部首 漢字と部首

部首

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/07 17:59 UTC 版)

漢字と部首

ある漢字がどの部首に分類されるかは字書による。日本の漢和辞典の多くは、『康熙字典』の分類か、その変形である。なお、日本では部首の名称に「正式」なものはない(字書により異なる)。

部首の基準

形声文字

形声文字では、意味を表す部分の部首に分類されることが多い。たとえば「銅」の字は、左半分の金属を意味する「」(金偏、かねへん)を部首とすることが普通である。これは、字書では「金」の部に置かれる。

漢字の90%以上を占める形声文字は、意味を示す「意符」の部分と、音を示す「音符」の部分によって成っている。形声文字では部首の部分が意符となることが多いため、読みなどの知識があれば、部首を比較的容易に見つけることができる。

似たような文字の例を二組挙げる。

  • 「投」と「殴」: 「投」の字は「殳」が音符で意符は「手」、したがって「手部」に属する。「殴」の字は「区」が音符で意符は「殳」、したがって「殳部」に属する。
  • 「閥」と「聞」: 「閥」の字は「伐」が音符で意符は「門」、したがって「門部」に属する。「聞」の字は「門」が音符で意符は「耳」、したがって「耳部」に属する。

しかし、意符が部首になっていない場合は、便宜上字形によって分類するため、部首が分かりにくいことがある。例えば「輝」は意符「光」と音符「軍」から成るが、『康熙字典』のように「光部」を設けていない場合、なるべく画数の多いパーツとして「車部」に入れるのが一般的である。

形声文字以外

会意文字では、構成要素がいずれも「意符」にあたり、部首分類は字書による。たとえば、「相」は木と目の会意文字である。「木部」「目部」のうち、説文解字でも康熙字典でも旁の「目部」に分類している。「男」は田と力の会意文字であり、康熙字典では上部の「田部」に、説文解字では「男部」に分類している。ただし会意文字であっても、「」(「大」+「火」)、「」(「黍」+「口」)など、その字自体を意符とする形声または会意文字などがある程度の数存在する(それぞれ、赧赫赭、馥馨馞など)ために、その字自体が部首となっているものもある。

象形文字指事文字の場合は、「日」「月」「一」「二」などのように、それ自体が部首の場合は当然その部首に属することになるが、その他の象形文字は「曲」→「曰部」や「象」→「豕部」など便宜上字形によって分類することになる。指事文字では「本」「末」→いずれも「木部」など元になった象形文字の部首に属するものもあるが、「上」「下」「三」→いずれも「一部」など字形によって分類されているものもある。

そもそも、偏旁のように、分離した部分が無い文字では、分類は必然的に分かりにくい。たとえば康熙字典では「事」は「亅」部に、「垂」は「土」部に置かれる。

字形の変化のため、便宜上字形によって分類せざるを得なくなり、部首が分かりにくくなっているものもある。例えば「具」という文字は「鼎」と「廾」の会意文字で、『説文解字』では「廾部(𠬞部)」に分類しているが、楷書の字形がもはや「廾」の原型をとどめていないので、現代の字書は字形によって「八部」に分類している。

部首の型と位置

心部とされうる部分は、いくつかの変形がある。

  • 「志」の字の下側。これは、ほぼそのままの形である。
  • 「快」の字の左側、「」。これは、普通「りっしんべん」と呼ばれる。
  • 「慕」の字の下側、「」。これは、普通「したごころ」と呼ばれる。

これらは、いずれも心に関係した意味を表す。字書により、これら全てを「心」部に入れたり、引き易くするために、形を重視して各々を別の部首としたりする。

一方で、部首は、原則として文字のグループに共通する意味を表すので、部首のつく位置は必ずしも一定していない。たとえば「鳥」が「鴃(もず)」のように偏となることも、「鶏(にわとり)」のように旁となることも、「鳧(けり)」のように冠となることも、「鶯(うぐいす)」のように脚となることもあるが、どの位置についてもそれが「鳥部」の字であることに変わりはない。「言」は偏になることが多いので「ごんべん(言偏)」と呼ばれているが、「誓」などのように偏以外の位置につくこともあり、そうしたものも「言部」の字であることに変わりはない。

部首の多くは偏旁冠脚(へんぼうかんきゃく)、すなわち左、右、上、下などの部分である。それらの位置を図示する[6]

また、例の漢字の後の下線部は、その漢字の部首である(カッコ内は部首の一般的な呼ばれ方)。

  • へん):左の位置型。例:(「たへん」)と各。
  • つくり):右の位置型。例:は川と(「おおがい」)
  • かんむり):上部の位置型。例:(「とめる」)と少。
  • あし):下部の位置型。例:は士と(「こころ」)
  • 他の上下分割
    • :上部と下部に分かれる位置型。例:上下に分かれた二(「に」)と日。
    • :中央部の位置型。例:は尺と(「ひ」)と一。
  • たれ):上部の左から下部に垂れ下がる位置型。例:(「とだれ」)と方。
  • にょう):左から下部に沿う位置型。例:(「そうにょう」)と己。
  • かまえ):全体を包む位置型。例:(「くにがまえ」)と玉。
    • 構の変形
      • :下部開き包み型。例:(「もんがまえ」)と日。
      • :上部開き包み型。例:(「うけばこ」)とメ。
      • :右部開き包み型。例:(「はこがまえ」)と矢。
      • :右肩包み型。例:(「しきがまえ」)と工。
      • :左右に分かれ位置する包み型。例:(「ゆきがまえ」)と圭。

文字の部分のうち部首となるのは、(字の右側)よりも(左側)、あるいは(下側)よりも(上側)の方が多い。


注釈

  1. ^ 『現代漢語詞典』部首検字表説明には188部首とあるが、実際の部首番号は189まである。

出典

  1. ^ 『三省堂漢和辞典』第四版(1993) p.5
  2. ^ 『角川 新字源』改訂版、1994年。凡例 p.4
  3. ^ 汉字部首表 GF0011-2009』中華人民共和国教育部http://www.moe.gov.cn/ewebeditor/uploadfile/2015/01/13/20150113090108815.pdf 
  4. ^ a b GB13000.1字符集汉字部首归部规范 GF0012-2009』中華人民共和国教育部http://www.moe.gov.cn/publicfiles/business/htmlfiles/moe/s230/201503/184493.html 
  5. ^ 教育部、国家语委发布《汉字部首表》和《GB13000.1字符集汉字部首归部规范》』中華人民共和国教育部、2009年2月27日http://www.moe.gov.cn/s78/A19/yxs_left/moe_810/s228/201202/t20120207_130121.html 
  6. ^ 角川書店、『角川最新漢和辞典』(1981年(昭和56年)1月20日103版発行





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