森林 人為と遷移

森林

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/25 07:59 UTC 版)

人為と遷移

ヒノキ人工林

人間の手の全く入っていない森林は原始林、または原生林と呼ばれ、人為の及ばない状況においての本来の森林の状況に最も近いものとなっている。自然に成立した森林は天然林、または自然林と呼ばれる。天然林には原生林のほか、人間が伐採をした後全く手が加わらず、自然のままに再生した天然生林なども含まれる。森林伐採後、植林などを行わず放置して残存する種子から再び森林が再生するのを待つ方法を天然更新、植林などで人工的に森林を再生させることを人工更新と呼ぶ[32]

天然更新には、近隣の森林からの種子散布に期待する天然下種更新と、根株を放置してそこから新たな芽が出ることを待つ萌芽更新があり[33]、樹種や自然条件によっては植林の代わりにこうした方法を取って森林再生を待つこともある[32]。また、天然林は必ずしも人間の手が入っていないわけではなく、たとえば人間がある程度の伐採をしたり、狩猟や採集などで圧力を加えたことで本来の生態系から離れた新しい均衡が保たれているものも多い。たとえば里山などはほぼ天然林であるが、肥料にするための下草の採集や薪炭用としての木材の利用などが定期的に行われ、人間の圧力のもとで新たな均衡が保たれていた[18]。これに対し、木材の生産や治山などの目的で人間が植林を行い成立した森は、人工林と呼ばれる[34]。特に木材生産用の人工林においては単一の樹種が一斉に植えられていることが多く、天然林に比べ生物多様性が少なくなりがちである。また、人工林は人間が目的を持って植えた森林であるため、その目的を十全に果たさせるためには定期的な人間の手入れが必須である。

上記の原生林は一次林とも呼ばれるが、これに対し伐採や山火事などで本来の植生が失われたのち、自然に、または人工的に再生した森林のことを二次林と呼ぶ。二次林は自然状態の場合、まず新たにできた裸地にコケ類が進入し、次いで草原が成立したのち、樹木が侵入して森林の形成が始まる。まず最初に生育する樹木は、生育に多くの光を必要とするため日当たりの良いところを好む陽樹である。陽樹は草本と日照を巡って争うものの背の高い樹木がやがて勝利し、まず陽樹の低木林が形成される。低木林がまず形成されるのは、高木より低木の方が成長が速いためである。しかし低木林においてはいまだに林床に多くの日光が差し込むため陽樹も生育でき、やがて高木が低木を押しのけて成長して陽樹林ができる。しかし、陽樹の高木林がいったん成立すると林床にはあまり光が届かなくなるため、生育に多くの光を必要としない陰樹が林床にて生育するようになり、陽樹と陰樹の混生林が成立する。この場合、光の届かない林床ではもはや陽樹が生育しないため、新たに生育する木は陰樹のみとなる。そして陽樹が寿命を迎え枯死すると、いまだに生育を続ける陰樹のみの森林が成立するというプロセスをたどる。これを遷移と呼ぶ。また、遷移が最終段階に到達した森林を極相林と呼ぶ。ただし極相林はそのまま不変であるわけではなく、樹木の枯死や倒伏などによって更新される。倒伏などによってできた空き地では日当たりがよくなるため、再び陽樹が生育し、以後上記のプロセスをたどる。この場合、倒木を礎としてその上に新たな木が生育する、いわゆる倒木更新が起きることもある。こうして極相林は断続的に更新されていく。


注釈

  1. ^ 密林はジャングル(熱帯雨林)を指していう場合もある。
  2. ^ ジャングルは狭義には東南アジアの熱帯雨林を指していう。また、広義には熱帯雨林に限らず、密林を意味する語としても用いられる。
  3. ^ 日本の森林法では地方自治体などが所有する公有林は民有林に含まれる。

出典

  1. ^ 森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)”. e-Govポータル. 総務省. 2021年5月4日閲覧。
  2. ^ 講談社『暮らしのことば新語源辞典』初版
  3. ^ 三省堂『新明解語源辞典』初版
  4. ^ 「モリ(盛り)と同源の語といわれている」講談社『暮らしのことば新語源辞典』初版
  5. ^ 「遠くから見ると濃い緑が盛り上がって見え、近づいてみると日のさすことがほとんど無い所の意」三省堂『新明解国語辞典』第七版
  6. ^ 「林政学講義」p4-p6 永田信 東京大学出版会 2015年11月20日初版
  7. ^ 「林政学講義」p5 永田信 東京大学出版会 2015年11月20日初版
  8. ^ 「生態系のふしぎ」p26-28 児玉浩憲 ソフトバンククリエイティブ サイエンス・アイ新書 2009年11月24日初版第1刷発行
  9. ^ 「流系の科学 山・川・海を貫く水の振る舞い」p52 宇野木早苗 築地書館 2010年9月10日初版発行
  10. ^ 「流系の科学 山・川・海を貫く水の振る舞い」p37 宇野木早苗 築地書館 2010年9月10日初版発行
  11. ^ 「森と人間の文化史」p109 只木良也 日本放送出版協会 1988年10月20日第1刷
  12. ^ 「自然環境学の創る世界」p157 東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学研究系編 朝倉書店 2011年3月20日書版第1刷
  13. ^ 「森林利用学」p19-27 吉岡拓如・酒井秀夫・岩岡正博・松本武・山田容三・鈴木保志著 丸善出版 令和2年3月30日発行
  14. ^ 「26年間で国中ハゲ山 世界的不足で輸入木材も高値」『日本経済新聞』昭和25年10月10日2面
  15. ^ 「世界市民の地理学」p117 野尻亘・古田昇 晃洋書房 2006年4月10日初版第1刷発行
  16. ^ 「火の科学 エネルギー・神・鉄から錬金術まで」p84 西野順也 築地書館 2017年3月3日初版発行
  17. ^ http://www.pref.kagoshima.jp/ad06/sangyo-rodo/rinsui/tokuyo/gaiyo/menu-1.html 「特用林産物とは」鹿児島県 2022年4月6日閲覧
  18. ^ a b 「現代森林政策学」p28 遠藤日雄編著 日本林業調査会 2008年3月16日初版第1刷発行
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  23. ^ 「森と人間の物語」p105 小澤普照 KKベストセラーズ 1991年8月5日初版発行
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  31. ^ a b 「植生管理学」p157 福嶋司編 朝倉書店 2005年4月15日初版第1刷
  32. ^ a b 「造林学 第四版」p116 丹下健・小池孝良編 朝倉書店 2016年8月25日初版第1刷
  33. ^ 「造林学 第四版」p121-124 丹下健・小池孝良編 朝倉書店 2016年8月25日初版第1刷
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