日本に俳諧ありて亀鳴きぬ
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季 節 | 春 |
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評 言 | 斯界では、今、日本語で俳句を書く外国人が注目されている。マブソン青眼氏、ドゥーグル・J・リンズィー氏共に日本語での句集を出し、詩人のアーサー・ビナード氏はエッセーの中に俳句や短歌を潜らせる。彼らのそのボキャブラリーの豊かさには舌を巻く。 作者カン・キドン氏は、1937年、高知県生まれの在日コリアン、季語と定型に拘り、歴史的仮名遣いを踏襲する。 20代後半から横山白虹に師事、のち福岡から毎月、東京の「寒雷」句会に出向いて加藤楸邨の謦咳に触れるなど、「30から40代は生活の中心に『寒雷』があった」と云う。 第4句集までは、『 掲句、上五は、客観性に重きを置いた出だしであり、普遍的で、自ずとこの国の文学の歴史にまで踏み込もうとしている。 この句の“俳諧”は、「‥俳諧の呼称を捨てて、俳句と称することによって、子規はその近代化に成功した」と云う山下一海氏のそれよりも、『広辞苑』に云う広義の解釈が適う。手元にある冊子の裏表紙に、「俳諧自由 金子兜太 篠原君へ」とのサインがある。この“俳諧”である。 作者は、“亀鳴く”と云う古典的季語をして、文芸における遊びごころと日本人の感性の豊かさを代弁させているのではないか。俳人姜琪東ならではの俳句観が書かれていよう。 日本を「母国」と詠み、企業家として成功を収めた後は、出版社「文學の森」を設立して、句集の出版や月刊「俳句界」の発行、各種業績の顕彰など斯界の発展に意を注ぐ。 (写真:荒川健一) |
評 者 | |
備 考 |
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