クマに襲われる
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/02 06:05 UTC 版)
その年の8月、グラスはパーキンス郡グランド川の支流の近くで食糧にする獲物を探すうち、子連れのハイイログマに出くわしてしまう。母グマは突撃するとグラスの体を振り上げ地面にたたきつけた。狩りの仲間のフィッツパトリックとブリッジャーの助けもあり、グラスはなんとかクマを仕留めたものの、重傷を負って気を失う。アシュレー隊長はグラスは命を落すに違いないと判断、グラスが息を引き取るのを見届けて埋葬する者をふたり募り、ジム・ブリッジャー (当時19歳) とフィッツパトリック (同23歳) が進み出る。探検隊が出発すると残ったふたりは遺体を埋める穴を掘り始めた (Monumental Mysteries参照)。本隊に追いつくと隊長に「グラスは死んだ」と嘘の報告をしたふたりだが、のちにアリカラ族に襲われたから逃げたと弁明している。グラスのかたわらにいた時間は短く、彼のライフルと鉈その他の旅の道具を盗んで見捨てたのであり、ただし経験の浅いブリッジャーが自発的に行動したかどうかは議論の分かれるところである。 グラスは意識を取り戻したものの、重傷でひとり取り残され武器も旅の道具も盗まれたと気づく。片足は骨折、さらにアメリカ領でいちばん近いフォート・カイオワまでミズーリ川沿いに320キロ。折れた足に添え木をしたグラスは仲間が棺おけ代わりに体にかけた熊の皮を体に巻きつけると、這って進み始める。骨にまで達した背中の傷が膿んで壊疽 (えそ)にならないよう、腐りかけの倒木にもたれて傷の膿んだ部分をウジがすっかり食いつくすのを待った。 シャイアン川を目指すグラスはサンダー・ビュート (丘) を目印に南へ這い進むと川原に行き着き、苦労していかだを組んで川下のフォート・カイオワへと向かう。6週間、草の実と根を食べて飢えをしのぎ、あるときは幼いバイソンを取り囲んでしとめようとするオオカミの群れを見つけると、追い散らして肉を口にした。またあるときは友好的な先住民に出会うと開いた傷を保護するため背中にクマの皮を縫いつけてもらい、食べ物と武器を受け取っている。 街に戻ったグラスを人々は「蘇った亡霊」と呼んだ。フランス語の動詞「戻る」(revenir) から派生した英語のことば「revenant」をあててついたあだ名であり、長いあいだ留守だった者が帰ってきた、あるいは死んだと思っていたのに息を吹き返した者という意味である[要出典]。
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