周期表 色々な周期表

周期表

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/31 21:40 UTC 版)

色々な周期表

実物周期表(国立科学博物館の展示)

周期表に表示される情報

周期表の各マスには、最低限元素記号と原子番号が記される。大きな周期表においては、これに加えさまざまな情報が追記されたものもある。日本ならば日本語の名称というように作成地域の言語における元素名、原子量価電子数、さらに拡張的なものでは電子配置や利用例なども加えられることがある。

原子量について、元素の多くは同位体を持つ。これらの原子量は一定ではないため、表記する際には慣例的に半減期が最も長い同位体を括弧つきで示す[31]。なお、原子量には絶対質量と相対質量があり、後者は質量数12の炭素(12C)を基準「12」と置いて設定される。これには物理学会と化学学会の間で紆余曲折があり、1820年頃は酸素を基準16として設定していたが、1890年代になって天然の酸素は実は3つの同位体の混合物であることが判明した。そこで物理では厳密に16Oを基準として定めたが、化学では従来通り酸素の3つの天然同位体が混ざった状態を基準としていた。1960年になり、基準の統一についての検討がなされたが、16Oを基準に設定すると化学では原子量や分子量の数字が従来の値から0.027 %も変化してしまうので、天然の同位体の存在割合が比較的少ない12Cを新しい基準に採用することにして基準の変更による数値の変化を0.0043 %に収めた[32]

水素の位置

現在一般的な周期表では、水素は最も左上の場所にある。しかしこれは適切ではないのではという意見が過去IUPACの雑誌にて提唱された。現状では水素は、最外殻に一つの電子を持つ1族の位置にあるが、リチウム以下でこの属はアルカリ金属を指しており、金属ではない水素がここにある矛盾が指摘された。また、電子殻(この場合亜殻の1p軌道)が満たされる状態からひとつ電子が少ないと捉えると、フッ素以下の17族(ハロゲン)の仲間と考えることも可能であり、実際に水素はアルカリ金属的な性質とハロゲン的な性質を併せ持つ。IUPACは水素の位置を左上端に置くとする見解を示しているが、アメリカ化学会などはこれらを考慮し、水素を第1周期の中央部分に置いた周期表を掲載した書籍を発行している[33]。また、周期表によっては、17族のフッ素の上に水素のための別枠を設け、ヘリウムの左隣に併記する方法をとった物も存在する[34]

また、ヘリウムも最外殻の電子数が2つであることを重視して2族のベリリウムの上に置くべきという主張もある。しかしヘリウムは貴ガスの性質を持つため、右端に置く現状が最適という考えが一般的である[33]

立体周期表

平面的な周期表では1族と18族が大きく断絶しているように見えるが、本来この2つの族は原子番号が隣り合っている通り、連続して示されるべきものである。一般的な周期表は、いわば螺旋状に連なるべきものを無理に平面で表示している。京都大学教授の前野悦輝は円筒の上に示すエレメンタッチを考案し、立体的な周期表を示した[35]

欄外に置かれたランタノイドとアクチノイドを取り込んだ立体周期表を、化学者ポール・ジゲールが提案した。平面状の周期表を立てた棒に貼り付け、ランタノイドとアクチノイドの部分を直角に差し込んだもので、将来119番目以降の元素が発見された際に設ける必要が生じる欄外も取り込むことができる[35]

カナダの化学者フェルナンド・デュフォーは、柱に取り付けた複数の透明なプレート上に各原子を配列し、プレートで同一の周期を示しながら、族を上から見下ろした際に元素の表示が重なって見えることで周期律を表す立体周期表を提案した。これは、柱を中心にそれぞれの方向に近似する性質を持つ元素の集団が見通せ、それが規則的に増加する周期それぞれの性質を把握しやすい形となっている[35]

電子軌道による周期表

電子軌道で分類する周期表もある。分類は次の通り。

電子軌道周期表
周期 族または元素名 軌道名
1 1と18 1s
2 1と2 2s
13-18 2p
3 1と2 3s
13-18 3p
4 1と2 4s
3-12 3d
13-18 4p
5 1と2 5s
3-12 4d
13-18 5p
6 1と2 6s
ランタノイド元素 4f
3-12 5d
13-18 6p
7 1と2 7s
アクチノイド元素 5f
3-12とトリウム 6d
13-18 7p

様々な周期表


  1. ^ a b c 米沢富美子「第11章 原子核物理学を築いた女性たち、元素周期表」『人物で語る物理入門(下)』(第1刷)岩波新書、2006年、112-116頁。ISBN 4-00-430981-6 
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  3. ^ Andrews, Julian E.; Brimblecombe, Peter; Jickells, Tim D.; Liss, Peter. S.; Reid, Brian J.; 渡辺 正 訳 (2005), 地球環境化学入門, シュプリンガー・ジャパン, pp. 16, ISBN 9784431711117 
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  8. ^ 新版元素ビジュアル図鑑(2016)、p.102
  9. ^ ニュートン別冊(2010)、pp.34-35、メンデレーエフの正しさは、原子構造で証明された
  10. ^ a b c d e 竹内(1996)、pp.76-83、5.1周期表
  11. ^ ニュートン別冊(2010)、pp.36-37、メンデレーエフを最後まで悩ませた元素の一群
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  19. ^ Bryson, Bill (2004). A Short History of Nearly Everything. London: Black Swan. pp. 141–142. ISBN 9780552151740 
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  23. ^ アイザック・アシモフ著; 小山慶太・輪湖博 訳 (1996), アイザック・アシモフの科学と発見の年表, 丸善, p. 261, ISBN 4621045377 
  24. ^ a b c ニュートン別冊(2010)、pp.28-29、カードゲームでひらめいた!周期表の誕生物語
  25. ^ a b c 斉藤(1982)、2章 元素の種類と周期律、pp.35-39、2.1.4.メンデレーエフとマイヤー
  26. ^ a b アシモフ(1967)、第8章 周期表、pp.170-175、空所を埋める
  27. ^ 竹内(1996)、pp.97
  28. ^ a b アシモフ(1967)、第8章 周期表、pp.175-182、新しい元素の群
  29. ^ 斉藤(1982)、2章 元素の種類と周期律、pp.40-41、2.1.5.周期表の完成
  30. ^ 斉藤(1982)、2章 元素の種類と周期律、pp.47-51、2.2.3.アルゴンと貴ガス
  31. ^ Dynamic periodic table” (英語). ptable.com. 2011年1月4日閲覧。
  32. ^ ニュートン別冊(2010)、pp.64-65、元素の基準はなぜ水素から炭素になったのか
  33. ^ a b ニュートン別冊(2010)、pp.42-43、水素の位置で新提案!周期表の並び方が変わる?
  34. ^ 「まんが アトム博士の科学探検」(東洋出版)60ページ・187ページ
  35. ^ a b c ニュートン別冊(2010)、pp.44-45、さまざまなタイプの周期表が考案されている
  36. ^ Problem of the Week” (英語). Chemistry. 2011年1月4日閲覧。
  37. ^ Reriodic Law can be understood in terms of the Tetrahedral Sphere Packing” (英語). perfectperiodictable.com. 2011年1月4日閲覧。
  38. ^ a b 坂根弦太、化学用語としての周期表の今昔物語(講座:化学の大学入試問題を考えるための基本) 化学と教育 Vol.58 (2010) No.4 p.190-193, doi:10.20665/kakyoshi.58.4_190
  39. ^ “周期律表”という言葉について
  40. ^ 三宅正二郎、関根幸男、金鍾得 ほか、ナノ周期積層膜の摩耗特性を活用したナノ加工技術の開発 精密工学会誌 Vol.66 (2000) No.12 P.1958-1962, doi:10.2493/jjspe.66.1958
  41. ^ TVクイズ番組『たけし・逸見の平成教育委員会』エンディングテーマ曲・二番歌詞
  42. ^ テレビアニメ『エレメントハンター』エンディングテーマ曲。






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