Software as a Service Software as a Serviceの概要

Software as a Service

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/18 14:38 UTC 版)

概要

従来のソフトウェア販売の中心は、ソフトウェアをパッケージ製品としてユーザーにライセンス販売する形態であり、ユーザーは自分の持つコンピュータでそのソフトウェアを稼働させ、利用する形態であった。 一方、SaaSでは、ソフトウェアを提供者(プロバイダ)側のコンピュータで稼働させ、ユーザーはそのソフトウェア機能をインターネットなどのネットワーク経由でサービスとして使用し、サービス料を支払う形態(ビジネスモデル)が主流となっている。

SaaSの利点として、ユーザー側としては、使用した期間・量だけのサービス料で済む、ユーザー側のコンピュータ導入・構築・管理などが不要(または最小限)になる、このため短期間での利用開始や、ユーザー数や処理量の急な増減にも対応しやすい、常に最新のソフトウェア機能を使用できる、などがある。 またプロバイダ側としては、新規ユーザーの獲得が容易、ソフトウェアのみの販売よりも売上の向上・平準化になる、コンピュータ運用はスケールメリットと自社要員が生かせる、各ユーザー固有の導入や保守のサポートが軽減できる、などがある。

デメリットには、プロバイダ側や通信回線、ネットワークの障害時には使用できない、セキュリティ上の懸念、ユーザー固有の仕様変更や運用変更は困難、長期利用の場合に割高となる可能性、などがある。 また、クラウドコンピューティング上のSaaSの場合は、クラウドが示す「向こう側」がどこなのかが不明確なため、海外のIDCで運用されていた場合やデータの損失などが発生した場合、国内法が適用されないというリスクもある。

SaaSは、ネットワーク経由という面ではネットワーク・コンピューティングの一形態であり、従量制課金の場合はユーティリティコンピューティングの一形態であり、またSaaSプロバイダはASPと同義語である。また、比較的広い意味での「クラウドコンピューティング」における、IaaSPaaS等に並ぶ一種ともされる[3]

なお、SaaSに類似した形態としては、各種のホスティングサービスアウトソーシングサービスなどがある。これはプロバイダ側にハードウェアとソフトウェアがあり、ユーザーはネットワーク経由で使用しサービス料を支払う点ではSaaSと同じだが、ホスティングではハードウェアとソフトウェア、アウトソーシングでは契約によってはソフトウェアなどを、ユーザーが購入する必要がある。例にはIBMのApplications on Demand (AOD) [4]などがある。

発音

SaaSの発音は、「サース」とする場合が多い。「サーズ」と濁って発音することはあったが、一般的にも専門的にもSARSとの混同を避けるために「サース」と発音しているとされる。日本経済新聞の用語解説でも「サース」の発音を採用している[5]

歴史

ソフトウェアをネットワーク経由でサービスとして提供する事自体は、ASPとして、従来より行われている。ASPとSaaSを区別することなく使われていることが多い。有料の電子メールサービス、グループウェア、各種の検索サービス、オンラインゲームなどである。史上初のSaaSアプリケーションは1995年にリリースされたViawebとMYOBライトと言われている。

2006年にはクラウドコンピューティングという言葉が普及し、クラウドコンピューティング上で提供されるソフトウェアがSaaSと呼ばれるようになった。

2007年後半に日本でクラウドコンピューティング上で提供されるSaaSの定義が各プロバイダより発信され始め、リーマンショック後コスト削減サービスとして急速な普及が始まった。各ASP事業者(ベンダー)は2009年頃から、アプリケーションレイヤー上の提供名称を、ASPからSaaSへと変え始めた。この頃、Sansan(2007年設立)、プレイド(2011年設立)、freee(2012年設立)、マネーフォワード(2012年設立)、アンドパッド(2012年設立)などの日本SaaSスタートアップ企業が生まれた。


注釈

  1. ^ 「ソフトウェアの代わりのサービス」の意味。

出典

  1. ^ a b 用語集|SaaS”. 株式会社IDCフロンティア. 2019年4月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年8月3日閲覧。
  2. ^ http://www.meti.go.jp/press/20080121004/20080121004.html 経済産業省「SaaS向けSLAガイドライン」
  3. ^ 知っておきたいIaaS、PaaS、SaaSの違い”. クラウドエース株式会社. 2019年8月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年8月3日閲覧。
  4. ^ “日本IBM、新形態のITアウトソーシング「AoD」-第1弾はSAPのERPソフトが対象”. Enterprise Watch. (2007年5月30日). https://enterprise.watch.impress.co.jp/cda/software/2007/05/30/10395.html 
  5. ^ SaaS(サース)とは”. 株式会社日本経済新聞社. 2019年8月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年8月3日閲覧。
  6. ^ “「クラウドコンピューティングEXPO【春】」、きょう開幕”. クラウド Watch. (2011年5月11日). https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/event/444598.html 
  7. ^ SaaSメトリクスダッシュボード(上場SaaS企業データ). “SaaSメトリクスダッシュボード(上場SaaS企業データ)”. SaaSメトリクスダッシュボード(上場SaaS企業データ). 2023年5月6日閲覧。
  8. ^ 日経クロステック(xTECH). “IT大手16社のQ2決算 コロナ禍でクラウド以外は減収”. 日経クロステック(xTECH). 2020年8月17日閲覧。
  9. ^ Stallman, Richard. “Who does that server really serve?”. GNU.org. The Free Software Foundation. 2015年3月24日閲覧。
  10. ^ Stallman, Richard (2010年3月18日). “Who Does That Server Really Serve?”. Boston Review. 2013年7月6日閲覧。


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