訓民正音 版本

訓民正音

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/29 02:01 UTC 版)

版本

解例本

解例があることから「解例本」と呼ばれる。解例本は1940年慶尚北道安東郡臥龍面周下洞李漢杰家で発見されたという経緯が最も知られているがこれにはなお異論がある。全鎣弼が旧蔵していたことより全氏本とも呼ばれた。

はじめの2帳が欠落しており、全鎣弼が購入する前にすでに世宗実録の記述などにより補写され復原されていたという。しかしながら、この補写にはいくつかの誤りが指摘されており、また、第8帳裏には落書きと見られる筆写がある。なお、この『訓民正音解例本』は1962年韓国の国宝第70号に指定され、1997年にはユネスコ世界の記憶に登録されている[8]

全33張1冊/木版本/横20 cm×縦29 cm/板匡 横16.8 cm×縦23.3 cm/本編7行11字、解例8行13字。現在は澗松美術館所蔵[9]

執筆 鄭麟趾、申叔舟、成三問、崔恒、朴彭年、姜希顔、李塏、李善老[10]

解例本は長らくこの澗松美術館所蔵本のみが伝わってきたが、2008年に慶尚北道尚州市の骨董品店からの盗品として一冊が新たに発見された。しかし、2014年現在に至っても犯人の黙秘により本の所在は不明となっている。

異本(漢文のもの)

実録本
世宗実録の1446年9月の条に本文と鄭麟趾序が収録されている。
排字礼部韻略本
排字礼部韻略本(1679年)巻5に本文が収録されている。
列聖御製本
李朝歴代国王の詩文集列聖御製(17世紀)の巻2に本文が収録されている。これは注記により、実録から写したものであることが分かる。
経世訓民正音図説本
経世訓民正音図説(17世紀)の冒頭に本文が収録されている。

諺解本

解例本の本編の部分に関し、漢文の原文を提示した後にそれを朝鮮語訳し諺文で提示した形式の書籍である。解例本の解例の部分は付いていないが、諺解本には本文の末尾に中国語音を表す字である歯頭音字と正歯音字についての記述が付け加えられている。

西江大本
1459年刊行の初刊本月印釈譜巻1の巻頭に本文が収録されており、原刊本である。「世宗御製訓民正音」の内題がある。
喜方寺本
慶尚北道の喜方寺本において1568年に覆刻された月印釈譜巻1の巻頭に本文が収録されている。字句は西江大本と同一だが、覆刻の際の誤刻がいくつか認められる。(本記事の写真)
朴勝彬氏旧蔵本
朴勝彬が所蔵していた本で、現在は高麗大学校亜細亜問題研究所六堂文庫所蔵。原刊本とされるが第1帳が欠落のため補写され、その他にも部分的に補写が見られる。割注と諺解の文言は西江大本とは異なる。
宮内庁本
日本宮内庁書陵部が所蔵する18世紀ごろの写本。戦前にこの本を筆写したものがソウル大学校中央図書館に所蔵されており、また、この本の写真版本がやはりソウル大学校中央図書館に所蔵されているという。朴勝彬氏旧蔵本の模写とされる。
金沢庄三郎氏旧蔵本
金沢庄三郎が所蔵していた写本で、現在は駒澤大学図書館濯足文庫所蔵。字句は西江大本に一致する[11]

  1. ^ 世宗実録 二十五年(1443年) 102卷 25年 12月 30日 庚戌の条
    是月、上親制諺文二十八字、其字倣古篆、分為初中終聲、合之然後乃成字、凡干文字及本國俚語、皆可得而書、字雖簡要、轉換無窮、是謂訓民正音。
  2. ^ 世宗実録 二十八年(1446年) 113卷 28年 9月 29日 甲午の条
    是月、訓民正音成。御製曰: 國之語音、異乎中國、與文字不相流通、故愚民有所欲言、而終不得伸其情者多矣。 予為此憫然、新制二十八字、欲使人易習、便於日用耳。
    ㄱ牙音 如君字初發聲、竝書如蚪字初發聲。
    ㅋ牙音 如快字初發聲。
    ㆁ牙音 如業字初發聲。
    ㄷ舌音 如斗字初發聲、竝書如覃字初發聲。
    ㅌ舌音 如呑字初發聲。
    ㄴ舌音 如那字初發聲。
    ㅂ唇音 如彆字初發聲、竝書如歩字初發聲。
    ㅍ唇音 如漂字初發聲。
    ㅁ唇音 如彌字初發聲。
    ㅈ齒音 如即字初發聲、竝書如慈字初發聲。
    ㅊ齒音 如侵字初發聲。
    ㅅ齒音 如戌字初發聲、竝書如邪字初發聲。
    ㆆ喉音 如挹字初發聲。
    ㅎ喉音 如虚字初發聲、竝書如洪字初發聲。
    ㅇ喉音 如欲字初發聲。
    ㄹ半舌音 如閭字初發聲。
    ㅿ半齒音 如穰字初發聲。
    ㆍ如呑字中聲 ㅡ如即字中聲 ㅣ如侵字中聲 ㅗ如洪字中聲 ㅏ如覃字中聲
    ㅜ如君字中聲 ㅓ如業字中聲 ㅛ如欲字中聲 ㅑ如穰字中聲 ㅠ如戌字中聲 ㅕ如彆字中聲。 終聲復用初聲。 ㅇ連書唇音之下 則為唇輕音 初聲合用則竝書。 終聲同。ㆍㅡㅗㅜㅛㅠ附書初聲之下、ㅣㅓㅏㅑㅕ附書於右。 凡字必合而成音 左加一點則去聲 二則上聲 無則平聲。入聲加點同而促急。
  3. ^ 井上角五朗と『漢城旬報』『漢城周報』 : ハングル採用問題を中心に筑波大学 稲葉継雄
  4. ^ 姜在彦『日本による朝鮮支配の40年』朝日文庫
  5. ^ 姜在彦『朝鮮の歴史と文化』明石書店
  6. ^ 崔基鎬『韓国 堕落の2000年史』祥伝社
  7. ^ 水間政憲『朝日新聞が報道した「日韓併合」の真実』徳間書店 2010年。p150、ISBN 978-4-19-862990-8
  8. ^ Third Meeting of the International Advisory Committee of the "Memory of the World" Programme (CII-97/CONF.502.1)” (Microsoft Word Document). UNESCO, Information and Informatics Division. pp. 8 (1997年10月). 2007年11月10日閲覧。
  9. ^ 東亜日報「最高のコレクション、澗松美術館」2002年5月21日(日本語)
  10. ^ 解例序による
  11. ^ 趙義成「訓民正音」東洋文庫800, 2010.
  12. ^ ‘조선왕조실록’의 번역 国民日報 (2012.01.10) の記事を参照






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