郷土文化や文芸振興に関する取り組み
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「帯広市図書館」の記事における「郷土文化や文芸振興に関する取り組み」の解説
帯広市図書館では、帯広・十勝にまつわる郷土文化の継承・発信、あるいは地域の文芸振興を図るための取り組みを行っており、中でもアイヌ文化や郷土史資料を編纂した「帯広叢書」、地域住民の応募作品によって作られる「市民文藝」の刊行は半世紀以上続けられている。伝統的な事業の継続とともに新しい試みもあり、2004年には帯広出身の歌人、中城ふみ子の功績を称えた「中城ふみ子賞」が創設され、2010年には小学生から18歳を対象とした文芸誌「ヤング文芸」が創刊された。以下で、それぞれの内容を説明する。 帯広叢書 アイヌの研究者であった吉田巖が整理・収集した資料を伝えるために刊行されている叢書である。吉田は教員としてアイヌ児童を教えるかたわら、赴任地域のアイヌ文化や郷土史を調べ膨大な記録や資料を残した。調査成果は吉田自身によって学術雑誌などで発表されるとともに、その草稿や資料が帯広市教育委員会によって編纂され、1955年から「帯広市社会教育叢書」として発刊された。吉田が高齢になったことから、1960年12月の第6巻発行をもって刊行が中断されたが、1963年の吉田の没後、遺された資料(以下、「遺稿資料」)の多くは遺族らの厚意によって帯広市に寄贈された。「遺稿資料」は帯広市図書館が保管することとなり、1964年から叢書の発行が再開された。1972年の第16巻からは「帯広叢書」に改題された。年1回程度の発行を続け、2013年3月には第65巻が発行されている。アイヌの文化・歴史の分野において、個人が遺した記録・関係資料を継続的に整理・刊行している数少ない取り組みの一つである。 市民文藝 「地域に根ざした独自の文化の創造及び発展を目指し、地域文芸の振興を図ること」を目的とし、地域住民からの公募作品によって作られる文芸書である。十勝管内の住民であれば年齢に関係なく応募でき、帯広市教育委員会が委嘱した編集委員会による選考を経て、優秀作品には市民文藝賞などが贈られるほか、入選作品が「市民文藝」誌に掲載される。募集ジャンルは小説、戯曲、文芸評論、随筆、ノンフィクション、童話、詩、短歌、俳句、川柳と10分野にわたる。1961年11月に第1号が発行されて以来、地元の書き手の発掘と育成、そして地域の文芸愛好者のための発表の場として年1回程度、発行が続けられ、2012年12月に第52号まで達した。市民文藝賞の受賞者の中には、のちに全国公募の文学賞を受賞するなどして作家や評論家となった者も多く、過去には春山希義、海保進一、近藤潤一、神谷忠孝らの作品が市民文藝誌上に掲載されている。 ジュニア文芸 子どもたちの創作意欲と表現力の向上を図り、十勝の文芸文化のすそ野を広げる活動として、2010年に誕生した公募文芸誌である。ジュニア文芸の創設に先立ち、市民文藝において3年間ほどジュニア文芸の特集コーナーが設けられ、特集コーナー内での優秀作の選考が行われた。2010年に星槎大学帯広サテライトが共催に加わりジュニア文芸として独立し、年1回作品の募集・選考が行われて入選作品が掲載される文芸誌が発行されるようになった。2015年度の第6回募集からは市の直営事業となり、「とかちジュニア文芸」へとリニューアルした。2017年度の募集時点において、とかちジュニア文芸の応募対象は十勝管内在住の小学生以上18歳以下で、扱うジャンルは小説、童話、戯曲、詩、短歌、俳句の6種類である。さらに、子どもたちの書く力や題材を見つける力を育てる取り組みとして、ジュニア文芸の選考委員が講師をつとめる文章教室も開催されている。 中城ふみ子賞 帯広で生まれ育ち、一時代の短歌の流れをつくったと評価される歌人中城ふみ子の功績を称え、新たな文化を創造・発信することを目的として、没後50年となる2004年に「中城ふみ子賞」が創設された。全国でも珍しいとされる個人名を冠したこの短歌賞は隔年で開催され、『自らの「生きる」姿勢』をテーマとし、新人五十首詠入選にちなんだ50首の連作短歌を全国から公募している。応募作品の選考は帯広出身の時田則雄ら数名の歌人によって行われ、入選作品は『短歌研究』誌上で発表される。
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