野門 名所・寺社

野門

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/03 05:28 UTC 版)

名所・寺社

石燈篭

野門には末社や小祠を含め多くの神社がある。総鎮守は北峯神社。鎮守は蛇王神社・神明宮・飯綱神社の3社。境内社は7つあり、春日神社・山神社・大杉神社の3社と稲荷神社と八坂神社がそれぞれ2社ある[46]

栗山東照宮

栗山東照宮

栗山東照宮は徳川家康像と日光三社権現の御神体が祀られる神社[47]。野門集落の中央部に鎮座し、野門東照宮とも呼ばれる[10]。口碑伝承によると、1868年(明治元年)8月、戊辰戦争の戦火を逃れて御神体が当地に移されたのが当神社の始まりとされる[47]が、しばらくは野門村の地主の家が「開かずの間」を設けて代々保管し[22]、実際に神社として建立されたのは1970年(昭和45年)のことである[48]

徳川家康生誕を祝う例祭は毎年10月26日に催されていた[47]が、2022年現在は10月の第4日曜日に変更されている[49]。御神体は「東照公坐像 日光三社権現坐像」として日光市有形民俗文化財に指定されており、例祭の日に開帳される[50]

尚、同様の話が山形県の山寺立石寺にもあるため、真偽は口伝の程度に留まる[47]。しかし、近世において野門は幕府の神領であったことなどから、当神社を観光資源として村おこしに活用し、「家康の里」として野門温泉共同浴場「家康の湯」などを中心に観光整備を進めていた[47]。(家康の湯は1995年〔平成7年〕に開設された[51]が、2013年〔平成25年〕に休止し[52]2016年〔平成28年〕に正式に廃止された[53]。日向温泉新源泉から引湯[54]、平家高原家康の里開発組合が指定管理者として運営していた[55]。)

内田康夫小説『幻香』(浅見光彦シリーズ)には、浅見光彦が殺人事件の被害者の足跡をたどって野門を訪れるシーンがある[56]。作中で浅見は栗山東照宮を訪ねて手がかりを探したり、野門の民宿で事情を聴いたりしている[56]。この作品のテレビドラマ版(フジテレビ浅見光彦シリーズ第48作、2013年)が制作された際には、栗山東照宮がロケ地の1つとなった[57]

八坂神社

八坂神社

八坂神社は野門の境内社で旧暦6月15日(現在は7月15日)に天王様の祭りが行われている。天王様の祭りは、京都の祇園にある八坂神社の祭神牛頭天王に関するもので、牛頭天王が夏の暑さを迎えて起こる病気の流行などを防ぐ神様として信仰されている。元々、御神体は天狗のような面であったが、盗難に遭い、現在は古峰神社から受けた天狗の面が御神体となっている。祭り当日は、この御神体を神輿に載せ若衆が担いて村を練り歩き、その後集会所で獅子舞が行われる。また、あらかじめ天王様の花と称す造花が造られて、各家に1本ずつ配り、玄関のところに挿しておく慣わしがあり、これにより家内安全を祈願する[58]

薬師様

薬師堂

4月8日が縁日で集落の十数軒共同でお祭りが行われている。当地では、薬師様が主に目の病を治してくれる仏様として信仰が深く、お堂の中の「め」と墨書された夥しい量の半紙から信仰の深さが窺える。中には信仰深さから自身の髪を結納する人もいる[59]

二十三夜講

当地では、毎月23日の夕方から夜中にかけて、若い女性を中心に蕎麦を食べながら世間話をする二十三夜講があった。本来は行員が集まって飲食をしながら月待ちをする信仰であったが、次第に娯楽色が強くなったと云う。また講員が女性で、安産・子育てにご利益があると信じられている[60]

男体講

行屋
行屋内部

当地の男体講では男体山登拝が行われていた。明治時代中期までは行屋で1週間行を積み、身を清めて男体山へ出発した。行屋には女性は近づけず、行人は自分で米を持ち込み調理していたと云う。しかし、時代と共に行を積む期間は短くなり、大正末期までは5日間、昭和に入ってからは3日間に短縮され、1990年代後半時点では7月31日だけ水行をするまでに簡略化された。当地では男体山を「仏の山」とも呼んでいることから、男体山登拝が生変の機会とされていたと推測されている。また行屋には1811年(文化8年)建立の男体山の石燈篭がある[61]

野門の地蔵

当地には物を失くした時にお祈りすると良いといわれる地蔵がある。この地蔵を持って軽く感じた時に紛失物は見つかるが、重く感じる時には見つからないとされている[62]


注釈

  1. ^ 1965年(昭和40年)時点では吊橋だった[9]

出典

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