放射性廃棄物最終処分場問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 00:01 UTC 版)
「矢板市」の記事における「放射性廃棄物最終処分場問題」の解説
「塩谷町#指定廃棄物最終処分場候補地」も参照 福島第一原子力発電所事故に伴い発生した廃棄物のうち放射性セシウム濃度が8千Bq/kg超の汚泥や焼却灰などは「指定廃棄物」として放射性物質汚染対処特措法に従い国の責任で処分することとされている。2012年(平成24年)4月18日、横光克彦環境副大臣が福田富一知事に栃木県内で発生した指定廃棄物の最終処分場建設の方針を示した。同年7月19日、環境省による県内自治体を対象とした最終処分場の候補地選定についての説明会が行われた。 同年9月3日、指定廃棄物の最終処分場の候補地に矢板市塩田の国有林が提示された。環境省からの提示を受けて遠藤忠市長は「(市民感情を考えると)受け入れることはできない」と拒否することを表明した。同月4日、地元自治会は最終処分場受け入れを拒否する方針を決定。同月8日には矢板市議会が候補地の白紙撤回を求める意見書を全会一致で可決し国に送付し、矢板市と隣接する塩谷町の町議会でも同月13日に、さくら市の市議会でも同月19日に同様の意見書を全会一致で可決し国に送付している。翌10月12日には高根沢町の町議会でも同様の意見書を全会一致で可決しておりこれで塩谷郡市全ての市町議会が白紙撤回で一致することになる。 一方、同月9日には地元住民が「指定廃棄物最終処分場設置反対同盟」を結成し、翌日には看板設置と署名活動に着手した。同月13日には矢板市区長会が「候補地の白紙撤回を求める要望書」を国へ提出することと最終処分場建設に対する反対署名運動を行うことを決定した。また、この日の区長会に出席した遠藤市長は「オール矢板で反対運動を起こし、阻止していかなければならない」と訴えた。 同月14日には環境省による県内自治体を対象とする初の説明会が県庁で行われた。説明会で環境省は最終処分場候補地を選定した経緯と安全性を説明したが、自治体側からは候補地と関谷断層との関係などについての質問が出た。 同月24日には最終処分場建設に反対する「指定廃棄物最終処分場候補地の白紙撤回を求める矢板市民同盟会」が発足した。矢板市内で24日夜に行われた設立会議には約60団体、約1500人が参加した。 同年10月3日、市は最終処分場建設に反対する23,590人分の署名が集まったことを明らかにした。同年9月1日時点での市の人口は34,970人で人口の約3分の2の署名が集まったことになる。また、これとは別に独自に反対署名を集めていた指定廃棄物最終処分場設置反対塩田地区同盟は15,906人分の署名が集まったことを同月16日に明らかにしている。約4万1500人分の反対署名は同月22日に環境省に提出された。 同月10日、遠藤市長が茨城県高萩市の草間吉夫市長と矢板市役所で会談した。高萩市は茨城県の指定廃棄物の最終処分場の候補地に選定されており、会談で候補地の白紙撤回に向けて連携することで合意した。 同月16日、矢板市内で行われた市長会議でこの問題について「矢板市と同じ立場を共有するべきだ」などの意見が首長から出た。同日には矢板市議会が候補地選定の白紙撤回への協力を求める要望書を福田富一知事に提出している。また、同月18日には矢板市議会の正副議長が栃木県関係の国会議員に候補地選定の白紙撤回を求める要望書を提出している。 同月18日、遠藤市長が記者会見で市役所内にプロジェクトチームを立ち上げ候補地選定の問題点の調査を開始したことを表明した。 この問題に対する栃木県議会の各会派の対応については、とちぎ自民党は候補地選定の白紙撤回を求めないとしている。民主党・無所属クラブは選定過程を問題視しているものの自民と同様に白紙撤回は求めていない。みんなのクラブと公明党議員会は白紙撤回を求めている。また、福田富一知事は自身は中立の立場で臨むことを表明している。 また、栃木2区選出の福田昭夫衆議院議員は指定廃棄物を福島第一原子力発電所敷地内で一時保管すべきと主張している。この主張に対して佐藤雄平福島県知事は福島・栃木両県の関係悪化の可能性を指摘しており、これを受けて福田富一知事は福田議員を批判している。 なお、栃木県内の指定廃棄物の保管総量は2012年5月末時点で9107m3にもなっており、那須塩原市の3668.5m3、那須町の1445.2m3、大田原市の1231.8m3と北那須3市町はいずれも保管量が1000m3を超えている。大田原市では基準超の焼却灰の保管量が限界に近付いたため2011年10月に剪定枝などの収集を停止する事態に陥っている。 同年12月2日、矢板市民同盟会は候補地選定の白紙撤回を求める集会を市内で開き約8000人が参加した。同年12月16日の第46回衆議院議員総選挙では与党民主党は大敗し自民党と公明党が政権を奪還した。 2013年2月25日、環境省は候補地選定をやり直す方針を表明した。栃木県と茨城県のほか、候補地が決まっていなかった宮城県、群馬県、千葉県についても新たな方針で候補地を選定する。環境省は候補地選定にあたって自治体との協議を重視するという。 その後、市町村長会議を開催して選定の際の「ローカルルール」を決定した。「ローカルルール」では国有地の他に県有地も候補対象とされた。2014年1月、県はこれに基づき県有地22か所4814ヘクタールを対象として報告した。 同年7月30日、環境省は指定廃棄物の最終処分場の候補地として塩谷町上寺島(寺島入)の国有地を提示した。提示を受けて塩谷町の見形和久町長は明確に反対することを表明している。
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