動力学理論からのアプローチ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/02 10:28 UTC 版)
動力学理論では、ケルビン温度は、温度(熱)平衡状態における、1 自由度当たりの運動エネルギーの平均値に関連づけられる。 エネルギー等配分の法則(equipartition theorem)によると、系の個々の自由度あたりの運動エネルギーは kBT/2 となる。ここで、 T は絶対温度、 kB はボルツマン定数である。3次元空間で、粒子の並進自由度は 3 なので、単原子気体粒子1個は、3kBT/2 なるエネルギーを持つ。 例えば気体状態の酸素分子 (O2) は、並進に加えて回転(2自由度)と振動(1自由度)を持つ。それぞれの1自由度あたりの運動エネルギーは、 kBT/2 であるが、振動のモードは、常温を含む低い温度領域では量子力学的に凍結されるので、分子一個当たりの全エネルギーは 5kBT/2 となる。また、高い温度領域では調和振動子と近似される振動のモードとなり、運動エネルギーおよびそれとほぼ等しいポテンシャルエネルギーが加わるので、分子一個当たりの全エネルギーは 7kBT/2 となる。並進、回転、振動などの各モードはこのような一定の制約のもとに等配分され、その(地下水位のような)統一尺度が温度と言えるが、ポテンシャルや周期性の観点から、最も制約の少ないのが気体の並進エネルギーである。 固体の温度エネルギーは、デバイ温度より高い温度領域では原子1個あたり、 6kBT/2 で近似される(デュロン=プティの法則)が、これも、原子の 1 個が3自由度の調和振動子を構成するからである。 エネルギー等配分の法則は、混合気体における異種気体粒子相互においても成り立つのみならず、こうしたことは結果であって、実は、この結果に近づける均等化作用が存在すると考えられる。この均等化作用が物体中の空間的不均一に対して働く結果は熱伝導と言えるが、同じ空間を占めていても、(例えば透明な)物質と輻射場とが、異なる温度を長時間保持するケースは考えられ、この場合は、それぞれの温度を分けて考えるべきである(輻射の温度は、そもそも常識的に定義できない場合もある)。 温度は統計的な実体なので、空間的、時間的に、やや広い計測範囲が必要であり、気体であれば、その粒子が複数回衝突する時間や空間が必要である。例えば気体の並進、回転、振動といった運動のモードは、このような時空の範囲では十分に(先に述べた制約のもとに)均等化すると考えられる。しかし、マクスウエルが指摘している様に分子の回転、振動といった運動のモードは温度に依存して励起されるが、温度には寄与しないことに留意する必要がある[2]。いわゆる「断熱自由膨張」などはあくまで例外的な過渡現象である。
※この「動力学理論からのアプローチ」の解説は、「温度」の解説の一部です。
「動力学理論からのアプローチ」を含む「温度」の記事については、「温度」の概要を参照ください。
- 動力学理論からのアプローチのページへのリンク