熟成したリースリングにおける「石油香」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/27 07:34 UTC 版)
「リースリング」の記事における「熟成したリースリングにおける「石油香」」の解説
リリース直後のリースリングは、著しい石油香(ぺトロール香)を有することがある。これはケロシン、潤滑油、ゴムを連想させる香りと表現されることもある。石油香は熟したリースリングの複雑性のある香りの一部をなすものであり、経験豊富な飲み手はこれを追求することもあるが、不慣れであったり若々しくフルーティーな香りのワインを好む者にとっては不快に思われることもある。このように若いリースリングの石油香にはネガティブな側面を感じ、またこの品種の若くてフルーティーなワインが好まれるケースは、アルザスやその他ワイン輸入国と比べて、ドイツでより一般的である。そのため、一部のドイツの生産者は、石油香をワインの欠点とみなして、仮に熟成に向かないワインを造るためにコストが上がろうとも石油香を避けようと試みることがあり、特に低価格帯のワインで顕著である。このようなこともあり、ドイツワイン協会はドイツ語版のワインのアロマホイールから好ましい香りとして石油香を載せなくなった。ドイツ語版のアロマホイールは、特にドイツワインに当てはまるものとされているが、アン・C・ノーブル教授が最初にアロマホイールを作成したときに石油香が含まれていたという事実とは矛盾する。 石油香は、1,1,6-トリメチル-1,2-ジヒドロナフタレン (TDN) という化合物に由来すると考えられている。これは熟成の間に前駆体であるカロテノイドが酸により加水分解されることによって生じる。そのため、ワインが熟成した際にどの程度TDNが生じるか、あるいはどの程度石油香が生まれるかは最初にワインに含まれる前駆体の濃度によって決まっている。ブドウ中にカロテノイドが生成される条件として知られている条件から考えるに、ワインが豊富なTDNを持つ可能性が高くなるのは、以下のような時である。 ブドウが良く熟している。そのために収量を減らしたり、遅摘みにする。 日照時間が長い。 水分量が少ない。灌漑を利用せず、乾燥した気候の土地で、暑く雨の少ない年であればこの条件を満たしやすい。 酸が豊富である。 これらの条件は、一般的には高品質なリースリングの産出に貢献すると考えられている。すなわち実際のところ石油香は優れたワインで生まれやすく、収量を多くして造られた単調なワインではあまり見られない。そういった単調なワインは特にニューワールドでよく見られ、灌漑に頼っていることも多い。
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