ウルトラマン

ウルトラマンスコット

諸元
ウルトラマンスコット
ULTRAMAN SCOTT[9]
身長 ミクロ - 82 m[出典 3]
体重 0 - 6万4千 t[出典 4]
握力 9万9千 t[15][14]
腕力 21万 t[16][14]
走行速度 マッハ8[17][14]
飛行速度 マッハ24[14]
水中速度 マッハ3[18][14]
年齢 1万2,000歳[14]
出身地 M78星雲・惑星アルタラ[5][14]

ソーキン・モンスターを追って地球へやってきたM78星雲からやってきたウルトラ戦士の一人。アメリカ空軍のアクロバット飛行チーム「フライング・エンジェルス」のスコット・マスターソン大尉と一体化し、当初は彼自身が危機に陥ると変身できたが、中盤では自らの意思で変身できるようにもなった。腹部に青色の星型をしたバックルを持ち、太陽エネルギーが消耗すると頭部にあるビームランプが青色から赤色に点滅し警告音を発する[14]。ガルバラードを発電所に投げつけるなど、やや荒っぽい戦い方を得意とする。

必殺技
グラニウム光線[出典 5]
両腕に体内のグラニウムエネルギーを集中させ、両手を十字に組んで放つ必殺光線。体内の大量のエネルギーを使用する[22]。3戦士共通の技だが[19]、単独で使用したのはスコットのみである。3人で同時に発射すればウルトラ・シンクロビーム[出典 6]となって威力が増す。
ウルトラ・プッシュビーム[21][14]
両腕をグラニウム光線とは逆の形に組んだのち、立てた左腕から帯状に発射する、黄色の光線。ウルトラマンチャックの「ウルトラ・バブル・ビーム」に包まれたズーンに放ち、アンドロメダ星雲の惑星・M11に向けて押し出した。
ウルトラ・エナジー・ボール[出典 7]
腰のバックルから放出されたエネルギーを光球状に集中・凝縮して投げつける[22]。ガルバラードの本体イームにダメージを与えた。
ウルトラ・スライサー[出典 7]
大気中のグラニウムエネルギーの分子を円盤ノコギリ状[22]にして投げる技。ウルトラ・エナジー・ボールでダメージを受けたイームに2連続で投げつけて、4つに切り裂いた。それからグラニウム光線を放ち、イームを消滅させた。
ウルトラ投げ[9][14]
強大なパワーで相手を投げ飛ばす技。150m以上の体長を誇る巨大なガルバラードを、サンフランシスコの市街地から、沖合にあるアルカトラズ島まで、一気に投げ飛ばした。
ウルトラアタック[出典 8]
猛スピードで突進したのち、全体重を敵にぶつける肉弾技で、巨大な敵を数百m先に吹き飛ばすほどの威力を持つ。ニューヨークの市街地を破壊していたキングマイラの第3形態に向かって空中から繰り出し、一時的にひるませた。

ウルトラマンチャック

諸元
ウルトラマンチャック
ULTRAMAN CHACK[9]
身長 ミクロ - 79 m[出典 9]
体重 0 - 6万8千 t[出典 9]
腕力 22万 t[16][24]
飛行速度 マッハ22[24]
年齢 1万4,000歳[24]
出身地 惑星アルタラ[5]

ソーキン・モンスターを追って、他のウルトラチームと共に地球へやってきたウルトラ戦士の一人。スコットと同様、フライング・エンジェルスの一人チャック・ギャビン大尉と一体化した。冷静に物事を対処し、他の2人に的確な指示を出す指令塔に近い[24]。太陽エネルギーが減ると額にあるビームランプが青色から赤色に点滅し警告音を発する。

必殺技
グラニウム光線[19][21][24]
両手を十字に組んで放つ必殺光線。3戦士共通の技。ウルトラマンチャックが単独で使用したことはなかった。
ウルトラ・バブル・ビーム[出典 10](ウルトラ・バブル[22][26]
両手先から放射する防御エネルギー光線。敵を光の球に包んで動きを封じる。球体の中に入れば、バリヤーとしても使える。ズーンを保護するためと、キングマイラを閉じ込めて太陽に投げ込むために使用。
テレパシー[24]
他の2人のウルトラマンや人類と意思を通じ合わせる際に用いる超能力。

ウルトラウーマンベス

諸元
ウルトラウーマンベス
ULTRA-WOMAN BETH[9]
身長 ミクロ - 76 m[出典 11]
体重 0 - 5万4千 t[出典 11]
腕力 18万 t[16][24]
飛行速度 マッハ24[24]
水中速度 マッハ2.5[18][24]
年齢 1万歳[24]
出身地 惑星アルタラ[5]

ソーキン・モンスターを追って、他のウルトラチームと共に地球へやってきた女性ウルトラ戦士。他の2人と同様に、フライング・エンジェルスのベス・オブライエン中尉に宿った。太陽エネルギーが減ると額にあるビームランプが青色から赤色に点滅し警告音を発する。ウルトラシリーズで初めて「ウーマン」が名称に付いたキャラクターである[27]。日本で映画が公開された当時の名称はウルトラウーマン[12][28]

必殺技
グラニウム光線[19][24]
両手を十字に組んで放つ必殺光線。3戦士共通の技。
ウルトラ・スパウト[出典 12]
水面に立ち、周囲の水をウルトラテレキネシスによって吸い上げて、手先から噴射する技[22]。海水に弱いグリンショックスを倒した。姿を隠したキングマイラを探すためにも使用。
ウルトラチョップ[出典 13]
体内のエネルギーを手先から放出しながら、手刀を敵に叩き込む攻撃。グリンショックスの触手をたやすく切り裂いた。
ウルトラパワー[出典 13]
自身の何倍もある敵を投げ飛ばす怪力技[25]

3戦士の合同技

ウルトラ・シンクロビーム[19][21][29]
ウルトラマンスコット、ウルトラマンチャック、ウルトラウーマンベスが同時にグラニウム光線を放つことで生まれる光線技で、単独で発射する場合の何倍もの破壊力に強化する。キングマイラ第4形態に対して繰り出したが、テレポーテーション能力によってかわされてしまった。
トリプルパワー[出典 14]
3人でキングマイラの3本の尻尾を掴み、投げ飛ばして太陽に叩き落とした。

注釈

  1. ^ 書籍『ウルトラマン大辞典』ではE.M.M.と表記している[38]
  2. ^ 33年ぶりに演じることとなった古谷はスコットのことをすっかり忘れていたため、本作品のBDを購入して当時の自分の声を聴いてから収録に臨んだという[44]

出典

  1. ^ a b c d 特撮全史 2020, p. 93, 「ウルトラマンUSA」
  2. ^ a b c d e f g h i UPM vol.37 2022, pp. 20–21, 「地球を救うために戦うウルトラの戦士」
  3. ^ a b c 世界に息づく怪獣王(ゴジラ)の遺伝子第3回 アメリカとゴジラ”. メディア芸術カレントコンテンツ. 文化庁 (2019年2月28日). 2020年8月22日閲覧。
  4. ^ a b 白書 1991, p. 230, 「ウルトラマンUSA」
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 円谷プロ全怪獣図鑑 2013, pp. 200–201, 「ウルトラマンUSA」
  6. ^ a b c HISTORICA 2022, p. 34, 「ウルトラマンUSA」
  7. ^ 円谷英明「第三章 厚かった「海外進出」の壁」『ウルトラマンが泣いている 円谷プロの失敗』講談社講談社現代新書〉、2013年、81 - 83頁。ISBN 978-4-06-288215-6 
  8. ^ 大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』劇場パンフレットにおける坂本浩一監督のインタビューより。
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao 画報 下巻 2003, pp. 54–57, 「ウルトラマンUSA」
  10. ^ 二見書房『懐かしのヒーロー ウルトラマン99の謎』(著:青柳宇井郎・赤星政尚)p.123の記述より。
  11. ^ 「スーパー戦隊制作の裏舞台 雨宮慶太」『スーパー戦隊 Official Mook 20世紀』《1991 鳥人戦隊ジェットマン講談社〈講談社シリーズMOOK〉、2018年5月10日、32頁。ISBN 978-4-06-509613-0 
  12. ^ a b c d e f g 白書 1991, p. 37, 「ウルトラマンUSA」
  13. ^ a b c d e f g h i j 大辞典 2001, pp. 37–60, 「う」
  14. ^ a b c d e f g h i j k l m n o UPM vol.37 2022, p. 23, 「ウルトラマンスコット」
  15. ^ ウルトラヒーローナンバーワン 2012, p. 17.
  16. ^ a b c ウルトラヒーローナンバーワン 2012, p. 16.
  17. ^ ウルトラヒーローナンバーワン 2012, p. 6.
  18. ^ a b ウルトラヒーローナンバーワン 2012, p. 9.
  19. ^ a b c d e f 超技全書 1990, p. 116
  20. ^ a b c 大辞典 2001, pp. 112–121, 「く」
  21. ^ a b c d e f g h 必殺技SG 2014, p. 231, 「ウルトラヒーロー主要必殺技リスト」
  22. ^ a b c d e 完全超百科 2004, p. 63.
  23. ^ a b c 超技全書 1990, p. 117
  24. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p UPM vol.37 2022, p. 24, 「ウルトラマンチャック、ウルトラウーマンベス」
  25. ^ a b c d 超技全書 1990, p. 118
  26. ^ 全ウルトラマン増補改訂 2018, p. 49.
  27. ^ マガジン2020 2020, p. 77, 「ウルトラ雑学3 アニメーションという技法に見るウルトラマンの表現」.
  28. ^ 「週刊ウルトラマンオフィシャルデータファイル」の記載より[要文献特定詳細情報]。ソフビ人形の初期発売分には「ウルトラマンベス」の刻印が足裏にある。1990年代中ごろのウルトラマンフェスティバルのチラシからウルトラウーマンベスの表記が使用されている。
  29. ^ a b UPM vol.37 2022, p. 22, 「3大ウルトラ戦士」
  30. ^ a b c d e f g UPM vol.37 2022, p. 25, 「ウルトラフォース」
  31. ^ a b c d 大辞典 2001, pp. 176–185, 「す」
  32. ^ 大辞典 2001, p. 213, 「ち」.
  33. ^ 大辞典 2001, p. 288, 「へ」.
  34. ^ a b 白書 1991, p. 146, 「ウルトラフォース」
  35. ^ a b c d e UPM vol.37 2022, p. 26, 「ウルトラフォース装備、ロボトリオUSA、ウルトラフォースメカニック」
  36. ^ a b c d e 白書 1991, p. 120, 「劇場用ウルトラ怪獣」
  37. ^ a b c d e f UPM vol.37 2022, p. 27, 「ソーキン・モンスター」
  38. ^ a b c 大辞典 2001, p. 95, 「か」
  39. ^ a b 大辞典 2001, p. 111, 「き」
  40. ^ 「SPECIAL INTERVIEW 石原慎一」『スーパー戦隊Official Mook 20世紀』《1999 救急戦隊ゴーゴーファイブ講談社〈講談社シリーズMOOK〉、2018年6月9日、21頁。ISBN 978-4-06-509611-6 
  41. ^ 『ウルトラマンUSA』27年ぶりに復活!幻の日米合作アニメが、鮮やかな映像でファン待望のブルーレイ化!! - 電撃ホビーウェブ
  42. ^ 円谷プロ全怪獣図鑑 2013, p. 201, 「column 実写版スーツ」.
  43. ^ a b フィギュア王292 2022, pp. 78–79, 「ウルトラギャラクシーファイト」
  44. ^ a b “古谷徹が33年ぶりにウルトラマンスコット再演!「ギャラファイ」第3弾、4.29配信決定”. シネマトゥデイ (シネマトゥデイ). (2022年3月29日). https://www.cinematoday.jp/news/N0129355 2022年3月29日閲覧。 
  45. ^ 「海外版・ウルトラシリーズ(文・聖咲奇)」『不滅のヒーローウルトラマン白書』(初版)朝日ソノラマ〈ファンタスティック・コレクション・スペシャル〉、1982年12月31日、56頁。雑誌コード:67897-80。 
  46. ^ 権利者を捜しています | 公益社団法人著作権情報センター CRIC”. 2018年4月14日閲覧。
  47. ^ (タイトル無し)”. 公益社団法人著作権情報センター. 2018年4月14日閲覧。

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