確定拠出年金 種類

確定拠出年金

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/09 18:55 UTC 版)

種類

個人型 (individual type)

愛称は公募による[6]iDeCo(イデコ、individual-type Defined Contribution pention plan)。ここでいう個人型の特徴は、「個人が掛金を支払う」というものである。2020年3月末時点で加入者数は156万人であり増加傾向にある[7]

  • 加入資格は、国民年金の第1号被保険者(低所得や生活保護を受けているために国民年金保険料が免除されている者を除く)、第3号被保険者、60歳未満の厚生年金保険の被保険者(後述の企業型DCを実施している事業所に勤務する者の場合は、規約に定めた場合に限る)である(第62条1項)。
    • 国民年金第1号被保険者たる、障害基礎年金等の受給権者や施設入所者等は保険料の免除を受けていても加入できる。
  • 個人型の掛金は、いずれの場合も加入者自身が全額拠出する(第68条)。平成30年より、掛金は年1回以上定期的に拠出することとされ、必ずしも毎月でなく一定期間(個人型掛金拠出単位期間)を区分してその区分ごとに拠出すればよいこととされた。なお、いわゆる「前納」や「追納」はできない。
    • 国民年金の第1号被保険者では、掛金の上限は月当たり68,000円。ただし国民年金基金への加入・付加保険料の納付があればそれと合算された金額が上限となる(第69条)。国民年金第1号被保険者の場合は、国民年金の保険料を納付していない月については掛金を拠出できない
    • 60歳未満の厚生年金保険の被保険者たる加入者は、勤務先に厚生年金基金確定給付年金、企業型DC、年金払い退職給付のいずれの制度も無い場合、掛金の上限は月当たり23,000円(年27.6万円)。企業型DCのみを実施する場合、掛金の上限は月当たり20,000円(年24万円)(企業型DCへの事業主掛金の上限を年額42万円(月額35,000円)とすることを規約で定めた場合に限る)。確定給付型年金、年金払い退職給付のいずれかを実施する事業所の場合、掛金の上限は月当たり12,000円(年14.4万円)(企業型DCと確定拠出年金を併用する場合、企業型DCへの事業主掛金の上限を年額18.6万円(月額15,500円)とすることを規約で定めた場合に限る)。公務員の場合、掛金の上限は月当たり12,000円(年14.4万円)。
      • 掛金の納付は事業主経由ででき、この場合事業主は正当な理由なく従業員の申出を拒否できない(第70条2項、3項)。
    • 国民年金の第3号被保険者では、掛金の上限は月当たり23,000円(年27.6万円)。
    • ちなみに農業者年金基金には、月額最大1万円の保険料の国庫補助制度があるが、確定拠出年金には掛金の国庫補助制度がない。
  • 掛け金の最低金額は、第1号、第2号、第3号被保険者全てが月5,000円(年6万円)である。
  • iDeCoの口座開設は、日本の銀行・証券会社・保険会社など50社以上の中から国民自身で選ぶことができる[8]。金融機関ごとに取り扱い商品が異なる。例えば米国市場へ投資するインデックスファンドのうち、「S&P500種指数」や「ナスダック100指数」に連動したインデックスファンドは一部の金融機関でしか取り扱っていない[9]。iDeCoの運用途中で金融機関の変更ができる(運営管理機関の変更)。

なお連合会は、個人型年金に係る規約を作成し、厚生労働大臣の承認を受けなければならない。また、国民年金基金連合会が資産管理機関を兼ねる(実際には連合会から金融機関等に資産管理業務が委託されている)。運営管理業務は運営管理機関に委託しなければならない(第60条)。

非課税の積立投資を比較する
個人型 確定拠出年金
iDeCo
累積投資型 少額投資非課税制度
つみたてNISA
新規加入費用 2829円 無料
年間口座維持費用 792円〜[注釈 3] 無料
金融機関の変更費用 0円〜4400円[10] 無料
現金の受取り費用 振込1回につき440円 無料
年間積立額の所得控除 対象(小規模企業共済等掛金控除 対象外
取り扱い金融機関数 56社
(2020年11月時点)
597社
(2022年4月時点)
加入者数 約242万4千人
(2022年4月時点)
約518万人
(2021年12月時点)
商品数 3 - 35本[注釈 4](2021年12月時点) 最大166本[注釈 5]
(2022年3月時点)
売却資産を再投資する上限額[注釈 6] 上限なし 年間40万円以内
(2022年6月時点)
現金の引き出し時期 60歳以降 随時
所管行政機関 厚生労働省(国民年金基金連合会) 金融庁

※数社のiDeCoで取り扱いをしている「ナスダック100指数」に連動したインデックスファンドは、つみたてNISAでは取り扱いをしていない(2022年4月26日時点)[13]

企業型 (corporate type)

ここで言う企業型(Corporate-type defined contribution pension system)の特徴は、「企業が掛金を支払う」(全額事業主負担)というものである。後述するマッチング拠出を利用することで従業員が上乗せで拠出出来る。2020年2月末現在の加入者数は724万人であり増加傾向にある[14]

  • 実施企業は、厚生年金の適用事業所に限る。事業主が60歳未満(60歳前から引き続き使用されていれば企業が定めた規約により65歳まで延長可)の従業員(厚生年金第1号被保険者、厚生年金第4号被保険者に限る)を加入者として実施する。要件を満たす限り、確定拠出年金と確定給付年金とを併せて導入することもできる。
  • 規約により加入者の要件として一定の資格を定めた場合は、その資格を有さない者は加入者としないことができる(第3条3項6号)。ここで「一定の資格」として定めることができるのは「一定の職種」「一定の勤続期間」「一定の年齢」「希望する者」に限られる(平成13年8月21日年発第213号)。
  • 事業主は、労使合意のもと、企業型年金に係る規約を作成し、厚生労働大臣の承認を受けなければならない。事業主は資産管理機関(一般的には信託銀行生命保険会社など)と資産管理契約を締結しなければならない。運営管理業務を運営管理機関に委託するかは任意であり、当該企業が自ら運営管理業務を行ってもよい。
  • 平成30年より、掛金は年1回以上定期的に拠出することとされ、必ずしも毎月でなく一定期間(企業型掛金拠出単位期間)を区分してその区分ごとに拠出すればよいこととされた。掛金の上限は、厚生年金基金、確定給付年金のいずれかが有る企業、私学共済の加入者の場合は月当たり27,500円(個人型年金同時加入可能者は15,500円)、いずれも無い企業の場合、月当たり55,000円(個人型年金同時加入可能者は35,000円)となる。なお、いわゆる「前納」や「追納」はできない。
  • 規約に定める事で、企業が拠出する掛金に上乗せして従業員が掛金を拠出するマッチング拠出が可能。マッチング拠出の掛金額は「企業が拠出する掛金額以内」かつ「企業拠出分と従業員拠出分の合計が法定の拠出限度額以内」となる範囲で定める。
  • 平成30年5月より、企業年金を実施していない中小企業は、その従業員の掛金との合計が拠出限度額の範囲内で iDeCo に加入する従業員の掛金に追加して、事業主が掛金を拠出することができるようになった(中小事業主掛金納付制度、愛称「iDeCo+」(イデコプラス))。従業員の掛金は、中小事業主掛金とあわせて、事業主を介して国民年金基金連合会に納付する。
    • 「中小企業」とは、従業員(厚生年金第1号被保険者)100人以下の事業主とする。中小事業主掛金額は定額とし、その拠出にはあらかじめ労働組合等の同意が必要である。
  • 実施事業主に使用される期間が3年未満である場合、その者の個人別管理資産のうち事業主掛金に相当する部分の全部または一部を事業主に返還させることができる(事業主返還)。逆に言えば、3年以上の勤続で、従業員負担分や運用益が無くても労働者の受給権は発生し、自己都合退職や懲戒解雇等いかなる理由であっても事業主は返還を求めることは出来ない。

簡易企業型

平成30年5月より、設立条件を一定程度パッケージ化された制度とすることで、設立時に必要な書類等を削減して設立手続きを緩和するとともに、制度運営についても負担の少ないものにするなど、中小企業向けにシンプルな制度設計とした企業型年金が新設された。一般の企業型との相違点は、

  • 規約で一定の範囲の者のみを加入者とすることはできない(当該事業主に使用される厚生年金第1号被保険者は全員加入者とする必要がある)。
  • 事業主掛金の算出方法は、定額に限る。
  • 加入者掛金の額の選択肢は1つでも可。

注釈

  1. ^ 免除部分も一定の割合で年金として将来受取ることができる。
  2. ^ この制度に類似した、積立投資ドルコスト平均法)による長期運用の制度である「つみたてNISA」は、いつでも換金・出金ができる点で「iDeCo」よりも運用に参加するためのハードルが低い。
  3. ^ この費用は定期預金だけであっても発生し、また拠出を停止しても最低限792円の年間手数料(事務委託手数料)がかかる。
  4. ^ 法令改正前から存在するプランでは、SBI証券(オリジナルプラン)の最大67本[11]SBI証券オリジナルプランでは29銘柄の買付が停止された
  5. ^ SBI証券[12]
  6. ^ iDeCoに関して、ここでは価格変動商品から定期預金へのスイッチングを売却とし、定期預金から価格変動商品へのスイッチングを再投資とする。

出典

  1. ^ DC(=Defined Contribution Plan)とは、「確定拠出型」を意味するが、日本においては確定拠出年金(企業型年金、個人型年金)のことを指す略称として用いられることが多い”. 企業年金連合会. 2009年4月25日閲覧。
  2. ^ 厚生労働白書 令和4年度』厚生労働省、2022年、資料編https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/21-2/dl/11.pdf 
  3. ^ 被用者年金制度の一元化に伴い、2015年10月1日から公務員及び私学教職員も厚生年金に加入。また、共済年金の職域加算部分は廃止され、新たに退職等年金給付が創設。ただし、2015年9月30日までの共済年金に加入していた期間分については、2015年10月以後においても、加入期間に応じた職域加算部分を支給。
  4. ^ 「確定拠出年金の日(10月1日)」と 「NISA(ニーサ)の日(2月13日)」を制定しました。確定拠出年金教育協会
  5. ^ 高橋成壽 (2017年1月4日). “「iDeCo」をやらないほうがいい人 60歳まで下ろせない”. PRESIDENT Online. https://president.jp/articles/-/21047?page=2 
  6. ^ 個人型確定拠出年金制度 愛称募集キャンペーン”. 2016年9月16日閲覧。
  7. ^ a b iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入者数等について (PDF)
  8. ^ 個人型確定拠出年金取扱機関 かんたん比較&検索! | モーニングスター iDeCo(個人型確定拠出年金)情報 - モーニングスター
  9. ^ eMAXIS Slim米国株式(S&P500), SMBC・DCインデックスファンド(S&P500), DC米国株式インデックス・オープン(S&P500), iFreeNEXT NASDAQ100インデックス - 確定拠出年金教育協会 iDeCoナビ(個人型確定拠出年金ナビ)
  10. ^ 手数料でiDeCo(イデコ)金融機関を比較 | 個人型確定拠出年金ナビ「iDeCo(イデコ)ナビ」 - 確定拠出年金教育協会
  11. ^ 個人型確定拠出年金取扱機関 かんたん比較&検索! | モーニングスター iDeCo(個人型確定拠出年金)情報 : 商品内容検索 - モーニングスター
  12. ^ 対象商品数一覧 | モーニングスター つみたてNISA (積立NISA) 総合ガイド - モーニングスター
  13. ^ つみたてNISA対象商品届出一覧 2022年4月26日 - 金融庁
  14. ^ a b 確定拠出年金の統計|統計資料|企業年金連合会
  15. ^ 運営管理機関登録業者一覧”. 厚生労働省. 2011年11月19日閲覧。
  16. ^ 令和2年度税制改正要望事項(抄) (PDF)
  17. ^ 確定拠出年金の施行状況(毎月更新)”. 厚生労働省 (2016年8月31日). 2016年10月26日閲覧。






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