Long Term Evolution
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新たな無線端末と今後の展開
LTEが高速通信だけでなく接続遅延も短いのは、携帯電話機やラップトップパソコンより小型軽量の携帯情報端末での採用を想定して開発されたためである。LTEの登場で、モバイルWiMAXやXGPといった通信規格と通信サービスでの競争がはじまり、日本では仮想移動体通信事業者 (MVNO) という非インフラ型の通信サービスを生み出した。VoLTEの提供も始まり、通信網上の電話接続とインターネット接続の境界はあいまいになっている。
将来的に4G(ここではLTEをのぞく)の携帯電話通信が開始される時に、使用電波帯域が3.9G (LTE) と4G (IMT-Advancedなど) で異なっても、LTEの方で共通する点の多い技術を使用していれば4G (IMT-Advancedなど) への移行が簡単に行なえると期待されている。LTEでは3Gに比べて、単に使用周波数の帯域を広げることで高速通信を実現するだけでなく、電波を有効活用する工夫としてフェムトセルの活用やマルチユーザーMIMOといった接続遅延の短縮をも実現する技術などを検討してきた[14]。
LTE-Advanced
LTE-Advanced (LTE-A) [66]は、LTEの発展規格である。3GPPPが3GPP Release.10として2011年4月に基本仕様を策定した。
ITUの定める第4世代移動通信システムの一つ。理論値で最大LTEの10倍程度の速度である。
同方式では、複数の周波数帯 [注 11]を組み合わせて利用する「キャリア・アグリゲーション」と呼ばれる技術により、最大100MHz幅×2を利用することにより、ギガビット秒オーダの通信を実現している。
日本の状況
2011年1月27日、NTTドコモは、LTE-Advancedの実験用予備免許を取得した[67]。神奈川県横須賀市および相模原市にて実証実験を行った[68]。
2011年1月、韓国電子通信研究院 (ETRI) が開発した伝送速度600メガビットに達するLTE-Advancedの通信実演が公開されている[69]。2013年6月26日、SKテレコムで世界で初めてのLTE-Advanced商用サービスが開始された。他社も、7月中にはサービスを開始する予定である[70]。
2014年、キャリア・アグリゲーション (CA) は、KDDI/沖縄セルラー電話が、Bands 1/18の各10MHz幅×2を束ねる形で、下り最高150Mbpsを実現した、4G LTE CAを開始した。NTTドコモは、1800MHz帯 (Band 3) で下り最高150Mbpsが実現できていることから、この時点ではVoLTEの導入を先行させ、2014年時点でのCAの導入を見送っており、2015年3月27日からPREMIUM 4Gとして提供開始されたが、当初はデータ通信専用端末で提供された。ソフトバンクモバイルは2015年以降をめどに、LTEネットワークでのCAの導入を検討している。AXGPのCAは、データ端末では2014年に実現し、対応端末がソフトバンクモバイルとワイモバイルから発売されている。ソフトバンクモバイルは、VoLTEと3Gネットワークを利用したHD Voiceは、2014年12月、SoftBank 402SHのアップデート完了後に、順次開始している。
2015年秋には、NTTドコモとKDDIが3波の周波数帯を束ねるサービスを開始し、下り最大300Mbpsのサービスを一部地域で開始している。いずれも、800MHz帯、1.5GHz帯、2GHz帯を束ねている。
2016年6月には、800MHz帯、1800MHz帯、2GHz帯の3波を束ねた、下り最大375Mbpsのサービスを開始予定。800MHz帯はFOMAプラスエリアを停波している基地局であること(地方エリアは原則、FOMAプラスエリアの停波は行わない予定。800MHz帯のフルLTE化は、主に都市部のLTE高トラフィック地域での実施とされる)に加え、1800MHz帯は東名阪バンドであり限定されたエリアでのサービスとなる。年内にTD-LTEの3.5GHz帯の電波を利用できることから、同帯域2波と1800MHz帯の3波を束ねた下り最大370Mbpsのサービスも開始する予定だが、1800MHz帯であり東名阪限定のサービスとなる予定である。
2019年9月現在の最大受信速度は、ソフトバンクでは988Mbps[71], KDDIでは1237Mbps[72], NTTドコモで1288Mbps(送信時最大131.3Mbps)[73]のサービスを一部エリアで提供している。2019年冬には、NTTドコモでは最大受信速度1576Mbpsのサービス開始した[74]。
2020年3月より、NTTドコモでは最大受信速度1.7Gbpsの通信サービスを開始した[74]。
脚注
注釈
- ^ ソフトバンクモバイル(当時)が、ワイモバイル(当時)網を利用した「ダブルLTE」サービスを提供
- ^ 東名阪エリアのみ。1.7GHz帯参照。
- ^ MFBIによりバンド19として利用
- ^ MFBIによりバンド18として利用
- ^ KDDI傘下のUQコミュニケーションズが利用中
- ^ ソフトバンク傘下のWireless City Planningが利用中
- ^ (KDDI/沖縄セルラー連合の場合は、UQコミュニケーションズの分を含めた帯域、ソフトバンクモバイルの場合は、ウィルコムおよびWireless City Planning保有分を含めた帯域がいずれもドコモ並みに多いとした上で)
- ^ ただし、PHS向けバンドは、旧・ウィルコム単独の割り当てではなく、PHSの事業者すべてが共同で利用するバンドであるため、旧・ウィルコムにのみ割り当てがされたものではないが、現状は、他の事業者が撤退ないしは廃業となっているため、事実上は旧・ウィルコム(の事業を継承したソフトバンク)が独占している状態となっているためである。
- ^ 700 MHz帯 (10 MHz幅×2)/800 MHz帯 (15 MHz幅×2)/1.5 GHz帯 (15 MHz幅×2)/1800 MHz帯 (20 MHz幅×2、ただし、東名阪地域に限定される逼迫対策バンド)/2100 MHz帯 (20 MHz幅×2) を保有。グループで別途保有している帯域はなく、ドコモ単独で保有している帯域のみ。
- ^ 700 MHz帯 (10 MHz幅×2)/800 MHz帯 (15 MHz幅×2)/1.5 GHz帯 (10 MHz幅×2)/2100 MHz帯 (20 MHz幅×2)/BWA帯域 (30M Hz幅)を保有。BWA帯域部分が、UQコミュニケーションズ割当分で、それ以外が、KDDI/沖縄セルラー電話に割当。
- ^ 例えば、ドコモであれば、獲得しているすべての帯域がLTEで利用され、かつ全国での利用が可能と仮定すれば、700MHz帯の10MHz幅×2、800MHz帯の15MHz幅×2、1.5GHz帯の15MHz幅×2、1800MHz帯の20MHz幅×2、2GHz帯の20MHz幅×2の計80MHz幅×2が利用可能となる
出典
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