符号 (数学)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/31 05:56 UTC 版)
数の符号
任意の数は複数の属性 (attribute) を持つ(例えば、値、符号、大きさなど)。実数が正であるとは、その値(大きさではない)が零より大きいときに言い、負であるとは零より小さいときに言う。正または負の何れであるかという属性をその数の符号と呼ぶ。この場合、零それ自身は符号を持つとは考えられない。また、複素数に対してその符号を定義することはできないが、偏角はある意味で符号の一般化と考えられる。
算術その他の分野で用いられる一般的な数の記法において、数の符号はその数に + や − を前置することで表される。例えば、+3 は「正の3」であり、−3 は「負の3」である。数値に符号を前置しない場合は、標準的な解釈としてその数は正である。この記法や負の数を減法を通じて定義するという理由から、負号は負符号を持つ負の数と強く結びつけられ、同様に正号は正の数と結び付けられる。
代数学において負号は加法逆元をとる操作(しばしば「符号反転」と呼ぶ)を表すものと見なされる。正の数の加法逆元は負の数であり、負の数の加法逆元は正の数となる。この文脈において −(−3) = +3 と書くことは意味を持つ。
任意の非零実数は絶対値を用いて正にすることができる。例えば −3 の絶対値も 3 の絶対値もともに 3 に等しい。記号で書けば |−3| = 3, |3| = 3 と書ける。
零の符号
数 0 は正でも負でもなく、したがって符号を持たない。算術において +0 および −0 はともに同じ数 0 を表している(零の加法逆元は零自身である)。
このような取り決めは単に慣習的なものにすぎないのであって、文化的に異なる約束が通用する場合もある。例えばフランスやベルギーでは、0 は正でも負でもあるものと定義し、「零でない正の数」および「零でない負の数」はそれぞれ「真に正」(狭義に正)および「真に負」(狭義に負)であるというように区別する。
計算機における符号付数値表現のように、いくつかの文脈では符号付き零が意味を持ち、正の零と負の零が実際に異なる数を表すということもあり得る(符号付き零)。
また微分積分学および解析学において片側極限の評価に +0 および −0 が現れることもある。この記法は、函数の引数が正および負の値をそれぞれ取りながら 0 へ近づく際の函数の振る舞いを見るものであり、それらの振る舞いはときに一致しない。
用語法
大抵の場合は零は正でも負でもないという規約が採用されるから、その場合未知の数の符号に関して以下のような用語法に従うことになる。
- 数が正とは、それが零より大きいときに言う。
- 数が負とは、それが零より小さいときに言う。
- 数が非負とは、それが零以上であるときに言う。
- 数が非正とは、それが零以下であるときに言う。
したがって、非負の数とは正の数または零のことであり、非正の数とは負の数または零のことを言う。例えば、実数の絶対値は常に非負であって、それは必ずしも正である必要はない。
同様の用語法はしばしば実数値または整数値の函数に対しても用いられる。例えば、函数が正(あるいは正値)とはその取りうる値が全て正であるときに言い、同じく非負(あるいは半正値)とはその取りうる値が全て非負なるときに言う。
符号の規約
多くの文脈では、符号の選択(どちらの範囲を正としどちらの範囲を負とするべきかということ)は自然に決まるが、一貫性のみが問題で任意に符号を決められる場面と言うものも存在する。後者の場合であれば、明示的な符号の規約を設ける必要がある。
符号函数
数の符号を展開するために符号函数を用いる場合もある。この函数は
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