なぜ気づかないのか
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/12 05:32 UTC 版)
「カサンドラ症候群」の記事における「なぜ気づかないのか」の解説
アスペルガー症候群の配偶者との関係は必ずしも初めから悪いわけではなく、コミュニケーションが困難であることの積み重ねによって悪化していく。 マクシーン・アストンの調査によると、妻がカサンドラ症候群の場合であれば、初めは女性がアスペルガー症候群男性を助ける役割を担うことが多い。アスペルガー症候群男性の子供のような無邪気さと、穏やかで受動的な性質に惹かれた女性は、やがてアスペルガー症候群男性がいつまでたっても感情を表さないことに気づく。原因は子供時代にあるのではないかと考え、感情表現と愛情を注いで彼を助けよう、気持ちの表し方を教えてあげようとする。これは無意識のうちに行われる。しかし、時間の経過とともに、簡単に変えられる性質ではないことがわかってくる。気づくまでに何年もかかることもある。女性がどんなに努力しても、彼は気持ちを表さないので、「私のことを好きではない」と思い、苛立ちと憤りがつのっていく。そうなると、夫が何をしてもしなくても妻の気に障り、怒りっぽくなる。一方、夫はいったい何が起きているのかわからない。 カトリン・ベントリーは、結婚生活の維持を車のメンテナンスに例えて説明している。 初めは運転しやすいが、時には部品が壊れることもある。でも、走れないわけではないし、順調なふりもできる。しかし、良い状態に保つためには壊れた部品を交換しなければならない。問題を未解決のままにすれば、修理では済まないほど事態は悪化し、いつかだめになる。 夫婦の場合、結婚や子供の誕生など環境の変化をきっかけに問題が顕在化することがある。(「#結婚を境に変化するアスペルガー症候群」参照) カサンドラも結婚当初は、男女の違いや生家の文化の違いがあるから仕方がないとか、あるいはちょっと変わっている人として夫をとらえているので、コミュニケーションの問題はそれほど意識されない。妻がカサンドラ症候群の場合であれば、暮らしていくうちに、妻が「普通」に期待する、人を気遣ったり心配したり、思いやったりする言葉があまりないことに遭遇する。妻が意図したこととまったく違う意味で物事を考えていることが、小さな驚きとともに妻の心に積もっていく。結婚してしばらくすると、夫婦として一緒に考えなければならないライフイベント(転居や出産など、人生で起こる変化や出来事)が起こる。これをきっかけに、二人の気持ちの擦れ違いや、コミュニケーションの難しさが顕在化する。夫婦の間に共通の枠組み(妻から見ての「常識」)がないことに気づく瞬間だと言える。
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