機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/04 01:58 UTC 版)
作中設定・用語
世界観・歴史
- P.D. (Post Disaster)
- 当作品世界の紀年法。
- 厄祭戦
- 本編の約300年前に勃発した惑星間規模の大戦[66]。行きすぎた機械文明の産物であるMAの暴走が発端とされ、人類側が投入したMSとの激戦の末、文明が大きく後退するほどの壊滅的損害を被った[67]。アグニカ・カイエルと、のちのセブンスターズたちの活躍によってMAは駆逐され、P.D.0001年に彼らが創設したギャラルホルンによる「ヴィーンゴールヴ宣言」をもって大戦は終結した[68]。
- ヒューマンデブリ
- 安値で人身売買される孤児たちの総称。名称は、宇宙で集めた屑鉄同然の値段で売られていることに由来する[69]。登録書がある限り個人や企業・団体の所有物としてあつかわれる。鉄華団の躍進に伴いその数が増加するが、マクギリス・ファリド事件後は「ヒューマンデブリ廃止条約」の締結などによって根絶の動きが加速する[70]。
勢力・組織
- CGS(クリュセ・ガード・セキュリティ)
- クリュセ郊外にある民間警備会社。社長はマルバ・アーケイ。主力兵器の多くが旧式のモビルワーカー(MW)で占められており、戦力は正規の軍隊に遠くおよばない。地下の動力室にはマルバが発見したガンダム・バルバトスが保管されており、施設の電力源として利用されていた。
- クーデリア・藍那・バーンスタインから地球までの護衛任務を受けるが、これを察知したギャラルホルンの襲撃によって多数の犠牲者を出し、この混乱に乗じて参番組がクーデターを起こしたことで消滅する[71]。
- 鉄華団(てっかだん)
- CGS基地を掌握した参番組が新たに立ち上げた民間組織。社名は「決して散ることのない鉄の華」という意味を込めてオルガが命名した[73]。
- 結成直後はマルバが基地の現金の大半を持ち出し、残りも退職希望者への退職金やギャラルホルンから受けた損害の補填などに充てたために資金難に直面するが、クーデリアのスポンサーであるノブリス・ゴルドンの援助を見込んで彼女の護衛任務を続行する[74]。途中で遭遇したタービンズの紹介でテイワズの傘下に入り、ギャラルホルンの目の届かない裏航路を通って地球圏へ到達する[75]。火星に残った団員たちは、CGS時代からの業務であった近隣農場の作業の手伝いなどに従事する[注釈 4]。地球降下後は蒔苗東護ノ介をエドモントンに護送する任務を請け負い、任務達成後はアーブラウの軍事顧問となる。
- この実績と火星のハーフメタル利権を手土産に正式なテイワズの直系組織となり、受注拡大や新規団員の加入によって短期間で急成長を遂げる[77]。オルガの方針で旧CGS時代の悪法であった阿頼耶識の施術義務化を撤廃し、孤児院への支援といった慈善事業を行うなど業務の健全化が進められるが、著しい成長ゆえにほかの武装勢力やテイワズの他勢力に疎まれるようになる。やがてタービンズがジャスレイ・ドノミコルスの計略で崩壊したことを受けて、ジャスレイ派を一掃したのちにテイワズ傘下を離脱し、アドモス商会との提携を解消してギャラルホルン革命軍とともにアリアンロッドと交戦するが敗北。情報操作でクーデターを起こしたテロリストとしてマクギリスとともに全国で指名手配され、地球への脱出を計るも、ノブリスの部下の襲撃でオルガが死亡し、本部や所有MSもアリアンロッドの掃討作戦によってほとんどが破壊されたことで、組織としては完全に消滅[78]。生き残った団員は蒔苗の協力で戸籍上は別人として暮らしている[70]。
- 監督の長井は下敷きにした組織として新選組を挙げており、視聴者に物語の結末やモチーフを悟られないようにするため、本放送中は外部に情報開示をしないようにしたと語っている[20]。また、初期案ではライドたち少数の団員を除き、クーデリアも含めてほとんどのメンバーが全滅する案もあった。しかし、ラストから五話前ごろの話し合いでシリーズ構成の岡田から「視聴者が感情移入している状態だから救いがあるべき」という意見が出され、団員の大半が生き残る展開に変更され、エピローグで生き残った団員が平和に暮らすパートが加わることとなった[22][23]。
- ギャラルホルン
- 地球の各国連合の総意によって設立された治安維持組織[81]。アグニカ・カイエルを筆頭に組織や派閥を超えた人間たちが厄祭戦を終結させるべく創設した組織を前身とする[82]。
- 軍部に相当する「統制局」、セブンスターズ出身のエリートなどが所属する内部調査機関の「監査局」、経理や人事を担う「総務局」、警察業務を行う「警務局」で構成され、火星支部などの基地が各地に存在する[83]。
- 戦後の世界では、ギャラルホルンは希少化したMSやエイハブ・リアクターなどの関連技術を独占しているため、「武力をもって武力を制す世界平和維持のための暴力装置」と呼ばれる[81]。階級名は自衛隊の階級略号と同じ表音・表記が用いられている[注釈 5]。人員は基本的に地球出身者で構成され、隊員たちの間ではコロニーや圏外圏出身者に対する差別が横行している[85]。
- 厄祭戦後は世界各地の争いを回避するために経済圏を監視する警察組織の役目を担うが、本編では組織としての利益追求や政治干渉などの内部腐敗が進み、各経済圏から疎まれる[86]。また、大規模な戦争がない時代が続いたために実戦の形式化が進んでいる[12]。
- アーブラウとの癒着が明るみに出てからは社会的信用を失い、反社会組織の横行により世界治安の悪化を招く[77]。ファリド家の当主となったマクギリス・ファリドによって組織改編が行われるが、一方でマクギリスを警戒するラスタル・エリオン率いるアリアンロッド艦隊との間に軋轢・対立が生じる。マクギリス・ファリド事件後は、セブンスターズによる合議制を廃止し、ラスタルによって民主的な組織として再編される[78]。
- セブンスターズ
- 厄祭戦を終結させた中心人物たちの家系で、ギャラルホルンを管理運営する七つの家門[87]。MAの撃墜によって授与される「七星勲章」の獲得数によって席次が決定しているとされ、第一席であるイシュー家を筆頭に、ファリド家、ボードウィン家、エリオン家、クジャン家、バクラザン家、ファルク家が名を連ねる[88]。マクギリス・ファリド事件後、イシュー家、クジャン家、ファリド家の後継者が途絶えたため、ギャラルホルンの民主化に伴い廃止される[89]。
- 月外縁軌道統合艦隊アリアンロッド
- 月外縁軌道を管轄するギャラルホルン統制局最大規模の艦隊[90]。総司令官はラスタル・エリオン[91]。地球圏に侵攻する敵勢力の迎撃を任務とし、平時は各コロニーの監視を行っている[90]。9つの艦隊で構成され、ラスタル座乗のスキップジャック級を旗艦とし、ハーフビーク級だけでも40隻を超える戦力をもつほか[92]、レギンレイズといった新型MSも優先的に配備されている。
- 地球外縁軌道統制統合艦隊
- 地球軌道周辺を管轄する防衛艦隊。司令官はカルタ・イシュー。独自に地球へ降下する権限をもち、兵員の士気と練度は高く保たれている[93]。しかし、有事の対処はすべてアリアンロッドが行っていたため実戦経験は皆無に近く、式典でのアクロバット飛行といった行事参加が主任務のため、友軍内では「お飾りの艦隊」と酷評されている[90]。旗下に太平洋方面防衛部隊を置く。カルタ亡きあとはマクギリス・ファリドが司令官となり、大規模な組織改編が行われる[91]。
- 火星支部
- 火星を管轄する支部。支部長はコーラル・コンラッド。実質的に火星の各自治区を統括・支配している[94]。コーラルの死後は、マクギリスの推挙を受けた新江・プロトが後任の支部長に就任する。マクギリス・ファリド事件後はラスタルによって規模が縮小し、火星連合が誕生する結果となる。
- 革命軍
- マクギリスの思想に賛同する青年将校ら有志によって結成されたクーデター組織。ヴィーンゴールヴとその地下に安置されていたガンダム・バエルの掌握をもってアリアンロッドとの全面戦争に挑むが、数と練度に勝るアリアンロッドに苦戦を強いられ、終盤にマクギリスが死亡したことで瓦解する[95]。
- 4大勢力
- 厄祭戦終結後に地球の国家群が統合されて出来た4つの経済圏[66]。
- アーブラウ
- ロシアやカナダ、アラスカ地域を中心とする[66]。代表は蒔苗東護ノ介[81]。クーデリアの交渉によってハーフメタル資源の公正取引に応じる動きが生じ、蒔苗の再選によってそれが本格化する[96]。ギャラルホルンの権威が低下してからは、鉄華団を軍事顧問に迎え、独自の防衛軍を組織する[71]。蒔苗の死後は、蒔苗派のラスカー・アレジが代表となる。
- SAU (STRATEGIC ALLIANCE UNION)
- アメリカ合衆国とラテンアメリカ地域を中心とする。
- アフリカンユニオン
- ヨーロッパとアフリカ、中東、中央アジア地域を中心とする。
- オセアニア連邦
- 日本や中国、インド、東南アジア、オセアニア地域を中心とする。
- テイワズ
- 木星圏を拠点に木星や小惑星地帯の開発を手がける巨大コングロマリット。代表はマクマード・バリストン。実態はマフィアに近く、自衛目的で開発したMSや地球圏に対する影響力から、ギャラルホルンも簡単に手が出せないとされる[81]。日本のヤクザに近い文化形態をもち、和装による盃事で義親子・兄弟の契りを結ぶ風習がある[97]。
- タービンズ
- テイワズの輸送部門を管理する下部組織[98]。漢字の充名は「蛇亞瓶守」。リーダーの名瀬・タービンがアミダ・アルカと下層階級の女性労働者を保護する目的で結成した組織であり、テイワズ加入後は「クレーテ回廊」に代表される独自の大輸送網を構築したことで直系組織に昇格し、5万人を越える大組織に成長する[99]。構成員は全員が名瀬の妻という名目で引き取られた身寄りのない女性たちであり、家族のような絆で結ばれている。名瀬とオルガが義兄弟の契りを交わしたことで鉄華団と提携を結び、クーデリアの護送任務の先導役となる[100]。任務終了後も鉄華団とは良好な関係を築くが、ジャスレイの計略によりギャラルホルンから違法組織と認定され、イオクの艦隊の攻撃で名瀬は死亡、組織は解散する[101]。生き残ったメンバーは、アジー・グルミンを中心にマクマードの庇護の下で輸送業を再開する[102]。
- エウロ・エレクトロニクス
- テイワズの重工業部門を管理する下部組織[98]。
- JPTトラスト
- テイワズの商業部門を担当する下部組織。リーダーはジャスレイ・ドノミコルス。イオクと結託してタービンズを解散に追い込むが、その後のたび重なる挑発に激怒した鉄華団の報復を受け壊滅する[103]。
- ブルワーズ
- 主に地球と火星間の航路を活動領域とする宇宙海賊。首領はブルック・カバヤン。構成員には、阿頼耶識システムを施された十代半ばのヒューマンデブリが数多く存在する。2隻の戦艦と1隻の大型輸送船、超重装甲型MS十数機を保有し、商船を標的にした略奪行為や人身売買を繰り返している[104][105]。
- マクギリスとつながりのある人物からクーデリアの身柄確保を依頼されて鉄華団とタービンズを襲撃するも返り討ちに遭い、損害賠償として戦艦1隻とすべてのMS、クルーのヒューマンデブリを没収される[106]。
- ドルトカンパニー
- アフリカンユニオンの公営企業。生産と流通の拠点としてドルトコロニーを有しているが、管理職は地球出身者でほぼ独占されている[66]。
- GNトレーディング
- テイワズを通じてドルトコロニーの労働者組合に武器を供与した企業。表向きは別人の名義だが、ノブリス・ゴルドンが所有する企業のひとつ。
- モンターク商会
- マクギリスがモンタークとして動くために私財を投じて作った商社。表向きは1世紀以上の歴史がある地球圏の老舗企業となっている[107]。クーデリアと鉄華団に商談を申し込み、ハーフメタル利権への参入と引き換えにクーデリアを支援する。マクギリスの死後は、トド・ミルコネンが引き継いだとされる[23]。
- アドモス商会
- 火星に帰還したクーデリアが設立した企業。テイワズと提携してアーブラウ領のハーフメタルの一次加工と流通を取りまとめているほか、鉄華団と協力して孤児院や小学校の設立にも力を入れている[108]。
- テラ・リベリオニス
- クーデリアと交流のある火星の活動家団体。代表はアリウム・ギョウジャン。クーデリアがアドモス商会の経営に専念するようになってからは組織の運営が成り立たなくなり、夜明けの地平線団と結託する[109]。しかし地平線団の壊滅後、アリウムは鉄華団に一連の報復として射殺、構成員たちもギャラルホルンに拘束され組織は崩壊する[110]。
- 夜明けの地平線団
- 地球と火星間の航路で活動する宇宙海賊。団長はサンドバル・ロイター。3000人以上の構成員に加え、艦艇10隻と多数のMSを所有する[111]。テラ・リベリオニスの依頼でクーデリアと鉄華団を襲撃するが、サンドバルが鉄華団に捕獲されたことで壊滅する[110]。
- 火星連合
- マクギリス・ファリド事件後、火星支部の間接統治から脱した火星の各都市が発足させた組織[89]。初代議長には、知名度に加えてテイワズの後押しもあったクーデリアが就任する[112]。
地名・施設
- 火星
- 本作の始まりの舞台。テラフォーミングで地球とほぼ同じ自然環境と都市が構築され、P.D.0002年のマルタ会談に基づき分割統治されている[100]。
- 厄祭戦後、経済回復を目的に結ばれた「EM経済協定」が原因で実質的な地球圏の植民地となっている。現在は火星ハーフメタル以外の資源が枯渇したため貧困が蔓延し、不満を抱いた民衆による独立運動が活発化している。マクギリス・ファリド事件後、ギャラルホルン火星支部の縮小に伴い地球圏の支配から脱却する[78]。
- ユトランド
- 地球衛星軌道上に2基存在する民間共同宇宙港[115]。
- グラズヘイム
- 地球軌道に3基存在するギャラルホルンのサテライトベース[116]。
- グラズヘイム1
- 地球外縁軌道統制統合艦隊の駐屯地。イサリビの体当たりを受けて損傷する[117]。
- グラズヘイム2
- 火星遠征より帰還したマクギリスたちが寄港する基地。
- ヴィーンゴールヴ
- ギャラルホルンの地球本部が存在する三胴船型の巨大メガフロート[118]。経済圏への干渉を防ぐため、海洋上に建設された経緯がある[119]。全長10キロメートル[120]。専用港や空港、MS生産施設を備え、居住区の上層部はセブンスターズの貴族エリアとなっている[116]。地下祭壇にはアグニカの乗機であるガンダム・バエルが安置されており、それを囲むようにセブンスターズ各家のガンダム・フレーム機の格納庫があるが、ボードウィン家、バクラザン家の格納庫は空となっている[注釈 6][121]。
- ドルトコロニー群
- ドルトカンパニーの管理下にあるスペースコロニー群。地球からの距離は約150万キロメートルで、L7に位置する[122]。全長約60キロメートル、直径10キロメートルのコロニー計8基で構成され、ドルト2を始めとする労働者の居住区を兼ねる工業コロニー、地球から来た富裕層の居住区と大規模な商業エリアがあるドルト3、テイワズの地球圏支部があるドルト6など、コロニーごとに異なる様相をもつ[66]。
- 下層市民の労働待遇や生活環境は悪く、鉄華団とクーデリアの来訪を機にドルト2の一部過激派が会社側に対するクーデターを起こし、すべてのコロニーを巻き込む大規模な反乱に発展。アリアンロッドの介入によって多くの犠牲者を出すが、クーデリアのテレビを通じた呼びかけでアフリカンユニオンから圧力がかかり、会社側が組合側の要求を受け入れたことで騒乱は収束する[123]。
- ミレニアム島
- 鉄華団が降下するオセアニア連邦領の孤島。蒔苗の別荘が存在する[124]。
- エドモントン
- アーブラウの中枢議会がある都市。
- アンカレッジ
- アラスカにある都市。テイワズの現地法人が運営する鉄道が敷設されており、鉄華団はギャラルホルンの追跡を避けるために定期便を利用してエドモントンに到達する[125]。
- バルフォー平原
- アーブラウとSAUの国境地帯の平原。
技術・兵器
- エイハブ・リアクター
- MSやMA、艦船、スペースコロニーの動力に使用されている相転移変換炉。発明者の「エイハブ・バーラエナ」にちなんでこの名が付けられた[126]。物理的な破壊は理論上不可能とされるほど耐久性が高く[注釈 7]、稼働中は半永久的にエネルギーを生み出し続けるため、世界のエネルギー問題を解決しただけでなく、厄祭戦からの復興に大きな役割を果たした[128]。本編ではギャラルホルンが製造技術を独占しているため希少価値が高く、他勢力は厄祭戦時代の残存兵器からリアクターをレストアして使用している。回収困難となって稼働状態で宇宙に放棄されたリアクターも存在し、エイハブ粒子が発する疑似重力によって高密度のデブリ帯を形成する原因となっている[126]。また濫用の危険性や後述のエイハブ・ウェーブの影響で、戦後復興以降は電力供給機関として用いられなくなったほか、地球の都市部への持ち込みが禁止されている[129]。
- エイハブ粒子
- リアクター内の真空素子が相転移して生成される重粒子。慣性制御効果をもち、MSの耐Gシステムや、艦艇などの疑似重力発生装置に用いられる。MSは効率的な耐G効果を生み出す目的で、コックピットをリアクターの近くに配置している[130]。
- エイハブ・ウェーブ
- エイハブ粒子の粒子崩壊で生まれた素粒子が、超高速で拡散して発生する磁気嵐[126]。影響範囲内ではレーダーなどの電波利用機器やレーザー通信以外の無線が使用不能になるため、有線または専用の中継機を介した通信手段が用いられる[131]。リアクターはすべてワンオフ品であるためウェーブの固有周波数にも個体差があり、ギャラルホルンはデータベースと照合することで搭載機の個体識別を可能としている[132]。
- 出力を弱めることも可能で、これを応用して戦力の撹乱も可能である。また、前述の通りエイハブ・ウェーブの影響でレーダーの使用が不可能になるため、この世界において航空機が発展していない一因ともなっている[133]。
- エイハブ・スラスター
- MSの慣性飛行や姿勢制御に用いられるスラスター。MSや大型艦船のメイン推進システムである「熱相転移スラスター」より出力で劣るが、指向性のあるエイハブ・ウェーブの素粒子を排出して推進力を得るため、エネルギー効率に優れる[126]。
- 阿頼耶識システム(あらやしきシステム)
- 厄祭戦時代のMSのコックピットに採用された有機デバイスシステム。本来は宇宙作業機械の操縦用に開発されたが、MSの性能を限界まで引き出す目的で軍事転用された[134]。
- パイロットの脊髄に埋め込まれた「ピアス」と呼ばれるインプラント機器と操縦席側の端子を接続し、ナノマシンを介してパイロットの脳神経と機体のコンピュータを直結させることで、脳内に空間認識を司る器官を疑似的に形成する。これによって、通常はディスプレイなどから得る情報が直接伝達され、専門知識が無い者でも機械的プログラムに縛られない操作が可能となる[135]。このシステムによって駆動する機体はパイロットに機体が体の一部になったような感覚を覚えさせ、技術や練度を問わない動作を実現させる[136]。ただし、MSクラスの機体から送られてくる処理情報が脳に与える負担は大きく[注釈 8]、パイロットの意識がない状態でリンクを切断したり過負荷を無視して機体との接続を優先した場合は身体機能に障害が残る危険性がある[135]。
- 本編の時代では被術者の反乱を警戒してギャラルホルンによって非人道的なシステムとして使用が禁止されている。しかし、圏外圏では不完全な形で流出したものが少年兵やヒューマンデブリの間に横行しており、ナノマシンの低純度さや非正規の手順から、手術を複数回行わないと本来の機能が発揮できず、失敗して身体不随に至る確率も高い[137]。また、情報不足や技術低下により、成長期の子供以外ではナノマシンが体に定着しないと一般的に認識されるようになる[137]。地球圏では再生医療の発達に加え、ギャラルホルンが義手や義足を含む身体の機械化を良しとしない風潮を広めたため、「宇宙ネズミ」と忌み嫌われている[136]。しかし、ギャラルホルンも密かに研究を進めており、マクギリスがグレイズ・アインのデータから大人にも施せるオリジナルのシステムを復元したほか、アリアンロッドでも後述の阿頼耶識TypeEが開発されている[137]。
- ナノラミネートアーマー
- エイハブ・リアクター搭載兵器に採用されている特殊装甲。エイハブ・ウェーブに反応して衝撃の吸収・拡散に適した複層分子配列を形成する金属塗料が表面に蒸着されており、実弾やビーム兵器に対して高い防御力を発揮する[注釈 9]。ただし、質量物による近接打撃には弱く、経年やたび重なる攻撃で塗膜の劣化・剥離が起こると、本来の性能を発揮できない[100]。特殊塗料は普通の塗料と同様に複数の色が存在し、価格も異なる。最も高価なのは視認性の低い黒系や紫系とされ、バルバトスやグレイズ改の改修部分は、鉄華団の経済事情から最も安価な白で塗装されている[139]。
- 高硬度レアアロイ
- MSのフレームや武装などに使用されている特殊合金。エイハブ・リアクターの高出力に耐えうる耐久性をもち、数百年程度ではほとんど経年劣化や腐食することがない[139]。このため、厄祭戦時代のMSの多くが300年後も現役稼働できる要因となっている。
- ダインスレイヴ
- 対MA用に開発された大型質量兵器。高硬度レアアロイ製の特殊KEP弾を電磁式射出機で投射することで、艦船規模のナノラミネートアーマーをも貫通する絶大な威力を発揮する[141]。基本はモビルスーツ一機が担いで撃ち出す形で運用する。しかし誘導兵器ではないため、発射地点の推測ができれば回避は可能である[141]。また一発撃つと次弾装填までに時間が掛かり、速射性においても問題を抱えている。そのため、厄祭戦時代においても対MAの決定打とはならず、ガンダム・フレームが運用されている[141]。
- 厄祭戦後は月の地表すら変える過剰な威力が問題視され、非人道的兵器として使用を禁止された[142][注釈 10]。ギャラルホルンは戦後も多数のダインスレイヴを保有しており、セブンスターズの権限を行使したイオクやラスタルによって、タービンズ摘発や革命軍との戦闘に投入される[144]。
- アリアドネ
- エイハブ・ウェーブの影響下で惑星間航行を可能にする管制システムおよびその航路。約百万キロメートル間隔で配置された自立型の宇宙灯台「コクーン」をそれぞれ連動させる仕組みになっており、艦船はコクーンから発生する一定周期のエイハブ・ウェーブを感知して現在地を把握することができる。隣接するコクーン同士は互いのエイハブ・ウェーブによって自身の座標を常時特定しており、ずれが生じた場合も自動修正が可能となっている。この性質を利用してコクーンを長距離通信の中継機として使用することもできる[131]。
- LCS (Laser Communication System)
- エイハブ・ウェーブの影響を受けにくい短距離レーザー通信システム[68]。可視光に波長が近い光を利用し、百万キロメートル程度が有効距離となっている。アリアドネを経由することで長距離通信も可能となるが、通信対象との間に遮蔽物があると通信不能となる欠点がある。
- 火星ハーフメタル
- 火星で産出される希少金属。エイハブ・ウェーブによる電波障害を防ぐ特性があり、ウェーブの影響下での電子機器の保護には必須とされる[145]。クーデリアの当初の目的は、火星とアーブラウで結ばれたハーフメタル取引の規制解放である[81]。また、火星の大地には厄祭戦時代のMSやMAなどが埋まっていることがあるが、ハーフメタルを多く含有する土地では発せられるウェーブが大きく減衰するため、発見されていない機体も多い[145]。
- ^ 現在は公式サイトのSpecial「C.G.S. Archive」に自動的にリダイレクトするようになっている。
- ^ 同時間枠の歴代最低視聴率は『STAR DRIVER 輝きのタクト』が記録した1.2%[50]。
- ^ 志願兵と区別するために、左肩側に赤い縦ラインが引かれた衣服を着用している[69]。
- ^ テイワズ加入後は経営が軌道に乗っているという報告がオルガたちに寄せられる[76]。
- ^ 監査局のトップは局長で、その下に特務一佐〜特務三尉と続く。統制局のトップは統制幕僚長で、支部幕僚長、准将と続き、作戦指揮を実行する佐官、MSパイロットを務める尉官、MWや車両の運転、生身で行動する下士官、士に分類される[84]。
- ^ ボードウィン家のガンダム・キマリスはガエリオにより実戦投入されるが、バクラザン家の機体の詳細は不明。
- ^ 損壊した際には、宇宙的な影響が発生するとされる[127]。
- ^ そのため三日月はよく「火星ヤシ」と呼ばれるデーツに似た果実を食して糖分を補給している[16]。
- ^ 劇中では装甲表面が結晶構造を形成することで、ビームを周囲へ散乱させる演出になっている[138]。
- ^ プロデューサーを務めた小川正和は、インタビューにおいて、厄祭戦後に人類同士の戦争が発生し、月面においてもダインスレイヴが使用された可能性を示唆している[143]。
- ^ この理由は劇中で明言されていないが、長井は「幼少期に栄養失調だったかもしれないから」、小川と企画担当の谷口廣次朗は「阿頼耶識システムの影響で成長阻害が起きている可能性があるから」と回答しており、実際のオルガとの年齢差は1歳程度しかないとされる[134][16]。
- ^ 演じた河西は「仲間と認めている相手や気になる人は覚えるが、それ以外の他人には関心がない。」、「自分もどう接すれば仲良くなれるか分からない。」と話している[146]。
- ^ 河西は三日月の姿勢について「初めて人を殺した時から善悪の判断がついていないのでは」と述べている[147]。また長井は三日月を「天才の奇形性」と表現しており、強く天才であるが故に異常性のあるキャラクターとして作ったと語っており[18][16]、劇中の行動から、放送終了後のインタビューで極悪人である旨を明言している[148]。
- ^ a b コーラルの調査書より。
- ^ ヴィダールの仮面には阿頼耶識を介した活動を補助する役割をもっている[207]。
- ^ コックピット内は培養液で満たされているため、機体を通さなければ会話ができなくなっている。
- ^ a b 厄祭戦前後から存在する文化で、さまざまな揉めごとを解決するために戦争の代わりとして行われるもの。決闘を挑む際は挑戦者が赤い布を掲げて敵陣に赴く[213]。
- ^ そのため鉄華団には一定の理解を示していたが、最終目的のために降伏を申し入れたオルガを門前払いする。
- ^ マグミクスによれば、イオクに不快感を持っていた視聴者は、この死に様に留飲を下げたとされる[225]。
- ^ ハンマーヘッド艦内にいる乳幼児のほか、既に就学年齢に達している年長組がいる[238]。
- ^ 文献では「滑腔砲」、プラモデルの取扱説明書では「滑空砲」と記述されている。
- ^ 2度目のグシオンとの戦闘以降は柄が追加され、運動エネルギーの伝達効率が改善される[187]。しかし三日月は太刀を斬る武器と認識していなかったため、対グレイズ・アイン戦終盤で初めて使い方を理解する[17]。
- ^ トレーディングカードゲーム『ガンダムクロスウォー』のカード「ガンダム・ヴィダール(BT05-013)」では「ASW-G-66」と表記されており、正体が暗示されていた。
- ^ デザインを担当した形部は本放送終了後、『伝説巨神イデオン』に搭乗するゲル結界のような脳細胞を破壊する兵器という構想を経て、接近戦用のビーム照射機「エイハブ・レーザー・キャノン」として設定していたことを明かしている[301]。
- ^ シノによって「ギャラクシーキャノン」と命名される。
- ^ シノによって「スーパーギャラクシーキャノン」と命名される[162]。
- ^ そのため、デザインを担当した鷲尾はインタビューの中で、「ほかのガンダム・フレーム機よりも高性能というわけではなく、性能面ではむしろ三日月に合わせてモスボールされたルプスレクスや、武装の汎用性が高いキマリスヴィダールのほうが上回っているのではないか」と見解を述べている[312]。
- ^ デザインした鷲尾は、グリムゲルデのヴァルキュリア・ソードを仕立て直した装備と想定している[313]。
- ^ 当初はグレイズ改の改修部分と同じく安価な白で塗装される予定だったが、ブルワーズから得た戦利品の中に赤系統の塗料が含まれており、シノの意向でこちらの色に塗装される[328]。
- ^ 形部は、「ライドが地球で見た雷をイメージして塗った」と想定しており、「雷電号」の名はそのイメージに加えて、「ライドの獅電」の略という意味を込めている[359]。
- ^ a b TBS系列局が所在しない秋田県・福井県・徳島県・佐賀県を除く(遠距離受信および区域外再放送は含めず)。
- ^ 第1話放送前夜祭で上映されたメイキング映像。
- ^ 商品名は『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 弐』。
- ^ ただし、ガンダム・フレームやグレイズ・フレーム以外のMSのキットは、一部のみの再現となっている。
- ^ a b c d 新規録りおろしラジオとして収録[441]。
- ^ 当初はTMPM02/ACと表記された[455]。
- ^ レースの目的地を示すナビとしての機能をもち、保持者のみが賞金を手にする資格を有する。
- ^ デザインを担当した鷲尾は、サブアームでMAの子機を各個撃破しつつ主武装による近接戦闘でMA本体を叩く戦術を想定しており、各部の重装甲や阿頼耶識システムも考慮すれば、対MA戦で上位の戦闘力を発揮するのではないかとコメントしている[513][514]。
- ^ アレンジした形部一平は百華を「モモカ」と読ませるつもりだったが、「ももかorひゃっか」とあいまいに答えたところ後者が公式として採用された経緯を述べている[519]。
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