無脊椎動物の自切
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/13 03:10 UTC 版)
節足動物では、昆虫類・クモ類・多足類・甲殻類などでは足(脚)を自切するものが多い。これらの仲間では、体の成長には脱皮が必要なので、何回かの脱皮によって再生する。脱皮回数が制限されている動物の場合、完全には再生できない場合もある。また、成虫が脱皮しないもので、成虫が自切した場合では、当然ながら再生できない。カニなどの魚介類に含まれる節足動物では、自切することで経済価値が大きく変動してしまうものもいる。 環形動物では、ミミズ・ゴカイに簡単に体が切れるものがある。ミミズの場合、後体部から前半身が再生しないものが自切とみなされるが、ミズミミズ科の一部のように、連鎖体が分裂して増殖するものは自切とは言わない。同じ環形動物でも、ヒルはまず体が切れない。ユムシ類には、吻を自切するものがある。 軟体動物では、腹足綱のミミガイやヒメアワビ、ショクコウラなど、分類群にかかわらず殻に比べて軟体が大きい巻貝類に腹足後端を自切して逃げるものがある。ウミウシ類にも突起や体の一部、あるいは胴体のほとんどを切り捨てるものがあり、ヒメメリベ Melibe papillosa の背側突起は自切脱落し易く、チギレフシエラガイ Berhella martensi は背面が4区画に分割されていて、区画ごと自切することからその和名が付けられている。同じくウミウシの一種であるゴクラクミドリガイ属 Elysia のコノハミドリガイ E. atroviridis とクロミドリガイ E. marginata は、心臓や消化器系を胴体に残したまま頭部のみを切り離し、頭部から胴体を再生することができる。切り離された胴体も3-4ヵ月間は生きているが頭部は再生されずに死ぬ。この属の種は摂取した藻類から葉緑体を細胞内に取り込んでおり、その光合成によってエネルギーを得ることができるため、一時的に消化器系を失っても生き残ることができると考えられている。この大胆な自切の理由として、体内に寄生したカイアシ類を胴体ごと捨て去る防御機構として進化した可能性が推定されている。 陸生種では、石垣島と西表島に生息するカタツムリの一種イッシキマイマイが、天敵のイワサキセダカヘビから逃れるために尾(腹足の後端部分)を切断することが知られている。実験でイワサキセダカヘビにイッシキマイマイを与えたところ、45%の個体が自切によりイワサキセダカヘビの捕食から逃れたとされる。自切を行うカタツムリは確認されている限りイッシキマイマイのみで、他のカタツムリで実験を行ったところ捕食されてしまった。また自切によって自分を守る行動は子供のイッシキマイマイに多く見られたという。 二枚貝ではマテガイ科などが水管を簡単に自切して穴深く逃げ込むが、水管には最初から切れ目となる横筋が見られる。頭足類では、通常の自切とは異なるが、アミダコなどタコの一部に交接の際にオスの交接腕の先端が自切してメスの体内に残存し、栓のような役割を持つものがある。 棘皮動物では、ウミユリ・ウミシダ類とクモヒトデ類に腕を自切するものが多い。これらの動物では、腕は再生するが、腕から本体は再生しない。ヒトデは腕から胴体を再生できるが、自切のように腕を切り離すものはいない。
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