翻訳開始
翻訳開始
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/23 03:26 UTC 版)
大腸菌の翻訳開始はリボソームがサブユニットに解離して、mRNAにリボソーム小サブユニット (30S) (Sはスベドベリ (Svedberg) の略で、遠心器にかけたときの沈降速度を表す単位である。Sの値が大きいほど沈降速度は速い)が結合することから始まる。mRNAのリボソーム結合部位は『Shine-Dalgarno配列』としてよく知られており、その配列は以下の通りである。 5'-AGGAGGU-3' この配列と16S rRNAが塩基対を形成して、リボソーム小サブユニットが結合できるようになると考えられている。Shine-Dalgarno配列は絶対的なものではなく、比較的似た配列でも認識される。 Shine-Dalgarno配列に結合したリボソーム小サブユニットは遺伝子の開始コドン(AUG:メチオニンに該当)までmRNA上を移動し、メチオニン-tRNAが開始コドンに結合する。大腸菌の開始コドンに使用されるメチオニンは、水素原子の部分がホルミル化(-COH基が結合)してN-ホルミルメチオニン (N-formylmethionine) となる。このアミノ酸がついた開始tRNAをfMet-tRNAifMetで表す。 mRNA、リボソーム小サブユニット、fMet-tRNAifMetの結合した複合体を開始複合体と呼ぶ。なお、これらの反応は、翻訳開始因子 (translation initiation factor) (IF1,2,3) というタンパク質によって触媒される。翻訳開始の最終段階、つまりポリペプチド鎖が形成される直前にリボソーム大サブユニット (50S) が開始複合体に結合する(その際、グアノシン三リン酸のリン酸が外れて、エネルギーを供給する)。この時に、翻訳の反応が可能になる70Sリボソームとなる。 大サブユニットが会合した際、Shine-Dalgarno配列と開始コドンの絶妙な距離により、先に述べたリボソームのP部位に開始コドン(およびそこに結合したホルミルメチオニン-tRNA)が来るようになる。なお、開始コドンが理想的な距離からずれた場合、翻訳速度が遅くなってしまう。
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