輸入 概説

輸入

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/09 01:14 UTC 版)

概説

日本では、関税法第2条第1項第1号が「外国から本邦に到着した貨物(外国の船舶により公海で採捕された水産物を含む。)又は輸出の許可を受けた貨物を本邦に(保税地域を経由するものについては、保税地域を経て本邦に)引き取ることをいう」と定義する。

第二次世界大戦後は、資源の有無、生産性の高低にかかわらず「一般的には輸出入に制限を設けない方が国際分業が進み、どの国家にとっても利益が最大になる」としばしば言われ、グローバル化に積極的な国も多かった。しかしながら実際には、国内産業の保護・育成を理由として、また外国への依存度が高すぎる製品・技術などがあると国際情勢が悪化した場合に多大な不利益を被る可能性があること(安全保障経済安全保障)などを理由として、輸入にはなんらかの制限を課すのがどの国でも一般的である。

歴史

かつて[いつ?]は日本においてはいわゆる高級ブランド商品(俗にいうブランド物)、高度な機械類が多かったが、戦後は工業化の進展で鉱工業原材料に移り、1990年代になると、国際分業化の進展が進んでかつてのNIES諸国や中国からの機械製品輸入が多くなっている。

並行輸入

海外商品を輸入する際、商品製造会社の子会社や正規の契約を結んだ代理店が輸入・販売するのではなく、他の業者が輸入すること。個人輸入代行も並行輸入に含まれる。輸入ルートが2つ並行することから、並行輸入(Parallel import)と呼ばれる。非正規ルート。 なお、製造元や正規代理店が並行輸入業者に対し圧力をかけるなど販売を妨害する行為は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律に抵触する[2]

物価為替が安い別の国で商品を購入し、正規の価格より低い価格で販売することがある。また小売なり在庫品処分なりの商品を他業者や他人が一度購入して輸入するため、一種の中古品でもある。正規の販売ルートと比べて商品管理や品質保証などがされない場合がある。また商品管理がされなかったり輸入に時間がかかったりすることがあるため、型落ちや前シーズンなど現行品より古いものが流通することがある。また低価格であれば良しとしたり、正規の流通で制限している、反社会的勢力などの集団にも商品が流通することがある。

日本においては正規代理店が商標を専有して使用できるとして並行輸入業者に対して輸入の差し止めを行うことができたが、1971年からは合法となった(パーカー万年筆事件:大阪地判 昭和45年2月27日 無体裁集2巻1号71頁)。フレッドペリー事件においては、最高裁も同じロジックで違法とした(最一小 平成15年2月27日 判タ1117号216頁)。

また正規代理店が並行輸入品をメンテナンス拒否など差別的に取り扱う場合、その態様、効果によっては独占禁止法上違法な行為となる。ただし正規代理店が自社顧客の優先などの対応を採ることは、直ちに独占禁止法上問題となるものではない。非正規代理店が修理等を自ら行うことが著しく困難な状況、かつ正規代理店に他社のメンテナンスを行う余裕があると認められた場合のみである[3]。かつては輸入車正規ディーラーで並行輸入車のメンテナンスや部品手配は受け付けられなかったが、現在では前述の理由等により問題なく行われる場合もある(輸入車も参照)。かつて自動車用ホイールメーカーであるドイツのBBSにて輸入しようとする商品が生産国と日本で特許を有しており、日本におけるその並行輸入品の流通は特許権の侵害にあたるとして正規輸入元が並行輸入業者を訴えた事件があった(BBS事件)。

本来は正規品(真正品)を正規代理店とは別のルートで輸入・販売することだが、近年は並行輸入と偽り偽造品を販売しようとすることがある。販売国によっては正規代理店そのものが存在しない場合もある。大手の輸入代行サイトでも多数の偽造品が販売されており、それを輸入した非正規代理店が多く存在するため注意が必要である。ただし、正規品(真正品)であっても、ロット番号が削られたことから、問題があると騒ぐ業者もある。

2022年3月以降、ロシアが西側諸国からの経済制裁に違反し、第三国経由で本来は輸入が禁止されている商品の並行輸入を行っていることが問題視されている。

個人輸入

個人が直接(代行を介さず)外国の販売店へ、商品を注文して購入する形態。通信販売の購入先が国内から外国に変わったもの。自国では手に入りにくいような特殊なサイズの衣類や一部の医薬品など、その国では入手しにくいものの購入に利用されることが多い。従来は相手国で通用する言語でビジネスレターが作成できるレベルの語学力が求められ時差や支払方法の問題もあったが、インターネットの発達で高度な語学力の必要性が薄れ業者によっては自国語以外の言語によるページを開設しているところもある。支払方法にはクレジットカードを使うことが多い(ただし、不着や商品トラブルなどの対応には電話や電子メールなどにより意思疎通ができる程度の語学力が必要となる)。


注釈

  1. ^ 2019年12月現在、新車で販売されている車種の例・日産・マーチトヨタ・タウンエース(商用バン/トラック)/ライトエース(商用バン/トラック)三菱・ミラージュスズキ・バレーノマツダ教習車(日本市場未投入のMAZDA2 SEDANの同型車種)などがこれに該当する。
  2. ^ 北米地域で生産されたトヨタ・セプター(ただしセダンは除く)やトヨタ・アバロン(日本市場向けにおける後のプロナード)、三菱・エクリプスホンダ・ラグレイト、オーストラリアで生産された三菱・マグナワゴン(日本市場向けにおける後のディアマンテワゴン)、英国で生産されたトヨタ・アベンシス、オランダで生産された三菱・カリスマ、ハンガリーで生産されたスズキ・スプラッシュなどがこれに該当する。

出典

  1. ^ a b デジタル大辞泉【輸入(ゆにゅう)】
  2. ^ 改善計画認定 公取委、並行輸入妨害容疑”. 毎日新聞 (2022年3月25日). 2022年3月25日閲覧。
  3. ^ 5 並行輸入品の修理受託の拒否”. www.jftc.go.jp. 公正取引委員会. 2021年5月29日閲覧。
  4. ^ 輸入とは”. コトバンク. 2023年11月8日閲覧。






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