近鉄270系電車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 01:58 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動本項では増備車のモ277形についても記述する。
概要
当時北勢線を有していた近鉄が、同線の近代化事業の一環としてモ270形(制御電動車)271 - 276の6両、ク170形(制御車)171・172の2両、計8両を近畿車輛で製造した。新製当時、冷房装置こそなかったものの、間接式制御器を搭載し、直接式制御器搭載の従来車では不可能であった総括制御を可能としたことで、固定編成化され、両端駅での繁雑な機回し作業が不要になるなど、北勢線の近代化に大きく貢献した。
車体
在来車両の車体長が11m程度であったのに対し、270系は車体および機器の徹底的な軽量化で日本国内の762mm軌間(特殊狭軌)用車両としては最長となる[1][注 1]15m級全金属製車体を採用した。窓配置は各車ともd1D4D1(d: 乗務員扉、D: 客用扉)となっており、戸袋窓は省略されている。各側窓は一段下降窓を標準としていた近鉄の本線系通勤車とは異なり、腰板に窓袋が無く、メンテナンス性に優れる2段式のユニット窓を備える(これにより側構体の構造が簡略化され軽量化に資すると共に、窓の面積を相対的に広くできる)。一方、客用扉については寸法こそ小さいものの本線並みの両開き扉である。室内はロングシートを採用しており、天井には1960年代後半に本線用非冷房通勤車の標準装備品であった三菱電機製のラインフローファンが搭載されている。
主要機器
台車は近畿車輛KD-219(モ270形)・219A(ク170形)で、軽量化を重視してプレス構造の側枠を採用し揺れ枕を省略した軸ばね式台車である[2]。これもまた当時の近鉄本線系車両で標準であったシュリーレン式とは一線を画し、特殊狭軌線の制約に特化したものであった。
主電動機は三菱電機MB-464AR(端子電圧750V時定格出力38kW)で、これをモ270形に各4基吊り掛け式で搭載した[3][注 2]。吊り掛け駆動式の採用は、ナローゲージのスペース制約に対応したものである。
制御器は三菱電機ABF電動カム軸式制御器[4]で、三重線(内部線・八王子線・湯の山線)より転属してきたモ200形の日本車輌NCA[5]以来となる間接式自動制御器である。
ブレーキシステムは新造当初中継弁付きのA動作弁によるAMA-R自動空気ブレーキが採用されていた[4]が、部品製造打ち切りに伴うA動作弁の保守困難などから、保安性向上を名目として1991年以降HSC電磁直通ブレーキへの換装工事が実施された[4]。
運用
北勢線では阿下喜駅方面に電動車を連結し、西桑名駅方面に数両の付随車を連結し、3 - 4両編成で運用される。編成を組む他の形式は以下の通り。
- ク130形・サ130形
- 200系(元モ200形)
- ク140形・サ140形
注釈
- ^ 車長15600mm・車幅2110mm・車高3670mm・自重15.9t それまでの762mm軌間における最長の鉄道車両は13m級の越後交通栃尾線モハ215 - 217であった。
- ^ 762mm軌間向けの駆動方式はこの他に垂直カルダン駆動方式、車体装架カルダン駆動方式が存在した。
- ^ 1,067mm軌間の鉄軌道線向けでは、1983年製造の江ノ電1200形(バー・サスペンション方式)・1978年製造の遠州鉄道モハ25が最後の完全新造の吊り掛け電車である。
出典
- 1 近鉄270系電車とは
- 2 近鉄270系電車の概要
- 3 増備車
- 4 参考文献
固有名詞の分類
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