Xen (仮想化ソフトウェア) Xen (仮想化ソフトウェア)の概要

Xen (仮想化ソフトウェア)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/19 15:19 UTC 版)

Xen
Xenで NetBSD と3つの Linux ディストリビューションを実行中
開発元 Linux Foundation, The Xen Project
XenSource, Inc.
最新版
4.15[1] / 2021年4月8日 (2年前) (2021-04-08)
リポジトリ
対応OS Linux、その他Unix系*BSDOpenSolarisMicrosoft Windows
種別 ハイパーバイザ
ライセンス GPL
公式サイト http://www.xenproject.org/
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概要

Xenは、ケンブリッジ大学のComputer Laboratoryにおいて最初のバージョンが開発された。2010年より、XenコミュニティはXenをGPLv2ライセンスの下で、フリーソフトウェアとして開発・メンテナンスしている。Xenは、IA-32x64IA-64、そしてARMアーキテクチャにおいて利用が可能である。

Xenでは、仮想マシンの実行単位をドメインと呼ぶ。Xenシステムにおいて、Xenハイパーバイザは最も低い特権層で動作する、中核となるソフトウェアである[2]。Xenハイパーバイザ階層は一つまたは複数のゲストOSをサポートし、物理CPUに対してのスケジューリングを行う。最初のゲストOSは、Xenの専門用語において「ドメイン 0 (dom0)」と呼ぶ。これは標準において、ハイパーバイザが起動する時に自動的に実行され、特別な管理特権と、全ての物理ハードウェアへの直接アクセスを受け持つ。システム管理者は、追加された全てのゲストOSに対して、dom0を通してログインすることができる。このときの管理対象を、Xenの専門用語において「ドメインU」(domU)と呼び、ドメインUはuser domainsを意味する。

ドメイン0となるOSには、一般的にLinuxNetBSDSolarisの修正版が用いられる。なお、従来Linuxにおいてもカーネルの修正が必要であったが、Linux kernel 2.6.23においてXenがmain lineに統合されている[3]。これ以降のバージョンにおいてkernelの修正は必要なくなっている。

ドメインUは、完全仮想化または準仮想化において利用可能なオペレーティングシステムに違いがある。ホストプロセッサIntel VT-xAMD-Vのようなx86仮想化支援機能を有する場合には、未修正のオープンソース、あるいはMicrosoft WindowsのようなプロプライエタリなOSのコピーが完全仮想化された状態で動作する[4]。修正が行われているOSは、拡張サポートのための特殊なドライバを併用して準仮想化されるのがXenの特徴である。

現在では、XenSourceはシトリックス・システムズの仮想化事業部門として統合されており、製品版の開発・販売を担っている。

歴史

Xenのオリジナルは、XenSource, Incの創立者でありケンブリッジ大学の上級講師であるイアン・プラット英語版が率いる、ケンブリッジ大学の研究プロジェクトである。XenSourceは、フリーソフトウェア・プロジェクトによる開発と、エンタープライズ版を販売し、一般へのXenの最初の公開は2003年に行われた。

シトリックス・システムズは2007年8月15日にXenSourceの買収を発表し、シトリックス・ブランドに合わせてXenSourceの製品名を次の通り変更した:

  • XenExpress : 過去の"XenServer Express Edition" と "XenServer OEM Edition" (組み込み向けのハイパーバイザ)
  • XenServer : 過去の "XenServer Standard Edition"
  • XenEnterprise 過去の "XenServer Enterprise Edition"

後に、製品名はXenServer(フリー)、Essentials for XenServer Enterprise、そしてEssentials for XenServer Platinumに変更されている。

2007年10月25日、シトリックス・システムズはXenSourceの買収を完了し[5]、Xenプロジェクトを http://www.xen.org/ に移動した。これに伴って、11月頃にはシトリックス・システムズ、IBMインテルヒューレット・パッカードノベルレッドハットサン・マイクロシステムズ[6]オラクルをメンバーとして、Xen Project Advisory Board (Xen AB)[7] を公表している。

2010年の春には、製品名が次のように改められている:

  • XenServer(無償版)
  • XenServer Advanced Edition
  • XenServer Enterprise Edition
  • XenServer Platinum Edition

リリース履歴

バージョン リリース日 備考
1.0 2003-10-02[8][9]
2.0 2004-11-05[10]
3.0 2005-12-05[11][12]
  • Intel VT-x仮想化支援をサポート
  • IA-64アーキテクチャをサポート

加えて、3.0.4のリリースにおいて次の機能が加えられた:

  • AMD SVM仮想化拡張をサポート[13]
  • PowerPCアーキテクチャをサポート[14]
  • 準仮想化ゲストに対してグラフィカルフレームバッファをサポート[15]
3.1 2007-05-18[16]
3.2 2008-01-17[17] ホストシステムにPCIパススルーとACPI S3スタンバイモードをサポート
3.3 2008-08-24[18] PCIパススルーとパワーマネジメントに関する改良
3.4 2009-05-18[19]
4.0 2010-04-07[20]
4.1 2011-03-25[21]

ホストの最大物理メモリが5TBにアップ [22]

4.2 2012-09-17[23]
  • ホストの最大物理CPU数が4095にアップ
  • PVゲストの最大CPU数が512にアップ
4.3 2013-07-09[24]
  • ARMアーキテクチャの実験的サポート
  • Open vSwitchのサポート
4.4 2014-03-10[25]
  • ARMアーキテクチャの正式サポート
4.5 2015-01-15[26]
  • 43種類の新機能の追加
  • コードが全面的に見直され、約78000行が追加、約141000行が削除された
4.6 2015-10-13[27]
4.7 2016-05-23[28]
4.8 2016-12-05[29]
4.9 2017-05-28[30]
4.10 2017-12-12[31]
4.11 2018-07-10[32]
4.12 2019-04-02[33]
4.13 2019-12-18[34]
4.14 2020-07-24[35]
4.15 2021-04-08[36]

  1. ^ Xen 4.15 is released”. Xenproject.org. 2021年4月10日閲覧。
  2. ^ Xen 3.0 User Manual
  3. ^ 末安 泰三 (2007年10月10日). “仮想化ソフト「Xen」に対応した、Linuxカーネル2.6.23が公開”. Nikkei Business Publications, Inc.. 2012年2月10日閲覧。
  4. ^ Xen OS Compatibility
  5. ^ Citrix Systems » Citrix Completes Acquisition of XenSource”. Citrix Systems (2007年7月12日). 2012年2月10日閲覧。
  6. ^ 現在ではオラクルに買収されている。
  7. ^ 山幡 為佐久(VA Linux Systems Japan) (2008年11月12日). “Xenの歴史と実装 - the hitchhiker's guide to xen”. 情報処理学会 システムソフトウェアとオペレーティングシステム研究会. 2012年2月10日閲覧。
  8. ^ Xen / [Xen-devel] [ANNOUNCE] Xen high-performance x86 virtualization
  9. ^ The first stable Xen release [LWN.net]
  10. ^ Xen 2.0 released [LWN.net]
  11. ^ Xen 3.0 released [LWN.net]
  12. ^ XenSource: Press Releases
  13. ^ http://lists.xensource.com/archives/cgi-bin/mesg.cgi?a=xen-users&i=A95E2296287EAD4EB592B5DEEFCE0E9D4BA296%40liverpoolst.ad.cl.cam.ac.uk
  14. ^ [Xen-devel] Xen 3.0.3 released! - Xen Source
  15. ^ [Xen-devel] FW: Xen 3.0.4 released! - Xen Source
  16. ^ http://lists.xensource.com/archives/html/xen-announce/2007-05/msg00002.html
  17. ^ http://vmblog.com/archive/2008/01/17/xen-3-2-0-officially-released.aspx
  18. ^ http://www.h-online.com/newsticker/news/item/Xen-3-3-0-hypervisor-ready-for-download-737027.html
  19. ^ http://community.citrix.com/display/ocb/2009/05/18/Xen.org+Announces+Release+of+Xen+3.4+Hypervisor
  20. ^ http://www.h-online.com/open/news/item/Virtualisation-Xen-is-looking-to-catch-up-by-releasing-version-4-974405.html
  21. ^ http://blog.xen.org/index.php/2011/03/25/xen-4-1-releases/
  22. ^ http://wiki.xen.org/wiki/Xen_Release_Features
  23. ^ http://blog.xen.org/index.php/2012/09/17/xen-4-2-0-released/
  24. ^ http://blog.xen.org/index.php/2013/07/09/xen-4-3-0-released/
  25. ^ http://blog.xen.org/index.php/2014/03/10/xen-4-4-released/
  26. ^ https://blog.xenproject.org/2015/01/15/less-is-more-in-the-new-xen-project-4-5-release/
  27. ^ http://wiki.xenproject.org/wiki/Xen_Project_4.6_Release_Notes
  28. ^ https://wiki.xenproject.org/wiki/Xen_Project_4.7_Release_Notes
  29. ^ https://wiki.xenproject.org/wiki/Xen_Project_4.8_Release_Notes
  30. ^ https://wiki.xenproject.org/wiki/Xen_Project_4.9_Release_Notes
  31. ^ https://wiki.xenproject.org/wiki/Xen_Project_4.10_Release_Notes
  32. ^ https://wiki.xenproject.org/wiki/Xen_Project_4.11_Release_Notes
  33. ^ https://wiki.xenproject.org/wiki/Xen_Project_4.12_Release_Notes
  34. ^ https://wiki.xenproject.org/wiki/Xen_Project_4.13_Release_Notes
  35. ^ https://wiki.xenproject.org/wiki/Xen_Project_4.14_Release_Notes
  36. ^ https://wiki.xenproject.org/wiki/Xen_Project_4.15_Release_Notes
  37. ^ Xen at OpenSolaris.org
  38. ^ XenSource買収も事前に相談、MSとシトリックスの関係とは - @IT
  39. ^ マイクロソフトと XenSource が、Windows Server “Longhorn” Virtualization に向けた相互運用テクノロジを共同開発


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