判比量論残巻
主名称: | 判比量論残巻 |
指定番号: | 2438 |
枝番: | 00 |
指定年月日: | 1988.06.06(昭和63.06.06) |
国宝重文区分: | 重要文化財 |
部門・種別: | 書跡・典籍 |
ト書: | |
員数: | 1巻 |
時代区分: | 奈良 |
年代: | |
検索年代: | |
解説文: | 『判比量論』は新羅の僧元暁(六一七~?)が咸亨二年(六七一)に撰した唯識の書で、唐や日本での諸書に引用され、因明の学説に大きな影響を与えたが、その本文は長らく亡佚したものとされ、その内容が知られなかった。本巻は神田家旧蔵本で、近時大谷大学の有に帰した巷間新出の写本で、残巻ではあるが『判比量論』の現存唯一の写本である。 本巻は、本文部分の三紙一〇五行と末尾の偈および識語の五行の断簡とからなり、新補の表紙を装した巻子本である。本文の内容は各項目別に番号を付して書かれ、本巻はその七の途中より十四の途中までを存し、各項ごとに先行する諸説に対する元暁自らの論を立てている。書写の体裁は、淡墨界を施こした穀紙に一行一九~二〇字に全文草書で一筆に書写し、各項の番号は上欄外に記し、文中一部に本文と同筆にて見せ消ち、脱字補入がある。末の五行の断簡には偈二行に次いで「判比量論 一巻」の尾題および元暁が咸亨二年七月十六日に撰述した旨の識語がある。識語の部分には「内家私印」の朱方印が三顆捺され、また同印が現第二紙と第三紙の継目裏に一顆、第三紙の末の裏に半存している。 本文の書風は、草書であるが一字ずつ離して書き、起筆に力を入れず、丸い字形で草書の古様を示している。この種の草書による仏書の断簡は「東寺切」と呼ばれ、空海筆と伝えられるが、本巻はその書風および光明皇后所用といわれる「内家私印」の捺されていることから、奈良時代の書写になるものと考えられる。正倉院文書によれば、天平一二年(七四〇)頃より数回にわたって『判比量論』の書写がなされたことが知られ、その料紙として二五紙が用いられている。本巻は本文三紙と末尾五行のみの残巻ではあるが『判比量論』の現存唯一の伝本として仏教史研究上に価値が高く、また奈良時代の草書で書かれたまとまった遺品として書道史上にも貴重である。 |
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