乗法的整数論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 05:11 UTC 版)
詳細は「乗法的整数論(英語版) 」を参照 ユークリッドは無限個の素数が存在することを示したが、ある数、特に大きな数が素数であるか否かを判断するのに充分な方法を見つけることは非常に困難である。より容易な関連する問題は、素数の分布を漸近的に求めることである。すなわち、与えられた数より小さい数にどのくらいの個数の素数が存在するかの大まかな記述である。中でもガウスは、素数の大きなリストを作成した後、大きな数 N 以下の素数の数は、積分の値 ∫ 2 N 1 log t d t {\displaystyle \,\int _{2}^{N}{\frac {1}{\log \,t}}\,dt} に近いであろうと予想した。 1859年、リーマンは複素解析と、現在リーマンゼータ関数として知られる特別な有理型関数を使い、実数 x 以下の素数の個数に関する解析的表現を導き出した。注目すべきことに、リーマンの式の主要項は上の積分に一致し、ガウスの予想は相当に信頼すべきであることを示した。リーマンはこの表現における誤差項、つまり素数の分布の仕方が、ゼータ関数の複素零点に密接に関連することを発見した。リーマンのアイデアと、ゼータ関数の零点上のさらなる情報を用いることにより、アダマールとド・ラ・ヴァレ・プーサン(英語版)は、ガウス予想の証明を完成させた。特に、π(x) を素数個数関数とすると、 lim x → ∞ π ( x ) x / log x = 1 {\displaystyle \lim _{x\to \infty }{\frac {\pi (x)}{x/\log x}}=1} となることを証明した。 この注目すべき結果は、現在、素数定理として知られている。素数定理は解析的整数論の中心的な結果である。大まかに言うと、素数定理は、与えられた大きな数 N に対し、N 以下の素数の数は、およそ N/log(N) であるという定理である。 さらに一般に、同じ問題を任意の算術級数、整数 n に対して a + nq の中の素数の数について問うことができる。数論への解析的方法の最初の適用のひとつとして、ディリクレは任意の a と q が互いに素な算術級数は無限に多くの素数を含むことを証明した。素数定理はこの問題へも一般化することができる。 算術級数 a + n q , n ∈ Z {\displaystyle a+nq,n\in \mathbf {Z} } において、 π ( x , a , q ) = ( x {\displaystyle \pi (x,a,q)=(\ x} に等しいか小さい素数の個数 ) {\displaystyle )} として、a と q を互いに素とすると、 lim x → ∞ π ( x , a , q ) ϕ ( q ) x / log x = 1 {\displaystyle \lim _{x\to \infty }{\frac {\pi (x,a,q)\phi (q)}{x/\log x}}=1} が成り立つ。 数論には他にも数多くの広く深い予想が存在するが、その証明は現在の手法をもってしても困難と考えられている。たとえば、双子素数問題は、p + 2 が素数であるような素数 p が無限個存在するかという問題である。エリオット・ハルベルスタム予想(英語版)(Elliott–Halberstam conjecture)を仮定すると、素数 p であって、12以下のある正の偶数 k に対し、p + k が素数となるようなものが無限に存在することが、最近[いつ?]証明された。また、無条件に(つまり、証明されていない予想に依存せずに)素数 p であって246 以下のある正の偶数 k に対し p + k が素数となるようなものが無限に存在することも示された。
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