例解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/03 09:43 UTC 版)
この話はミネソタ州立大学ベミジ(Bemidji State University)のブライアン・ドナヴァン(Brian Donavan)博士のウェブ・ページにあったもので、もとはアール・ナイホルム(Earl Nyholm)博士の話。ナイホルム博士、または「オチーンコァニカヌ」(英:Otchingwanigan、オ: Ojiingwanigan) は、ミシガン州の上半島のかた。
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例解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/25 10:13 UTC 版)
例えば、日本語の 「枯れ木」 [kaɾekʲi] という単語と、 「瓦礫」 [gaɾekʲi] という単語とを較べてみると、両者は語頭の子音( 「枯れ木」では [k]、「瓦礫」では [g] )だけが異なっており、日本語話者はこの違い(無声音か有声音かの違い)によって意味を弁別(区別)する。 このとき [k] と [g] は弁別的対立をなしているといい、このように「ただひとつの弁別的対立によって互いに弁別される2つの単語」を指して、ミニマル・ペアと呼ぶ。また、このようにしてミニマル・ペアを追求する考察から、「この言語においてこれら2種類の音は別々の音素(この場合は /k/ および /g/ )として記述するべきである」という知見が導かれる。 一方、たとえば中国語では、会話の中で [k] 音、[g] 音のいずれもが聞かれ得るとはいえ、中国語話者はこれらの音の違いによって意味を区別しない。たとえば中国語における [koʊ˨˩˦]、および [goʊ˨˩˦] は、いずれも同じ単語「狗」(gǒu ; 「犬」)を発音したものに過ぎず、両者の音の違いは全く意識されない。すなわち、そこには弁別的対立は存在せず、中国語の [k] と [g] とはひとつの音素の異音同士の関係であるに過ぎない、ということになる。この音素を日本語とは無関係に、たとえば /g/ で表すことができる。 ところがこれとは別に、中国語には [kʰoʊ˨˩˦] 「口」(kǒu ; 「口」)という単語があり、これは当然、上記の「狗」とは明確に弁別されるものとして存在している。「狗」 と 「口」 とを較べると、最初の子音のみが異なっており、これら2単語もミニマル・ペアを構成していることがわかる。ここで両単語を弁別する機能を担っているのは、有気音要素 [ʰ] の有無である。そこで、 [k] ~ [g] をひとつの音素にまとめてしまったのとは裏腹に、有気音 [kʰ] に対しては別個の音素を立てる必要が出てくる。これを /k/ とすると、結局中国語(の軟口蓋破裂音)には、やはり2つの音素( /g/ と /k/ )がある、という解析結果となる。 しかし上に見てきたように、中国語における /g/, /k/ は、日本語における /g/, /k/ とは定義が異なり、有気音と無気音の違いを表すものとして使用されているのである。 ここで留意すべき点は、この有気音 [kʰ] が、日本語でも普段に使用されている音であるという事実である。たとえば 「枯れ木」 という単語は、[kʰaɾekʲʰi̥] のように発音されることがあり得る。しかし日本語話者はこの有気音要素の有無には無頓着で、その違いを意識しない。つまり、日本語では [k] も [kʰ] も聞かれるものの、そこに対立は存在せず、[kʰ] に対して独立の音素を立てる必要はない、ということになる。 以上、日本語と中国語を対比し考察した。以下に、3種類の軟口蓋破裂音([k] 、 [g] 、[kʰ])を区別するビルマ語、全く区別のないアイヌ語を加え、模式的にまとめた。(※模式化を目的としたもので、厳密なものではない。) [kʰ]無声有気[k]無声無気[g]有声無気解説日本語/k/ /g/ 有声/無声を指標として弁別する。 中国語/k/ /g/ 有気/無気を指標として弁別する。 ビルマ語/χ/ /k/ /g/ 上記いずれをも指標として弁別する。 アイヌ語/k/ いずれも指標とせず、弁別しない。 なお、上記3音にさらに有気有声音 [gʰ] を加えた4音を弁別するヒンディー語のような言語もあることを書き添えておく。 こうして、表出された音声( [k] [g] [kʰ] など)には言語間の違いがあまりないように見えても、その深層にある「音素の体系」(表で示した /g/ /k/ /χ/ などの構造)は、言語ごとにさまざまな形があり得るのだ、ということが見えてくる。このような構造を知ることが、言語研究の根幹である。また、このような違いを知ることは、言語を体系的に習得する際に欠かせない知識でもある。 通常こうした「音素の体系」を音声そのものを聴いて即座に把握することは難しく、ミニマル・ペアを通した解析が必要になるものである。
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