貯蔵デンプンの改質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/15 16:18 UTC 版)
「遺伝子組み換え作物」の記事における「貯蔵デンプンの改質」の解説
デンプンは、グルコースのポリマーで、直鎖構造のアミロースと枝分かれ構造をもつアミロペクチンから構成されている。アミロースとアミロペクチンの分子量や含量や枝分かれ頻度によって物性が異なる。デンプンは植物のプラスチドで生合成され、特にデンプン合成が盛んでデンプンを貯蔵しているプラスチドをアミロプラストとよぶ。細胞質からプラスチドに輸送されたグルコース-1-リン酸やグルコース-6-リン酸やADP-グルコースはプラスチド中で最終的にADP-グルコースとなり、ADP-グルコースのグルコース残基はデンプン合成酵素によって伸長中のアミロースやアミロペクチンの非還元末端のグルコース残基の4位の水酸基と脱水縮合して新たなα-1,4グルコシド結合を形成して取り込まれる。プラスチド中のデンプン合成酵素はデンプン粒結合型デンプン合成酵素 (GBSS: granule-bound starch synthase)と可溶性デンプン合成酵素(SSS: soluble starch synthase)に大別される。GBSSはアミロースの生合成に関与している。SSSによって合成途中のα-1,4グルコシド結合のグルコース残基の直鎖が、枝分かれ酵素によって一部切断され、その切断されて生じた還元末端のグルコース残基の1位の水酸基と直鎖部分の中間のグルコース残基の6位の水酸基の間でα-1,6グルコシド結合が生じる。こうして生じた分子中に存在する複数の非還元末端はSSSによって伸長するとともに枝分かれ酵素によって新たに非還元末端の側鎖が次々と形成される。一方、余分なα-1,6グルコシド結合部分は枝切り酵素によって切断され側鎖は整理されて、アミロペクチンは合成される。つまり、アミロースとアミロペクチンの含量はGBSSとSSSの活性によって制御されている。よって、GBSSが欠損していればアミロペクチンのみを含むモチ性となり、SSSの活性が低下していると高アミロース含量となる。そこで遺伝子操作によってGBSSやSSSの生産量を制御して、デンプン組成を改変できるようになった。 GBSS生産量が抑制されてモチ性に変換された"Amflora"と名付けられたジャガイモ品種(EH92-527-1系統)が既にBASFによって開発され、チェコ、スウェーデン、ドイツで商業栽培されている。
※この「貯蔵デンプンの改質」の解説は、「遺伝子組み換え作物」の解説の一部です。
「貯蔵デンプンの改質」を含む「遺伝子組み換え作物」の記事については、「遺伝子組み換え作物」の概要を参照ください。
- 貯蔵デンプンの改質のページへのリンク