盗聴 盗聴とプライバシー権

盗聴

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/18 15:33 UTC 版)

盗聴とプライバシー権

盗聴はプライバシー権の侵害の一種である。盗聴を定義するにあたってはプライバシーとの関係が重要となる。

これまで、憲法に保障される「住居」「書類」「所持品」など(これらを憲法上保護された領域という)が伝統的なプライバシー権とされてきたが、技術の発展に伴いこれらの基準が通用しなくなった。そのために新たなプライバシー権の基準の確立が求められていた。そのさなか、アメリカ合衆国で発生したカッツ(キャッツ)事件[1]で、警察官が行う電話の傍受に関してプライバシー権が及ぶかが問題となった。米国最高裁判所のハーラン裁判官は、補足意見として次の要件を提示[2]した。

  • プライバシーの主観的期待(プライバシーの事実上の期待)
  • プライバシーの客観的期待(プライバシーの合理的期待)

これが後に合衆国最高裁の法廷意見となった。昨今の日本における法学では、プライバシー権を考える際にはこの要件を参考にしている。

態様

旧来は家屋に侵入し、屋内の様子を直接盗み聞く方法が取られていたが、無線機器小型化・高性能化に伴って、それらを用いて盗聴する様式(無線盗聴)が一般的となっている。また、物音に反応して録音開始するテープレコーダー等の記録機器を用いることもあるが、この記録機器に関しても小型化・高性能化が進んでいる。窓ガラスなど物体表面の振動をレーザー光線で計測して、その振幅変調・音声として出力させる技術が実用化されている[3]

盗聴器は通信販売や専門店等の店頭で販売されており、私的な趣味や個人的な愛憎関係や怨恨でこれら機器を購入した個人が、他人の家屋やホテルなどに設置して回っているケースも多数報じられている。また、世の中には盗聴マニアと呼ばれる趣味で盗聴を行う者もいるとされ、それらマニアが賃貸住宅やホテルに盗聴器を設置するケースもある(多くの者は無線盗聴器から垂れ流される電波を傍受するのみである)。

盗聴器の捜索、除去を行う専門業者も存在する。

目的

家庭内の浮気調査から企業内の動向調査・国家間の諜報合戦に到るまで多岐に及ぶ(ソ連時代、在モスクワ外国公館全てに盗聴器が仕掛けられていると考えられていた)が、往々にしてプライバシー侵害、または国家規模の諜報合戦においては国家の威信に関わる重大事に発展することもある。反面、事件究明におけるこれら盗聴では、組織・団体に対する内偵手法として用いられ、疑獄の真相にたどり着くこともある。

秋田県では生活保護申請の要否判断を巡り、2014年2月4日市民団体記者会見を行った際、テーブル上に盗聴目的でICレコーダーが設置され、同県福祉政策課の課員が置いたものと判明している[4]


注釈

  1. ^ 事件収拾後の帝国議会(秘密会)で逓信省は戒厳令布告後の傍受については戒厳令第14条の「郵信電報の開緘」を根拠とすると説明したが、当時隠匿された布告前の傍受は完全な違法行為であった。

出典

  1. ^ KATZ v. UNITED STATES(389 U.S. 347)
  2. ^ KATZ v. UNITED STATES(389 U.S. 347)CONCUR/MR.JUSTICE HARLAN, concurring.
  3. ^ レーザー盗聴装置を製造している会社
  4. ^ “市民団体の記者会見“隠しどり” ICレコーダー置く 秋田県当局に県政記者会が抗議へ”. 産経新聞. (2014年2月4日). オリジナルの2014年8月14日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140814043244/https://sankei.jp.msn.com/politics/news/140204/lcl14020420330002-n1.htm 
  5. ^ 総務省電波利用ホームページ「微弱無線局の規定 」https://www.tele.soumu.go.jp/j/ref/material/rule/index.htm 「カーラジオ用FMトランスミッター」や「ミニFM」などが一般的な微弱無線局の代表例である。
  6. ^ 谷腰 2004, p. 152-153.
  7. ^ Pursglove SD (1966) Electronic Design 14(15):34-49.
  8. ^ 中田整一『盗聴 二・二六事件』(文藝春秋社、2007年)を参照。
  9. ^ Press, The Associated (2005年2月20日). “New Nuclear Sub Is Said to Have Special Eavesdropping Ability” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/2005/02/20/politics/new-nuclear-sub-is-said-to-have-special-eavesdropping-ability.html 2022年11月17日閲覧。 
  10. ^ ミッドウェー海戦
  11. ^ (秘密の保護)第59条 何人も法律に別段の定めがある場合を除くほか、特定の相手方に対して行われる無線通信(電気通信事業法第4条第1項又は第164条第2項の通信であるものを除く。第109条並びに第109条の2第2項及び第3項において同じ。)を傍受してその存在若しくは内容を漏らし、又はこれを窃用してはならない。(“法に基づく別段の定め”とは電波法第52条に規定される「非常通信」、「遭難通信」、「緊急通信」、「安全通信」、放送受信の5つのこと)
  12. ^ 電波法第109条の2  暗号通信を傍受した者又は暗号通信を媒介する者であつて当該暗号通信を受信したものが、当該暗号通信の秘密を漏らし、又は窃用する目的で、その内容を復元したときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
  13. ^ 田宮裕『刑事訴訟法[新版]』,1996)
  14. ^ a b c 「盗聴社会」 夫の浮気調査・部下の発言監視・企業スパイ あの手この手で摘発 読売新聞 1998年4月3日






品詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「盗聴」の関連用語

盗聴のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



盗聴のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの盗聴 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS