決定の影響
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少年審判における事後救済の門戸を広げた本決定は、その後の少年再審手続き立法化に向けた流れを形作り、そして2000年の少年法改正にまで至る源流となった。 再抗告申立書で弁護側が展開した「デュー・プロセスに基づけば少年法の規定とは別に再審の提起が可能」との理論については、本決定では触れられなかった。しかしその理論は、本決定直後の1983年10月になされた流山中央高校事件再抗告審判例における「憲法第31条が保障するデュー・プロセスの趣旨は、少年保護事件において保護処分を言い渡す場合にも当然推及される」との団藤重光、中村治朗両裁判官による補足意見に踏襲されている。この流山事件再抗告も、本決定要旨3・要旨4が先行していなければ三行決定で棄却されていた可能性がある。1987年には通行区分違反という小さな事件について、最高裁が本決定要旨4に従い個別救済した事例も生まれている。 また同時期には、1959年に窃盗罪で福井家裁から少年院送致決定を受けた元中学生が、本決定に刺激を受けて、事件から四半世紀を経ての保護処分取消しを申立てた。しかし結果は、保護処分終了後の取消しは許されない、とする本決定要旨2を補強する1984年の判例を生むに終わった。また、保護処分取消しの遡及効と一事不再理効を否定した本決定要旨2に対しては、不利益再審を許容しかねない、との批判が生じた。そのため、非行事実の不存在の場合には保護処分を取消しても少年法第46条但書を適用外とすべき、あるいは処分取消決定自体に遡及効を認めることで、再審判や刑事訴追を遮断すべき、などの議論も生まれた。 その後、要旨2を補強するものとして「不処分決定は少年にとって利益な処分であるから抗告は認められない」とする1985年判例や、「成年に達し保護処分が終了した場合、非行事実が一部不存在であっても残余の事実で保護処分が必要とされる場合、あるいは新たな保護処分が存在する場合、処分取消しは許されない」とする1991年の草加事件再抗告審決定が続いた。しかし、2000年の少年法改正によって 保護処分が終了した後においても、審判に付すべき事由の存在が認められないにもかかわらず保護処分をしたことを認め得る明らかな資料を新たに発見したときは、前項と同様とする。ただし、本人が死亡した場合は、この限りでない。 とする第27条の2第2項が新設された。これによって「保護処分の継続中」という処分取消しの要件が撤廃されたため、本決定要旨2はその役割を終えた。 また、事実認定の厳格化を指向する本決定は、少年審判にも刑事裁判と同様の方式性(具体的には、検察官関与による対審構造や、検察側の不服申立権)を導入すべきとする議論を生み、2000年の少年法改正によってこの両者も部分的に認められることとなった(同法第22条の2第1項および第32条の4第1項)。
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