四つの物語
四つの物語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/10 15:02 UTC 版)
「U.S.A. (小説)」の記事における「四つの物語」の解説
「U.S.A.」三部作は、20世紀初頭のアメリカ社会で居場所を見つけるのに苦労していた、12人の登場人物の生活に関連している。各登場人物は、その子供時代から間接話法によって読者に提示される。背景が描かれない幾つかの登場人物は、各登場人物の間の橋渡しのような役割を持つ。 「カメラ・アイ」の節は「意識の流れ」によって書かれており、子供時代から政治的な作家に至るまでのドス・パソス自身の発展を辿る、自伝的な芸術家小説でもある。ドス・パソスがサッコとヴァンゼッティの処刑について述べる「カメラ・アイ」第50節には、「U.S.A.」三部作の内最も有名な文章が含まれている。「よし、アメリカは二つの国民だ("all right we are two nations.")」。 「ニューズリール」の節は、「北緯四十二度線」では「シカゴ・トリビューン」、「一九一九年」と「ビッグ・マネー」では「ニューヨーク・ワールド」の、見出しと記事の断片、及び人気曲の歌詞で構成される。サッコとヴァンゼッティの評決が発表される「カメラ・アイ」第50節に先行する「ニューズリール」第66節には、「インターナショナル」の歌詞が含まれている。 「伝記」の節は、歴史上の人物の説明である。 これらの伝記の中で最も頻繁に語られているのは「アメリカ人の遺体」であり、これは第一次世界大戦で殺された無名の兵士の物語であり、「一九一九年」を締めくくる。 これらの物語間の分離は、主題別というよりも寧ろ文体的なものである。一部の批評家は、「ビッグ・マネー」に登場する架空の人物、メアリー・フレンチと、ジャーナリストであるメアリー・ヒートン・フォースの関係を指摘し、架空の人物と伝記の厳密な分離を疑問視している。新聞記事からの首尾一貫した引用もしばしば伝記に織り込まれ、それらと「ニューズリール」の厳密な分離に疑問を投げ掛けている。 三部作の断片化された物語の構成は、後に英国のSF小説家ジョン・ブラナーの作品に影響を与えた。また、ジャン=ポール・サルトルの三部作「自由への道」にも影響を与えた。
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