傾斜畑
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/20 20:13 UTC 版)
北原貞蔵『暮らしとことば』「傾斜畑」より一部抜粋(出典:)。 共通語訳 ここの場所の野菜畑は少しばかりは平のところがあるが半分程も行くと坂になりだんだんと勾配がきつくなってくる。 それですので畝を作る場合には中程まではたいらでよいですがそれからが坂になっているので大変だ。 お父さんはいつも肥え土が下へいってしまうからといっては いつも下の端から畝を作っていく。 僕にはなかなかじょうずにはできない。 なにしろ下の方から後ろ向きになって坂を登るのですから倍も体を曲げなければ出来ませんので 少し作業しただけでもう腰が痛くなってくる。 それだけならまだ良いが鍬がどうしても深く入ってしまう。 さきほどから僕の姿をじっと見ていたお父さんがそんな格好では畝は作れないぞといった。 普通の畑よりかかがまなければ鍬をつかえない。 上の方から畝立てを始めればとても楽だと思うんだがそんなわけにもいかず傾斜畑は骨がおれて大変である。 それに次の畝との間隔も大きくなったり小さくなったりしてきたりしてきたのでお父さんがお前の畝は太いところや狭いところがあって丁度蛇が蛙を呑んだようだと言われた。 本当にそういわれればそんなような畝になってしまった。 上に盛り上げた土で出来上がった畝が埋まったりして浅くなったりする。やむなくもう一度手直ししながらどうやら全面積の半分くらいは出来上がってきた。 お母さんが下の方からお茶を持って登ってきた。 お父さんが明日はお父さんはほかのとこへ仕事に行かなければならないから精出して仕事を頼むよといった。そうして今度はその畝が出来上がったら休憩しようといった。 僕は今度は休憩出来るかと思って馬力をかけて畝をつくった。 やがてお母さんが休憩しませんかねといって下の石垣のところへ莚を敷いて呼んだ。 著者は駒ヶ根市中沢、2004年出版 ここんとこのさえんばたわひらっばただもんで ちーっとばかしなるいこーべだが半分くれーいくちゅーとだんだん坂がきつくなってくる。 そいだもんで いをかうときにゃとてもごしてー。 とーちゃわ いっかな肥え土が下えいっちゃいかんといっちゃ下のくろからはねーる。 そいだもんで俺もやるが中々うまくいかん。 なんしろ べーも体を曲げにゃならんもんで 腰がじきに痛くなる。 そいだけならまんだいいが鍬がどうしても深くへーっちゃう。こんねん骨ばっかしおるんじゃかなわん。 さいぜんから俺のしこーを見ておったとーちゃが そんな しこーじゃいをかえんぞといった。 なんしろ てーらの畑よりかこのがらにゃ 鍬をつかえん。 上のくろから畝立てをはねーりゃうんとらくだに ひらっぱたわこっぺーだもんで えれー。 次の畝と次の畝とのえーさがでかくなったりせべくばったりしたもんでとーちゃが おめーの畝わふてーとこや せめーとこがありゃがって へんびがげーろを呑んだよーだと言った。 ふんと(ー)にそーいわれりゃ ほんに へんびが げーろを呑んだよーな畝になっちゃった。 上え盛り上げた土で畝がいかっちゃったりしちゃってあせーとこなんかできたりする。そいだもんで そこんとこをもう一度しゃくりあげたりしてどーにか畑の半分くれーわできた。 下のほーからかーちゃがお茶をさげーてやってきた。 明日からおりゃ ほかんとこえ仕事にいかにゃ ならんもんで わりゃせーって やってくりょといいながら こんだーそのうねができたらいっぷくしめーかといった。 俺わこんだー休めるかと馬力をかけて鍬を動かした。 やがてかーちゃがいっぷくしめーかといって下のくろの石げーきのはたんとこえ莚をひいてよばった。
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