木材・プラスチック再生複合材
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/01 06:27 UTC 版)
概要
WPRCの原料は、主にリサイクルされた木質系原料、プラスチック原料、その他各種添加剤などであり、各種材料を混錬し、成形するという方法により製造されている。日本では主に木粉と熱可塑性プラスチックが用いられている。また、JIS A 5741[2]ではリサイクルされた木質系原料やプラスチック原料を、質量割合で40%以上用いたWPCを「木材・プラスチック再生複合材(Wood Plastic Recycled Composite, WPRC)」として定義されている。WPRCは、原料である木材とプラスチックの双方の性能を有しており、これらの配合率によって性能が変化することが知られている。
主な用途としては、デッキ材などのエクステリアである。
WPCは日本では90年代に製造・販売が開始され、前述のWPRCのJIS規格が2006年に制定されているなど、環境に配慮した材料として注目され、現在生産が活発である。国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)に基づく「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」(平成30年2月9日閣議決定)において「木材・プラスチック再生複合材製品」が特定調達品目として指定された。[3]またWPRCは、SDGsの達成に大きく貢献する素材として注目されている。
特徴
原料として木質原料とプラスチック原料とを用いていることから、WPRCを含むWPCは、木材とプラスチックの両方の性質を合わせ持っている。 また、JIS A 5741:2016「木材・プラスチック再生複合材」に適合するものは、次の特徴を有する。
1)高い環境性能
- 主要な原材料は、リサイクル材
- 使用後は、繰り返し原料として使用可能(多回リサイクル性を持つ)
- 廃棄物を原料として用いることで、省資源化、廃棄物削減に寄与する
- 原料として林地残材、間伐材等を用いることにより、森林保全、炭素固定等に役立つ
- WPRCのプラスチック材料の再生材比率が100%の場合、再生材比率が0%(バージン)の場合に比べ、GHG排出量を28%削減できることが明らかになっている。[4]
2)高い安全性
- ホルムアルデヒド放散量、有害物質溶出量等に関する安全基準を満たした安全素材
- とげ、ささくれが発生しない
3)安定品質による高い信頼性
- 環境配慮性、強度、耐久性、安全性等をクリアし、且つ押出し成形による安定した性能を持つ工業製品素材
4)メンテナンス容易な経済的製品素材
- 天然木材と比較して、寿命が長くトータルライフサイクルコスト削減可能な製品素材
性能
WPRCは、木材とプラスチックの双方の欠点を補っている。
木材とプラスチックそれぞれとの比較
木材と比較した
WPRCのメリット[2]
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木材と比較した
WPRCのデメリット
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注記
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プラスチックと比較したWPRCのメリット[5]
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プラスチックと比較した
WPRCのデメリット
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耐候性
木材に比べると耐候性は良いが、表面の木質原料が紫外線により短期間で退色してしまい、顔料を入れると粉を吹いたようなチョーキング現象が起きてしまう。近年では、変色にはヒンダートアミン系光安定化剤(HALS)、チョーキングには紫外線吸収剤(UVA)の添加が効果的であることも報告されている[6]。
木粉割合
曲げ強度および衝撃強さは木粉添加量により異なる。WPRCとほぼ同様の性質を持つWPCの木粉‐PP(ポリプロピレン)複合材において、相溶化剤としてマレイン化PPを添加すると、曲げ強度は木粉量の増加と共に向上する。[7]
木粉割合36~50%のWPRCに対し、JIS Z 2101に規定される耐腐朽性試験を行ったところ、カワラタケ、オオウズラタケの2種による質量減少率は全て0.00%であり、木粉割合に関わらず腐朽は認められなかった。[8]
原料・製造方法
WPRCの原料は、木質系原料、プラスチック原料、その他各種添加剤などである。木質系原料には、木質系材料(木材や竹など)を微細化した木粉または木繊維が用いられる。プラスチック原料には、主に熱可塑性プラスチックが用いられ、具体的にはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)などが用いられる。その他各種添加剤として、相溶化剤、顔料、耐候剤、滑剤、充填剤などが原料として必要に応じて用いられる[9]。
WPRCの製造は、一般に、各種原料を溶融・混合(混練)してコンパウンド化する「成形前工程」と、コンパウンドを成形する「成形工程」により行われる。 「成形前工程」で原料のコンパウンド化を行うことにより、成形中に供給される原料が均質化し、成形工程の条件や最終製品の品質・性能が安定するとされる[9]。主な混練装置としてヘンシェル型のミキサーが用いられている。 「成形工程」は押出し成形、射出成形、プレス成形などにより行われる。その中で最も多く利用されているのは押出し成形であり、その装置として二軸押出し成形機が主に用いられている。木質系原料の含有率を増加させるとともにコンパウンドの溶融粘度が著しく増加するため、高トルクの成形機が必要になる[10]。このように、WPRCの製造にあたっては、主原料である木質系原料とプラスチック原料の特性や配合を考慮して、装置を選択する必要がある。
- ^ “WPRCについて|木材・プラスチック再生複合材部会”. wprc.info. 2024年4月1日閲覧。
- ^ a b JIS A 5741「木材・プラスチック再生複合材」(日本産業標準調査会、経済産業省)
- ^ “グリーン購入法について|木材・プラスチック再生複合材普及部会”. wprc.info. 2022年12月14日閲覧。
- ^ Fuchigami, Yuki; Kojiro, Keisuke; Furuta, Yuzo (2020-01). “Quantification of Greenhouse Gas Emissions from Wood-Plastic Recycled Composite (WPRC) and Verification of the Effect of Reducing Emissions through Multiple Recycling” (英語). Sustainability 12 (6): 2449. doi:10.3390/su12062449. ISSN 2071-1050 .
- ^ ウッドプラスチックの物性:木材工業,Vol.67-11, 2012 pp.504-506
- ^ ウッドプラスチックの耐久性:木材工業,Vol.67-11, 2012 pp.507-511
- ^ “木材・プラスチック複合材(WPC)の現状”. 木材保存 Vol.31-5: pp.192-198. (2005).
- ^ “木材・プラスチック再生複合材の防かび及び耐腐朽性に関する検討”. 日本大学生産工学部第42回学術講演会. (2009).
- ^ a b 木材・プラスチック複合材料とその標準化動向:塑性と加工,Vol.55-2, 2014 pp.98-102
- ^ 木材とプラスチックとの複合体開発の現状―木質材料の押出成形―:木材学会誌,Vol.49-6,2003 pp.401-407
- ^ a b c ウッドプラスチックの種類,用途:木材工業,Vol.67-11,2012 pp.470-474
- ^ a b c d e (公社)日本木材加工技術協会 木材・プラスチック複合材部会HP:ウッドプラスチックのしおり
- ^ a b c ウッドプラスチックの歩み:木材工業, Vol.67-11, 2012 pp466-469
- ^ https://ecoleaf-label.jp/pdf_view.php?uuid=377c8a23-dd9d-4f0e-a2b3-cd62992967b6.pdf&filename=PA-249000-CA-01_Wood-plastic%20Composite.pdf
- ^ (一社)日本建材・住宅設備産業協会 木材・プラスチック再生複合材普及部会:WPRCの市場規模
- ^ “役立つデータ集|木材・プラスチック再生複合材普及部会”. wprc.info. 2022年12月14日閲覧。
- ^ 14:00-17:00. “ISO 20819-1:2020” (英語). ISO. 2022年12月14日閲覧。
- ^ Plastics. Wood-plastic recycled composites (WPRC), BSI British Standards 2024年4月1日閲覧。
- 1 木材・プラスチック再生複合材とは
- 2 木材・プラスチック再生複合材の概要
- 3 用途・施工
- 4 標準化[16][17] [18]
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