電位 数式による説明

電位

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/19 00:54 UTC 版)

数式による説明

定義

今(3次元ベクトル)空間上に電場があり、点 における電場が、

で表されているとする。

P0 を定められた基点とし、P を空間上の任意の点とし、さらに CP0 から P への経路とし、線積分

を考える。静磁場であればこの線積分は P0P を結ぶ経路 C に依存しない(後述)ので、 この線積分の値を(P0 を基点とした場合の)P における電位と呼ぶ。 一方静磁場でない場合は、前述の線積分は経路 C に依存してしまうため、「Pにおける」電位という言い方をすることはできない。

以下 P における電位を VP と表記する。 静磁場の場合電位は経路 C に依存しないので、C を明記せず

とも表記する。

基点に関して

電位の定義は基点の選び方に依存するものの、基点を取り替えても積分定数が変わるだけであるので、 紛れがなければ基点を明記せず、単に「P における電位」と呼ぶ。

基点は無限遠点を選ぶ場合が多い。 この場合、電位は前述の定義で基点 P0 を無限遠に飛ばすことで求められる。 十分遠方では電場が0であると仮定[注釈 2]した場合、電位の値が P0 の無限遠への飛ばし方に依存しないことを証明できるので、 電位を無限遠への飛ばし方によらず定義できる。

性質

大きさ q の電荷に電場 が与えるクーロン力

に等しいので、 電位と仕事の定義より、電位は単位電荷を P から P0C にそって動かした時に必要とされる仕事量に等しい。

静磁場の場合電位は電位は経路に依存しないので、電位 VPP に実数 VP を 対応させる関数とみなせる[注釈 3]。 この関数の勾配は以下を満たす:

なお、一般にベクトル場 に対し、

を満たす関数 f の(スカラー)ポテンシャルという。 従って前述の式は電位が電場のポテンシャルであることを意味する。

ポテンシャルは(もし存在すれば)定数を除いて一意であることを簡単に示せる。 従って電場のポテンシャルは、前述したものかそれに定数を加えたもののみである。

静磁場では電位の定義が経路に依存しないことの証明

最後に、静磁場であれば電位の定義が P0P を結ぶ経路 C に依存しないことを示す(ポアンカレの補題も参照)。 すなわち、C1C2P0P を結ぶ任意の2つの経路としたとき、

となることを示す。

このためにいくつか記号を定義する。 C1C2を以下のような閉曲線とする: C1 にそって P0 から P に行き、 その後 C2 を逆向きにたどって P0 に帰る。 さらに SC1C2 を境界として持つ任意の曲面とし [注釈 4]、 磁束密度を 、時刻を t で表す。このとき、

となるので、左辺第二項を移項することで欲しい式が示せる。 ここで(1)と(2)はそれぞれストークスの定理マクスウェル方程式から従い、(3)は静磁場であることから従う。


静磁場とは限らない場合への拡張

静磁場とは限らない場合マクスウェル方程式の一式

の右辺は0になるとは限らない。 電位の経路依存性の証明には右辺が0になることを用いていたので、 静磁場とは限らないケースでは電位の経路非依存性がいえない。

しかし電位の概念を適切に補正することで経路に依存しないポテンシャル概念 φ(P) を得ることができる。 この φ(P) は電磁場スカラー・ポテンシャル と呼ばれ、磁場に対するポテンシャル概念であるベクトル・ポテンシャル と合わせて電磁ポテンシャルと呼ばれる[注釈 5]

スカラー・ポテンシャルは静磁場とは限らない場合における電位の代替概念である。 静磁場の場合スカラー・ポテンシャルは前述の電位の定義と一致する。 また電磁ポテンシャルは相対論と相性がよく、ローレンツ変換に対する不変性を示すことができる。


注釈

  1. ^ 静磁場であることを仮定している。一般の場合に関しては電圧を参照。
  2. ^ 物理実験において今観測している電場が宇宙のはるか彼方に影響したりその逆が起こったりすることは考えにくいのでこの仮定は妥当である。
  3. ^ 静磁場でない場合はこうした関数を定義できないので、そもそも以下の議論でgradを考えることができない。
  4. ^ なお上の議論ではC1 -C2 を境界として持つ曲面S が必ず存在することを暗に仮定しているが、 空間が一般の多様体である場合はこのようなS が存在するとは限らない。 従ってこの議論は空間が3次元ベクトル空間であることを本質的に用いている。
  5. ^ 「スカラー・ポテンシャル」という言葉はスカラーの形で表されるポテンシャル一般を指す場合もあるので注意が必要である。ベクトル・ポテンシャルも同様。

出典

  1. ^ "電位". ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典. コトバンクより2023年8月19日閲覧


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