群体 多細胞化と群体

群体

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/04 01:05 UTC 版)

多細胞化と群体

群体は、特にボルボックスは多細胞生物への進化の段階と関連して紹介されることがたびたびあるが、この理由はおそらく二つある[3]

一つは、動物の多細胞化を説明するための初期の仮説として、エルンスト・ヘッケルが主張した考えに基づく。彼は、動物の発生は進化の道筋をたどるという、反復説を唱え、動物の発生初期に、ほぼ共通に現れる胞胚の構造が、多細胞化の第一歩だったと考えた。具体的には、外面に鞭毛を並べ、中空の球形に細胞が並んだ構造を想定した。すると、現生の生物では、ボルボックスの構造がこれに近い。ただし、ボルボックスは緑藻であり、明らかに動物とは系統を異にする。また、鞭毛虫など、より動物っぽいものでは、これに似たものはあまりない。ヘッケル自身が想定したのも、動物的な鞭毛虫がボルボックスのような構造をとったものである。彼はそれに当たる生物を発見したとし、発表もしているが、この生物はその後確認されておらず、彼による誤認であるか、あるいは彼に批判的な立場からは捏造だったのではないかと言われる。

もう一つは、ボルボックスが生殖細胞を分化させているためである。他の細胞群体では、構成細胞がすべて生殖細胞として機能するが、ボルボックスでは、その一部だけが生殖細胞として働き、他の細胞は子孫を残さない。しかし、この系統では、これ以上高度な分化を果たしたものは見あたらず、一種の進化の袋小路と見られる。

現在では、動物の多細胞化は、襟鞭毛虫類の群体から進化したと言う説が有力視されている。

参考文献

  • 白山義久編集;岩槻邦男・馬渡峻輔監修『無脊椎動物の多様性と系統』,(2000),裳華房

関連項目


  1. ^ 日本大百科全書(ニッポニカ). “ヤギ(腔腸動物)”. コトバンク. 2023年1月9日閲覧。
  2. ^ 岩槻・馬渡(2000)p.223
  3. ^ 以下、主として岩槻・馬渡(2000)p.106,107


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