機械式計算機
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/26 02:49 UTC 版)
パスカルの計算機
ブレーズ・パスカルが1640年代に製作したもの[2]。Pascaline(パスカリーヌ)またはMachine Arithmétiqueと呼ばれている。
パスカルは1642年、19歳のときから計算機について研究を始めている。徴税官だった父の手伝いをしていた彼は、仕事の負担を軽減する道具を作ろうと考えた。1652年までに50台もの試作機を作ったが、売れたのは1ダース強である。高価であったことと複雑であったこと(さらに減算すら、後述するように簡単ではなかったこと)などが原因で、それ以上売れることはなく1652年に計算機の製作を止めた。その頃にはパスカルの主な興味が他に移っていて、気圧の研究や哲学へと関心が向かっていたというためもある。
Pascalineは十進法ベースの機械である。しかし、当時のフランスの通貨(リーブル)は十進系ではなく、イギリスのポンド、シリング、ペンスと似たものであった。つまり、市中での計算の需要としては科学技術や工学的な計算よりも多い、金額の計算にPascalineを使おうとすると、計算結果を更に変換する必要があった。1799年、フランスはメートル法に切り替えた。このとき、パスカルの基本設計に触発された職人が登場したが、彼らも商業的には成功しなかった。
最初のPascalineは5個のダイヤルがあり、後には6ダイヤルや8ダイヤルのものが作られている。最大のもので 9,999,999 までの数値を扱うことが出来た。各ダイヤルは数値のうちの1桁に対応し、計算結果は上部の窓に表示される。歯車は一方向にしか回らないため、負の値を直接計算することはできない。減算をするには(10進数における減基数としての)9の補数表現にして加算する必要があった。これについては使用者を助けるため、数字が見える部分が手前側が通常の表示、奥側が補数の表示になっており、蓋状の目隠しをスライドしてどちらかのみが見えるようになっている。
注釈
- ^ 「ディジタル」は、「指」などの意味のある digit に由来する語である。 なお「アナログ」には、比例量的なという意味があり、 以下で述べる機械式計算機の多くが、二進法的な機構ではなく、回転板の角度などで数を表現しているという点では、アナログ的な部分もある。
- ^ 計量言語学など、文系分野でも計算する分野はある。
- ^ 日本の「タイガー計算器」の場合、1968年頃に生産・出荷のピークを迎えた後、1970年前後に一気に急落した(出典:『計算機屋かく戦えり』p. 162, 164)
- ^ タイガー計算機株式会社は、以降事務器製造に転じ、1970年代中期以降はタコグラフや運送会社の運行管理コンピュータソフト開発に転じた。1991年には株式会社タイガーと改称、2021年でも現存する。
出典
- ^ スイッチング理論の原点を尋ねて
- ^ ブレーズ・パスカル、「ペンやチップなしに規則的動作によりあらゆる算術演算を行うためB.P.により新たに発明された機械に関して大法官閣下に献呈する書簡」(Lettre dédicatoire à Monseigneur le Chancelier sur le sujet de la machine nouvellement inventée par le sieur B.P. pour faire toutes sortes d'opérations d'arithmétique par un mouvement réglé sans plume ni jetons)、Wikisource:fr:La Machine d'arithmétique、1645年。
- ^ 前島正裕「明治前期の機械式計算器の開発に関する一考察」、国立科学博物館研究報告 E類(理工学) 第39巻 pp. 59〜
- ^ 和田英一「情報処理技術遺産 : 自働算盤」
- ^ 矢頭良一(手動計算機)
- ^ The History of Japanese Mechanical Calculating Machines (英文サイト)
- ^ “矢頭良一…大空への夢、計算機発明(福岡県豊前市)”. 読売新聞 2008年7月30日閲覧。
- ^ 矢頭良一の機械式卓上計算機「自働算盤」に関する調査報告、国立科学博物館 産業技術史資料情報センター かはく技術史大系(技術の系統化調査報告書)(PDFファイル)
- ^ http://www.jsme.or.jp/kikaiisan/data/no_030.html
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