近世博物誌
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 09:09 UTC 版)
スイスの博物学者コンラート・ゲスナー (1516-1565) が著した図入りの博物学書『動物誌(英語版)(原題:Historia animalium)』(1551-1558年、チューリッヒ大学刊)は、今では架空の怪物と見做されている数多くの未確認生物をも紹介しており、同書には、「有翼で四脚の蜥蜴様ドラゴン」ではない、「有翼の蛇 (winged serpent)」「冠をかぶった蛇 (crowned serpent)」「有翼で二脚の蜥蜴様ドラゴン (winged dragon)」など、タイプの異なる数種類のドラゴンが図示されている。日本の博物学者・荒俣宏 (1947- ) の指摘によると、実物の標本が存在しないそれらの怪物図譜は、文献の情報が不正確で非現実的であると知りつつも標本の図版を忠実に模写するよう努めた結果であった。当時は怪物の偽造標本も出回っていたが、ゲスナーは『動物誌』最終巻(1558年刊)にて、乾した鱏(えい)に細工を施してドラゴンに仕立てた怪しい標本について触れており、また、イタリアの博物学者ウリッセ・アルドロヴァンディ (1522-1605) も著書 "De piscibus libri V, et De cetis lib. vnus"(1613年、ボローニャ大学刊)内の魚類の部で同じように紹介している。一方で、アルドロヴァンディはドラゴンに関する著書 "Serpentum, et draconum"(1640年刊)で、エチオピアのドラゴンとされる標本を掲載した。イングランドの牧師エドワード・トプセル(英語版) (c1572-1625) が編んだ『四足獣誌および蛇の話(原題:The History of Four-Footed Beasts and Serpents)』(1608年刊)や、ポーランドのスコットランド人博物学者ヨハネス・ヨンストン (1603-1675) の『禽獣虫魚図譜(原題:Historiae naturalis de quadrupedibus libri, cum aeneis figuris)』(1657年刊)も、ゲスナーの著作の怪物誌としての側面を受け継ぎ、同様にドラゴンの図版を掲載している。 1 2 3 4 5 6 1. ドラゴンの柱頭彫刻 / フランス中部にあるモザック修道院(英語版)所有(モザック石像陳列館収蔵)。 2. 律修司祭オドマール(ランベールのサントメール;Lambert de Saint-Omer)が編纂した装飾写本『花咲ける書(英語版)(原題:Liber Floridus)』(1460年成立)に描かれたドラゴン 3. 錬金術の寓意図としてのウロボロス / 1678年発表の銅版画。 4. コンラート・ゲスナー『動物誌(英語版)(原題:Historia animalium)』の最終巻(第5巻)に掲載されているドラゴンたち 5. エドワード・トプセル(英語版)『四足獣誌および蛇の話(原題:The History of Four-Footed Beasts and Serpents)』に掲載の1図 "winged dragon" / 1658年の木版画挿絵。この挿絵は "Dragon" 章(701-705頁)の "winged dragon" 節(705頁)に掲載されている。ヒューストン大学図書館(英語版)(その中核である MDアンダーソン図書館;MD Anderson Library)所蔵。 6. フランスの民間伝承(英語版)に登場するドラゴン「グラウリ(英語版)」にちなんだ、フランス北東部の都市メスのグラウリ祭における行列。馬9頭立ての巨大なフロート車に乗ったグラウリの像が貴族の行列とともに街を巡っている。行列の先には馬4頭立てで小ぶりのフロート車も見えており、そこには何らかの名士であろう人物が乗っている。19世紀半ばの木版画。
※この「近世博物誌」の解説は、「ドラゴン」の解説の一部です。
「近世博物誌」を含む「ドラゴン」の記事については、「ドラゴン」の概要を参照ください。
- 近世博物誌のページへのリンク