高等学校通信教育 学習の様態

高等学校通信教育

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/09 07:04 UTC 版)

学習の様態

入学条件

  1. 入学時に満15歳以上であること。(ただし、中学校等を卒業していない場合は、学校によって取り扱われ方が異なっている。)
  2. 年齢上限なし。
  3. 高等学校在籍・中退者で、転学編入学退学者の場合など)を希望する者。
  4. 事情により、「全日制の課程」に在学・在籍できない者。
  5. 事情により、「定時制の課程」に在学・在籍できない者。ただし、「定時制の課程」の教育のみで卒業必要単位をそろえる高等学校のみで、定通連携制度のある高等学校の場合は、必要単位の一部を通信制課程の教育で充てることができる。
  6. 上記以外に各学校設置者の規定及び判断により、年齢上限・性別などの入学条件が指示される(私立学校については、その裁量権が認められている)。

高等学校通信教育の利点

高等学校通信教育の利点は、事情があって「高等学校」や「中等教育学校の後期課程」において転学したい人や、以前に中退した人にも「高等学校」または「中等教育学校の後期課程」を卒業できる機会があることである。また、毎日登校する必要がないので、在籍者自身の時間を自由に活用することができる。また、芸能やスポーツなどのプロ、またはプロを目指す人、難関大学を志望しても対応できる学校にいない人、働いて家計を助けたい人、「全日制の課程」「定時制の課程」などにおいて人間関係などでの悩みが解決困難な人、その他の諸々の理由で現在在籍している学校になじめない人、身体的な障害がある人などでも学ぶことができる。

高等学校通信教育は、日本国憲法の第26条第1項に定められている「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」という条文を実施するための制度の1つである。国民に均等に学習の機会を与えられていることで、高等学校通信教育は日本の教育を考える上で無視することが難しい。

「添削指導」と「面接指導(スクーリング)」

すべての学習が自宅などにおける自己学習で完結するわけではなく、一定の添削指導が終了する度に試験を受けて、単位を修得する必要があることや、面接指導(スクーリング)があるというのも重要な事項と考えられる。

面接指導(スクーリング)とは、学校が指定する場所で、教員と生徒によって学習活動・教育活動を行うことである。体育等の実技科目はスクーリングとレポートによる指導をもとに単位を修得することが多く、試験を行わない場合がある。

例えば、教科「国語」の科目「国語総合」であれば、単位数は2単位で、添削指導に係わるレポートが6通、面接指導(スクーリング)2時間、教科「体育」の科目「体育」では、単位数2、添削指導に係わるレポート2通、スクーリング10時間という状況となる。面接指導(スクーリング)の方法は、学校によって異なる。毎週1回、あるいは3~5回から、1年間の一定期間(夏休みなど)にまとめて、というところもある。

テストやレポートで合格できなくても、その科目の単位が取得できなかったということで、全日制や定時制のように留年ということにはならない。必修科目の場合はテストやレポートで合格するまで再学習やスクーリングの再受講が必要となる。

卒業に必要な単位が揃わなければ、最短修業年限で卒業できず、実際には卒業時期が先延ばしになる。

※参考:通信制高校の仕組み、生徒、学費、メリット

通信制の課程における教育課程

各教科・科目の添削指導の回数および面接指導の単位時間(1単位時間は,50分として計算する。)数の標準は、1単位につき次の表の通りとされるほか、学校設定教科に関する科目のうち普通教育に関するものについては、各学校が定めるものとされている。

各教科・科目 添削指導(回) 面接指導(単位時間)
国語,地理歴史,公民及び数学に属する科目 3 1
理科に属する科目 3 4
保健体育に属する科目のうち「体育」 1 5
保健体育に属する科目のうち「保健」 3 1
芸術及び外国語に属する科目 3 4
家庭及び情報に属する科目
並びに専門教育に関する各教科・科目
各教科・科目の必要に応じて2〜3 各教科・科目の必要に応じて2〜8

総合的な学習の時間の標準単位数は3〜6単位とし、その添削指導の回数及び面接指導の単位時間数については、各学校において、学習活動に応じ適切に定めるものとされている。

面接指導の授業の1単位時間は、各学校において、各教科・科目の面接指導の単位時間数を確保しつつ、生徒の実態および各教科・科目等の特質を考慮して適切に定めるものとされている。

学校が、その指導計画に、各教科・科目または特別活動について計画的かつ継続的に行われるラジオ放送、テレビ放送その他の多様なメディアを利用して行う学習を取り入れた場合で、生徒がこれらの方法により学習し、その成果が満足できると認められるときは、その生徒について、その各教科・科目の面接指導の時間数又は特別活動の時間数のうち、各メディアごとにそれぞれ10分の6以内の時間数を免除することができるとされている。ただし、免除する時間数は、合わせて10分の8を超える[注釈 1]ことができないとされている。

特別活動については、ホームルーム活動を含めて、各々の生徒の卒業までに30単位時間以上指導するものとされている。

定義と実施状況

広域の通信制の課程」とは、

  • 高等学校の「通信制の課程」のうち、当該高等学校の所在する都道府県の区域内に住所を有する者のほか、全国的に他の都道府県の区域内に住所を有する者を併せて生徒とするもの、その他政令学校教育法施行令)で定めるもの(学校教育法第54条第3項)
  • 当該高等学校の所在する都道府県の区域内に住所を有する者のほか、他の二以上の都道府県の区域内に住所を有する者を併せて生徒とするもの(学校教育法施行令第24条)

である。

すなわち、本校所在地の1都道府県に加えて2都道府県以上、併せて3都道府県以上の地域に在住する者を対象として生徒募集を行う場合は広域通信制課程に該当する。

生徒の募集地域は全国47都道府県を対象とする場合特定の地方・地域の都道府県に限る場合など、学校によって異なる。

「広域の通信制の課程」を設けている学校には、分校、協力校、学習センターなどが設けられている。また、全日制の高等学校等の施設を借り、協力校としてスクーリングを行っている学校や、専修学校高等課程などの専修学校を協力校としている学校もある。

上記に対して「狭域通信制高校」とは、本校所在地の1都道府県のみ、あるいは本校所在地に隣接する1つの都道府県と併せて2都道府県の地域に在住する者を対象に生徒を募集している高校のことである。

株式会社による広域通信制高等学校は、2004年度に構造改革特区法で認められてから、8年で20倍にまで急増した。また、学校法人による広域通信制も増加の傾向にある[5]

このように、近年、広域通信制の高等学校の学校数や生徒数は大きく増加しているが、その添削指導のレベルに対しては改善[6]が求められており、ウィッツ青山学園高等学校の不祥事発覚以降は安易な履修認定についても改善が求められている[7]


  1. ^ 免除されない10分の2の時間が、広域通信制高校で「年四日のスクーリング通学」と広報されている根拠となっている。
  1. ^ UNESCO (2008年). “Japan ISCED mapping”. 2015年10月31日閲覧。
  2. ^ 通信制高校とは - コトバンク”. コトバンク. 2018年3月17日閲覧。
  3. ^ 高等学校教育の現状について”. 文部科学省. 2023年6月12日閲覧。
  4. ^ 学校教育法等の一部を改正する法律(昭和36年10月31日法律第166号)衆議院のWebページより)
  5. ^ >資料2-2 文部科学省 「定時制課程・通信制課程高等学校の現状」p.5
  6. ^ 文部科学省 「中央教育審議会 初等中等教育分科会 高等学校教育部会(第6回) 議事録」 小谷教育制度改革室長の発言 2012年3月9日
  7. ^ 高等学校通信教育の質の確保・向上方策について(審議のまとめ)平成29年7月広域通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議 p.33
  8. ^ 学校法人柏専学院”. 2022年10月21日閲覧。
  9. ^ 学校法人札幌静修学園”. 2022年10月21日閲覧。
  10. ^ [1]
  11. ^ 令和4年度第1回山形県私立学校審議会次第 - 山形県私立学校審議会・2022年12月23日(2023年2月12日閲覧)
  12. ^ 学校法人緑丘学園”. 2022年10月20日閲覧。
  13. ^ 学校法人長野日本大学学園”. 2022年10月21日閲覧。
  14. ^ 学校法人四日市メリノール学院”. 2022年10月21日閲覧。
  15. ^ 学校法人東洋学園”. 2023年11月4日閲覧。
  16. ^ 学校法人弘徳学園近畿大阪高等学校”. 2022年10月18日閲覧。
  17. ^ 学校法人広島県新庄学園”. 2023年11月4日閲覧。
  18. ^ 学校法人恭敬学園”. 2022年10月20日閲覧。
  19. ^ 学校法人久留米信愛学院”. 2023年11月4日閲覧。
  20. ^ 令和3年度第2回宮崎県私立学校審議会議事概要 - 宮崎県私立学校審議会・2022年1月17日(2023年2月12日閲覧
  21. ^ 学校法人高千穂学園”. 2022年10月20日閲覧。
  22. ^ 『朝日新聞』 2012年8月19日付.





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