H定理
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H定理(エイチていり、英: H-theorem)とは、理想気体のエントロピーが不可逆過程では増大することを示す統計力学の定理。すなわち、熱力学第二法則を分子論的に説明するものである。1872年、ルートヴィッヒ・ボルツマンがボルツマン方程式の考察から導いた。
H定理は、微視的には可逆(時間反転可能)な力学的過程からエントロピー増大則を導くということで、その正当性について数多く議論がなされてきた。力学からの不可逆性の導出に関しては、H定理以外にも多くの試みがなされているが、現在もなお物理学の未解決問題の一つと考えられている。
なお、この定理は現在ではエイチ定理と呼ばれるが、H はラテン文字のエイチではなくギリシャ文字 η (イータ)の大文字である、とする意見もある[1]。
H定理
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H定理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/07 16:21 UTC 版)
詳細は「H定理」を参照 孤立した粒子系を考え、時間の関数 H(t) を H ( t ) ≡ ∬ f ln ( f ) d v d r {\displaystyle H(t)\equiv \iint f\ln(f)\,\mathrm {d} {\boldsymbol {v}}\,\mathrm {d} {\boldsymbol {r}}} で定義する。ただし、積分は速度に関しては全速度、空間座標に関しては粒子系が占める全領域にわたって行う。すると上記ボルツマン方程式の両辺に ln f を乗じて v', r について積分し、変形することにより d H d t = − 1 4 ⨌ ( ln ( f ′ f 1 ′ ) − ln ( f f 1 ) ) ( f ′ f 1 ′ − f f 1 ) g d Ω d v d v 1 d r {\displaystyle {\frac {\mathrm {d} H}{\mathrm {d} t}}=-{\frac {1}{4}}\iiiint (\ln(f'f_{1}')-\ln(ff_{1}))(f'f_{1}'-ff_{1})g\,\mathrm {d} \Omega \,\mathrm {d} \mathbf {v} \,\mathrm {d} \mathbf {v_{1}} \,\mathrm {d} \mathbf {r} } が得られる。ここで被積分関数は (ln x − ln y)(x − y) の形をしていて常に正または0であるから d H d t ≤ 0 {\displaystyle {\frac {\mathrm {d} H}{\mathrm {d} t}}\leq 0} が結論される。これがボルツマンのH定理である。そして H はこの粒子系のエントロピー S と S = − kH と関係付けられるから(k はボルツマン定数)、これは粒子系のエントロピーが時間とともに増大するか一定値にとどまるだけで、減少することはないことを意味する。そしてさらに、それが一定値にとどまるためには全領域で f' f'1 = f f1 が成立することが必要となる。そのとき f はマクスウェル分布であることが示される。 なお、孤立系でなくても粒子の空間分布が一様な場合は r の積分を任意の有限領域に限定することにより、dH/dt に対し上記と同じ形の式が導かれ、同じ結論が得られる。しかし、空間的に非一様な分布の場合には余分な項が生じ、上の議論が成り立たない。これはその領域と隣接領域との間にエントロピーのやり取りが生ずるので、エントロピーの非減少は保証されないことを意味する。 H定理はボルツマンの時代から力学の可逆性との関係で活発な議論を巻き起こし、それがこの定理の物理的内容の理解を深めた。またその概念はその後、ボルツマン方程式を離れて広く論じられた。
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