次元解析
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/13 09:05 UTC 版)
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次元解析を行う際に用いる次元は国際単位系の基本単位に対応する7つの次元に限る必要はなく、扱う問題に応じて独立した次元を選ぶことができる[7]。たとえば加速度のない流れでは質量、長さ、時間に加えて力を独立次元とみなすことでより厳密な情報が得られるというブリッジマン(1921)に由来する方法がある。
また長さの次元 に対して、3方向 (x , y , z) を区別して次元解析してもよい。この方法はHuntley(1955)に由来し[7]、方向性次元解析(vectorial dimensional analysis[8]またはCosta(1971)によって指向解析 (directional analysis)[7]と呼ばれる。重力や境界層など、特別な方向をもつ物理現象に対しては方向性次元解析が有効になる場合がある。
例として、流れの中に、流れに平行に置かれた平板が受ける抗力の問題を考える[7]。抗力 F、平板の面積 S、流速 u、流体の密度 ρ、粘性 μ、平板前縁から流れに沿って測った距離を x とする。独立次元としてを用いる通常の次元解析では2つの無次元数:抗力係数 f とレイノルズ数 Re
が得られるが、これらの間に成り立つ関係式の具体形は分からない。しかし平板に平行な2方向 x, y の長さの次元と、平板に直交する z 方向の長さの次元を独立と考えることによって、層流の場合には
という、より詳細な関係式を得ることができる。
また、Moran(1967)によって群論的方法との関連も論じられている[7]。
- ^ 化学工学会 編『化学工学』(3版)槇書店、2006年、6頁。ISBN 4-8375-0690-9。
- ^ 大野克嗣『非線形な世界』東京大学出版会、2009年。ISBN 978-4-13-063352-9。
- ^ 五十嵐保; 杉山均『流体工学と伝熱工学のための次元解析活用法』共立出版、2013年、6頁。ISBN 978-4-320-07189-6。
- ^ 白樫正高「次元解析再考」『長岡技術科学大学研究報告』第16巻、1994年、93-95頁、hdl:10649/479、2023年8月13日閲覧。
- ^ 山本鎮男、曽根彰・芦野隆一・守本晃『ダイナミカルシステムの数理 基礎』共立出版、1999年、242頁。ISBN 978-4-320-08125-3。
- ^ 大野克嗣『非線形な世界』東京大学出版会、2009年、165頁。ISBN 978-4-13-063352-9。
- ^ a b c d e 広瀬勉「次元解析への一視点-次元定数を媒介として-」『化学工学論文集』第4巻第4号、化学工学会、1978年、331-336頁、doi:10.1252/kakoronbunshu.4.331。
- ^ 五十嵐保; 杉山均『流体工学と伝熱工学のための次元解析活用法』共立出版、2013年、104頁。ISBN 978-4-320-07189-6。
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