熾天使
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/28 12:33 UTC 版)
偽ディオニシウス・アレオパギタが定めた天使の九階級のうち最上とされる。姿は「3対6枚の翼を持ち、その内の2枚で頭を、2枚で足を隠し、残りの2枚で羽ばたいている」とされる。
שָׂרַף /sarap/ にはヘブライ語で動詞として「燃える」「燃やす」の意味があり、『レビ記』、『ヨシュア記』など様々な書の中で広く使われている。 名詞としての使用は『民数記』、『申命記』、『イザヤ書』に見られ、通常は「蛇(毒蛇)」を表す語として解釈される。「燃える」という語がなぜ蛇を指す語として用いられるようになったかは不明だが、その種類の蛇の色が赤かった、その毒を火に例えたなどの説が有る。『民数記』、『申命記』においてはנָחָשׁ שָׂרָף /nakhash sarap/ (fiery serpent)およびその複数形נָחָשׁים שָׂרָפִים /nakhashim sarapim/ という表現も見られる。
天使として解釈されるשָׂרַף /sarap/ の出典は、『イザヤ書』にあり、6章2節で上述の6枚の翼の姿が語られている。ただし、その『イザヤ書』中で「蛇」の意味でこの語を用いている箇所もあり、30章6節においてשָׂרָף מְעוֹפֵף /sarap me'opep/ と述べられているそれは「fiery flying serpent(火のごとき飛ぶ蛇)」と訳される(מְעוֹפֵף /me'opep/ がヘブライ語でflyingを意味し、שָׂרַףがfiery serpentもしくはserpent)。
「飛ぶ蛇」が何を指したかは不明だが、古代エジプトの蛇形記章(ウラエウス)には鳥の翼を持つ「winged uraeus」が有り、またこの「蛇+翼」と言う意匠はエジプトに限らずオリエントで広く使用されていた。 または一説には起源はセラピムと呼ばれるカルデア神話に登場する稲妻の精であり、六枚の翼を持つ蛇の姿をして炎の様に飛んだといわれている[2]。こうしたオリエントに置ける文化や伝承が後にユダヤ教に影響を及ぼした可能性については、学術的には結論が出ていない。
神の御前にいるとされるラファエル、ウリエル、ミカエル、ガブリエルの四大天使は偽ディオニシウス・アレオパギタが定めた天使の九階級のうち下から二番目の階級の大天使と記されているが、イギリスの詩人ジョン・ミルトンの『失楽園』では、この四大天使は熾天使として扱われている。また、悪魔の王となったルシファーも、堕天する以前は最上級の熾天使であったとされている(ルシファーは特別に、12の翼を有し、なによりも美しく光輝いている、と言われる)。
『ヨハネの黙示録』4章6-9節で語られる4つの生き物(four beasts)は6枚の翼を持つ点と「聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな」と唱えている点が熾天使と一致する。ただし、獅子・雄牛・人・鷲の4つの特徴を持つと言う点は智天使に似ている。
- 1 熾天使とは
- 2 熾天使の概要
- 3 『イザヤ書』の熾天使
- 4 参考文献
熾天使と同じ種類の言葉
固有名詞の分類
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