3ない運動
別名:三ない運動、3ナイ運動
主に、高校生のオートバイ利用による交通事故や騒音問題の抑止を目的として提唱・推進された、「高校生にバイクを運転させない」「高校生にバイクを買わせない」「高校生に免許を取らせない」という3箇条を柱とする運動。1980年代前後に全国のPTAを中心として広く推進された。
3ない運動は往事のバイクブームとそれに伴い急増した高校生のバイクによる死亡事故の増加などを背景に提唱された。青少年とバイクとの接点を排除することにより、あるいは交通環境が整備されたなどもあり、高校生の死亡事故件数は減少の成果を上げた。ただし3ない運動には当初から異論もあり、「バイクを取り上げるのではなくバイクの危険性や安全運転の方法、交通規則を教えるべきだ」といった見解も聞かれていた。
3ない運動は1990年代から徐々に運転者としての教育を重視する方向へ転換しつつある。2010年代現在では3ない運動を強く全面に押し出して展開・推奨している教育機関は少数派に転じている。ただし3ない運動が完全に廃止されたわけではなく、考え方そのものは根強く残っている形といえる。
三ない運動
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三ない運動(さんないうんどう)は、日本において1970年代後半から1990年代にかけて行われた教育運動のひとつ。正式名称は高校生に対するオートバイと自動車の三ない運動(こうこうせいにたいするオートバイとじどうしゃのさんないうんどう)で、高校生によるオートバイ(第1種原動機付自転車を含む)ならびに自動車の運転免許証取得・車両購入・運転を禁止するため、「免許を取らせない」「買わせない」「運転させない」というスローガンを掲げた日本の社会運動のことである。
- ^ 仙台大会 特別決議文, 全国高等学校PTA連合会, (1982-8-25), "現今の高校生のオートバイによる事故激増を憂え、青少年の生命の安全を守る上から、又『免許を取らない』『乗らない』『買わない』の主旨の徹底及び親の責任を促す上から、次の対策を実施する。"
- ^ 報告書「アメリカにおける交通安全教育の現状について」総理府交通安全対策室、1971年。
- ^ 『高校生の交通安全』財団法人日本交通安全教育普及協会発行、1984年1月。
- ^ 『高等学校交通安全指導の手引』財団法人日本交通安全教育普及協会発行、1984年5月。
- ^ 『高等学校における課外の交通安全指導の手引』財団法人国際交通安全学会発行、1986年9月。
- ^ 『二輪車に関する安全指導の手引』日本交通安全教育普及協会発行、1988年11月。
- ^ 『東京新聞』1989年9月20日付、夕刊。
- ^ 神奈川県高等学校交通安全運動推進会議が関係機関に送付した文書「高校生の交通事故を防止するかながわ・新運動について」1990年3月22日。
- ^ 全国高等学校PTA連合会、熊本大会における「特別決議文」原文、1992年8月28日。
- ^ 自工会池会長が批判、高校教育の3ない運動は「思考停止」 Response.、2015年7月23日
- ^ 2015年10月2日、ミスターバイク ホンダの新社長・八郷隆弘さんがバイクとライダーに向け発信!、Web ミスター・バイク、2018年10月21日閲覧。
- ^ 角本良平「都市を結ぶ」、『JR EAST』1992年12月号、交通新聞社。澤喜司郎「交通弱者対策をめぐる諸問題」、『山口経済学雑誌』第43巻第5号、1995年5月、山口大学経済学会。
- ^ 全国高等学校PTA連合会、山形大会における「宣言」原文、1997年8月28日。
- ^ 『東京新聞』2012年10月4日 朝刊( アーカイブ)
- ^ 広島県議会議事録 2017年03月09日:平成29年度予算特別委員会(第4日)本文。
- ^ 三ない運動の方針転換「乗せて教えるバイクの安全運転教育」を推進する埼玉県のその後を追う! MOTO INFO、一般社団法人日本自動車工業会、2021年11月12日、2023年9月14日閲覧。
- ^ 『読売新聞』2014年5月20日付「高校生のバイク『解禁』は? 群馬県警と教委対立」(アーカイブ)
- ^ a b 埼玉県自動二輪車等の交通安全に関する検討委員会『高校生の自動二輪車等の交通安全に関する報告書』。
- ^ a b 中島みなみ (2017年6月2日). “高校生バイク死亡事故、35年以上防げない…“3ない運動”の埼玉県”. Response.. 2017年6月25日閲覧。
- ^ 中島みなみ (2017年5月10日). “高校生のバイク指導、検討会開催の前後でここまで変わった - 埼玉県”. Response.. 2019年7月18日閲覧。
- ^ 中島みなみ (2018年1月24日). “埼玉県、バイク3ない運動の旗降ろす - 安全教育に新たな指導要項を策定へ”. Response.. 2019年7月18日閲覧。
- ^ “バイクの指導、学校連絡制度について”. 京都府立久美浜高等学校. 2021年1月12日閲覧。
- ^ “平成26年度 PTA交通安全啓発標語”. 京都府立西城陽高等学校. 2021年1月12日閲覧。
- ^ “令和2度学校評価アンケート集計報告”. 京都府立桂高等学校. 2021年4月29日閲覧。
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- ^ 広島県議会議事録. 平成28年度予算特別委員会(第4日). 9 March 2017. 2020年12月9日閲覧。
- ^ “運転免許証の取得”. 広島県立向原高等学校. 2021年1月9日閲覧。
- ^ “和歌山県ホームページ Wakayama Prefecture Web Site”. www.pref.wakayama.lg.jp. 2023年4月23日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “今春話題のアニメ「スーパーカブ」を見て感じた疑問…なぜ山梨県の高校生は原付通学が認められているのか?”. バイクのニュース. メディア・ヴァーグ (2021年5月26日). 2021年10月13日閲覧。
- ^ 原作:岩橋健一郎 漫画:所十三『ドルフィン』第2章・77話「祭りのあと」
- ^ 三ない運動 - 公益財団法人 明るい選挙推進協会HP
- ^ 暴力団追放三ない運動 公益財団法人 暴力団追放運動推進都民センター
- ^ サンケイ新聞国鉄特別取材班『これでいいのか国鉄―正確・安全世界一は、なぜ崩壊したか―』所収「消え去った国鉄一家意識」、産業経済新聞社出版局
- ^ 職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告 厚生労働省
- 1 三ない運動とは
- 2 三ない運動の概要
- 3 その他の三ない運動
三ない運動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 08:25 UTC 版)
「日本におけるオートバイ」の記事における「三ない運動」の解説
1990年代以前、若年層にオートバイが普及するとともに無謀な運転による死亡事故が急増し、暴走族のようなオートバイを使った反社会的な行動をとる集団が増えた。これらの影響を受け、オートバイそのものが社会問題と位置づけられる社会的背景が強まり、1970年代初頭に愛知県など一部の高校で「オートバイを買わない・乗らない・免許を取らせない」とする『三ない運動』を開始した。これが次第に全国に広がり、全国高等学校PTA連合会が1982年8月の宮城大会で同運動を正式に決議した。 しかし、一方的で理不尽な抑圧に対する反発から非行に走る例や、正規の方法で免許取得や車両購入ができないことから無免許で・また盗んで乗り回し、事故を起こす例が指摘され、1990年頃から三ない運動の問題点が注目されるようになった。1980年代の事故増加の他の原因が解消され事故件数が減少したことや、保護者らの教育に対する考え方の変化を受け、現在では安全教育を徹底することを前提としてオートバイを容認する教育機関が増えてきている。
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