走れメロス
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創作の発端
檀一雄は、太宰の死後に発行された『小説 太宰治』の中で、「おそらく私達の熱海行が、少くもその重要な心情の発端になっていはしないかと考えた」と述べている[33]。その一方で、小野正文は、『走れメロス』の書かれた理由が熱海行なのかを檀に直接尋ねて「僕はそう思っている」と返事をもらった事があるが、そのような心証を檀が持っていても、太宰の発想の由来を確かめる方法がない、と述べている[34] 。
熱海行の概要
『小説 太宰治』において熱海行について書かれた箇所[35]の概要を以下に記す。
熱海に行った太宰から金がないと連絡を受けた初代(太宰の内縁の妻)は、太宰の友人である檀一雄に金を渡して太宰を連れ帰るように頼んだ。
檀が熱海の太宰を訪ねて金を渡すと太宰は檀を引き止めた。檀は金が心配だったが、太宰に誘われ、酒を飲み、女遊びをして過ごしてしまう。
3日目の朝、太宰は菊池寛のところへ行くから待っていてくれと言って、檀を熱海に残して出ていく。それから数日たったが太宰から音沙汰がない。しびれを切らした飲み屋のおやじは太宰を探しに行くしかないと檀に迫る。檀は太宰が井伏鱒二のところへ行ったとあたりをつけ、飲み屋のおやじと一緒に向かう。
井伏の家に着くと、太宰は井伏と将棋を指していた。檀は太宰に激怒する。井伏は飲み屋のおやじから勘定書を受け取り明日熱海に行くからと言ってなだめる。太宰は檀に「待つ身が辛いかね、待たせる身が辛いかね」と言った。
井伏は檀を伴い佐藤春夫の家に行き、事情を話して金を出してもらう。足りない分は井伏のものや初代の衣類などを質入れして工面した。そして、檀と井伏の二人で熱海へと向かった。
注釈
- ^ 太宰の書く「古伝説」(上述)とはこれを指す。
- ^ あるいは『寓話 Fabulae』第257章「友情でお互い同士結ばれた者」とも[14]。
- ^ ギリシア語で「壁」「市壁」を意味する。このモイロスがドイツ語圏でメーロスとなった[13]。
- ^ 元々シチリア島南西岸の町セリヌスから派生した形容詞で、その出身者という意味を込めていると思われる[15][16]。
- ^ 1世紀の共和政ローマの独裁官ウァレリウス・マクシムスによる『著名言行録』(全9巻)のうち第四巻七節「友情」 Dē amicitiā [24]、原文と訳の抜粋:Damon et Phintias...mutua culturum benevolentia... ダモンとピンシアスは...同等の好意を育む...[23][25][26]。
- ^ 滝口 (2013), pp. 76–78の1 - 7のうち、1のディオドロス・シケロス(Diodorus of sicily)『世界史断片』(前1世紀)および2のキケロ 『義務論』De Officiis 3.44-45(前1世紀)。3のウァレリウスも、異なる「ピンシアス」とカナ表記するが、上で注記したように原文には“Phitias”とあるので変異はない[26]。
- ^ 「走れメロス」音楽祭実行委員会の主催[41]。地元音楽関係者、弘前ペンクラブや弘前読書人倶楽部有志らにより構成。
出典
- ^ a b 長谷川 (1967), p. 535.
- ^ a b “走れメロス”. 青空文庫. 2024年6月5日閲覧。
- ^ 角田 (1983), pp. 11–13.
- ^ 佐野 (2021), p. 142.
- ^ 杉田 (2001), p. 289.
- ^ “中学校国語教科書における「定番教材」の比較研究”. 小林 厚志. 2024年7月8日閲覧。
- ^ 「走れメロス」『太宰治全集4』、筑摩書房 1998年 303頁(石橋 (2013), p. 15、注1引き)
- ^ 石橋 (2013), pp. 15, 18.
- ^ 石橋 (2013), p. 19.
- ^ 滝口 (2013), p. 75。小栗「註解」を角田 (2001), p. 136より孫引きで再掲。
- ^ a b 五之治 (1999), pp. 39–59.
- ^ 滝口 (2013), pp. 75–76.
- ^ a b 杉田 (2001), p. 297.
- ^ 滝口 (2013), pp. 78–79.
- ^ 杉田 (2001), p. 298.
- ^ a b c d e f g h i 杉田 (2002), p. [要ページ番号].
- ^ a b 杉田 (2001), pp. 288, 297.
- ^ a b 滝口 (2013), p. 79.
- ^ 杉田 (2001), pp. 292, 300.
- ^ Guerber (2010).
- ^ “Friedrich Schiller, Damon und Pythias, 1799” (ドイツ語). NETZFIT. 2021年9月29日閲覧。
- ^ a b c 杉田 (2001), p. 323.
- ^ a b c 滝口 (2013), p. 76.
- ^ 杉田 (2001), p. 296.
- ^ (ラテン語) Factorum et dictorum memorabilium libri IX/Liber IV#Ext., ウィキソースより閲覧。 著名言行録 第4巻 Ext. 1.
- ^ a b Valerius Maximus, IV, 7, ext. 1893, p. 172.
- ^ 杉田 (2001), p. 288以降、杉田 (2002), p. [要ページ番号]
- ^ “Damon and Pythias” (英語). Encyclopedia Britannica. Encyclopædia Britannica, Inc.. 2022年9月12日閲覧。
- ^ “Damon and Pythias”. 英辞郎 on the WEB. アルク. 2023年10月2日閲覧。
- ^ 小学館『プログレッシブ英和中辞典』第4版. “Damon and Pythias”. コトバンク. 2023年10月2日閲覧。
- ^ 赤い鳥の本 ; 第9冊
- ^ 『デイモンとピシアス』:新字新仮名 - 青空文庫
- ^ 檀 (1949), p. 134.
- ^ 小野 (2001), pp. 56–57.
- ^ 檀 (1949), pp. 111–134.
- ^ 寺山 (1975).
- ^ 中村 (2021), p. 41, 「走れメロス」「無神経さをメロスに与えることによって、最初から一つの滑稽譚の様相を見せている」として、「走れメロス」を辛辣に批評したのは寺山修司であった。「妹の結婚に兄がいなければならぬというのも、説得力の乏しい理由」であり、それは「ある種の思い上がり」で、「このエゴチストの道化の頭を去来しているのは、ひたすら、自分のことばかり」「卑劣漢」で、ここに信頼・友情・反抗・正義・感動などを読み取るのは「極めて困難である」と寺山はいう。.
- ^ 窪田 2020.
- ^ a b 『すべてに一生懸命で憎めないキャラクターの‘高校生メロス’が登場! 手越祐也さんが‘走れメロス’衣装で出演 大塚食品 「マッチ」新CM 6月18日(土)から全国の各放送局にて放映開始』(プレスリリース)大塚食品、2011年6月17日 。2022年9月10日閲覧。
- ^ a b “手越祐也扮する“高校生メロス”「マッチ」新CM、今度は親友の海水パンツから逃げる!”. クランクイン!. ブロードメディア (2012年5月25日). 2021年4月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月29日閲覧。
- ^ 川村昇一郎 (2017年2月23日). “「走れメロス音楽祭」を開催したい。太宰ファンのみなさまご協力ください!”. CAMPFIRE(キャンプファイヤー). CAMPFIRE. 2021年9月29日閲覧。
- ^ “25日、弘前市で「走れメロス音楽祭」”. Web東奥. 東奥日報社 (2017年6月22日). 2017年9月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年9月11日閲覧。
- ^ 「「走れメロス」音楽で表現」『陸奥新報』陸奥新報社、2017年6月27日。2021年9月29日閲覧。
- ^ “村田一真「メロスの全力を検証」< 2013年度 塩野直道記念 第1回「算数・数学の自由研究」作品コンクール 最優秀賞「塩野直道賞 中学校の部」受賞作品 < 過去の受賞作品”. 一般財団法人 理数教育研究所 Rimse. 2021年9月29日閲覧。。
- ^ 「「走れメロス」は走っていなかった!? 中学生が「メロスの全力を検証」した結果が見事に徒歩 検証した村田少年「メロスはまったく全力で走っていないことが分かった」。」『ねとらぼ』アイティメディア、2014年2月6日。2021年9月29日閲覧。
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