褐色環反応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2013/04/05 13:53 UTC 版)
亜硝酸イオンや硝酸イオンを含む硫酸鉄(II)水溶液(上層)と、濃硫酸(下層)の境界面に褐色の輪(褐色環)が生成することからこの様に呼ばれる。
ほぼ全ての塩が水溶性であり、硫酸イオン SO42- 等と異なり、沈殿を形成しない水中の硝酸イオンや亜硝酸イオンの簡便な検出法として、しばしば定性無機分析に使われる。
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方法
冷却した試料水溶液と濃厚な硫酸鉄(II)水溶液の混合溶液に、さらに冷却しつつ、濃硫酸を反応容器の壁面に伝わらせながら静かに流し込むと、密度の大きい濃硫酸は溶液の底に沈み、硝酸イオンが存在すればその境界面に褐色の輪(褐色環)が生成する[1]。
なお、亜硝酸イオンの場合は特徴として、濃硫酸の代わりに希硫酸を加えても褐色環反応を起こす[2]。
これは硝酸イオンに比べて、亜硝酸イオンが不安定で酸化還元反応を起こしやすいことに起因していると考えられる。
反応機構[1]
1、亜硝酸イオン NO2- や硝酸イオン NO3- は酸性下では以下のように酸化剤として働き、自身は一酸化窒素になる。
(この反応は、濃硫酸から水素イオンの供給が受けられる境界面で進行しやすい。)
2、一方、鉄(II)イオンは還元剤として働く。
3、上記の反応により境界面で生成した一酸化窒素と溶液中の鉄(II)イオン(厳密にはヘキサアクア鉄(II)イオンの形で存在)が配位子交換反応を起こす。
これにより、不安定な褐色の錯イオンであるペンタアクアニトロシル鉄(II)イオン [Fe(H2O)5(NO)]2+ が生成し、境界面で褐色環を形成する。
4、ペンタアクアニトロシル鉄(II)イオン [Fe(H2O)5(NO)]2+ はかなり不安定なため、常温でしばらく放置すると3の逆反応により分解し、やがて褐色環は消失する。
なお、ペンタアクアニトロシル鉄(II)イオン中の配位子としての水は省略されて、ニトロシル鉄(II)イオン[Fe(NO)]2+と書かれる場合もしばしばある。
関連項目
- 1 褐色環反応とは
- 2 褐色環反応の概要
- 褐色環反応のページへのリンク