事故発生とその後の対応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 16:31 UTC 版)
「リーブ・アリューシャン航空8便緊急着陸事故」の記事における「事故発生とその後の対応」の解説
しかし、同じ頃、客室からエンジンの様子を見に行った機関士と客室乗務員の一人が、第4エンジンからプロペラが外れるのを目撃した。そして、そのプロペラが胴体下部を直撃し、コックピットと客室の間にある通路の床に幅50cm以上の穴が開いた。 このために急減圧が発生し、コックピットは気温と気圧の急激な変化によって発生した霧で溢れて視界が奪われ、機内の空気が漏れだした。この視界不良はすぐに解消されたが、機体は操縦系統に障害が発生し、本来のコースを外れて右に大きく旋回し始め、ベーリング海に向かっていた。また、客室後部にいたもう一人の客室乗務員は、乗客を落ち着かせて酸素マスクを装着させていたが、この時に彼女も第4エンジンからプロペラがなくなっていることに気付いたという。 一方、パイロットたちも酸素マスクを付けて、機体を水平に戻そうと試みたが、操縦桿が動かず手動操縦が利かなくなっており、酸素濃度の高い高度まで降りられないでいた。機関士がコックピットに戻ってくると、彼は第4エンジンからプロペラが弾け飛んで落下したことを伝え、第4エンジンを緊急停止した。続けて、機関士と共にプロペラが落下するのを目撃した客室乗務員がコックピットにやってきて、機体の床に穴が開いていることを伝えてきた。 そこで、機長の咄嗟の判断で自動操縦に切り替えたところ、機体は安定し、高度を下げることはできたが、ダメージは深刻で、機体は右に傾く癖が付き、自動操縦での旋回が難しくなり、エンジンの出力も全く制御できなくなっていた。機体を高度1万フィートまで下げた前後に副操縦士がアンカレッジのリーブ・アリューシャン航空の運行管理者に緊急事態を宣言した。 その後、機長と副操縦士が操縦桿を渾身の力で操作したところ、ゆっくりながらも、旋回することができた。しかし、コールド・ベイに戻ろうと試みたものの、機体の設計が古いために8便の自動操縦装置では着陸出来なかった上に、燃料は満タンでエンジン出力を絞れないことで減速が出来ず、さらに長い滑走路があるキングサーモン空港に向かおうともしたが、その空港に着陸できても滑走路をオーバーランしてしまうため、リーブ・アリューシャン航空の運行管理者は、さらに長い滑走路を備えている北東のアンカレッジ国際空港に向かうことを強く勧めた。 その道中には、激しい乱気流が起きやすいアリューシャン山脈があり、パイロットたちはその提案に難色を示したが、それ以外に機体を安全に着陸させる選択肢がなかった。幸い、この時のフライトではアリューシャン山脈の上空に乱気流は発生しておらず、8便は、4時間を掛けてアンカレッジ空港のすぐ近くまで辿り着き、その間に燃料を消費して機体を軽くした。 また、この空港に辿りつく直前まで手動操縦が使えない状態だったが、懸命な努力により、手動で制御できる状態が回復していた。これによって着陸は一先ず可能となったが、エンジン出力を絞れないためにオーバーランする危険が残っていた。そのため、第2エンジンを停止して推力のバランスを取るものの、一度目の着陸は、進入角度が急で速度が速くなり過ぎていたため接地を断念し、二度目の着陸を試みた。二度目の着陸では、接地したと同時に全エンジンを緊急停止し、非常ブレーキを使用して減速を試みた。機体はその後、滑走路脇の溝(排雪溝)に前部の車輪がはまり込む形で停止した。非常ブレーキから煙は上がったものの、機体から火災は発生せず、乗員乗客15人全員が無事に機体から降りることが出来た。なお、この時の一連の出来事は撮影されていたため、着陸やり直しの状況、空港の状況、タイヤから火が出るところなどが収められ、その過酷な状況を今に伝えている。
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