日本山岳会 活動内容

日本山岳会

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/25 02:59 UTC 版)

活動内容

概略

日本最初の登山クラブとして、設立以来日本人による内外の登山活動を牽引し、また支えてきた。なかでもアルバータ山初登頂(1925年〈大正14年〉)、マナスル初登頂〈1956年(昭和31年)〉、ナムチャバルワ初登頂〈1992年(平成4年)〉などは高く評価されている。ほかにも文化活動や上高地尾瀬を中心にした自然保護活動にも取り組んできている。また、高所医学の研究、マッキンリー気象観測自然エネルギー利用の研究、出版や講演なども行っており、最近は「山の日」制定の活動など、山を軸にして多岐に及ぶ。

委員会の主な対外活動

財務委員会、総務委員会、デジタルメディア委員会、山岳編集委員会、会報編集委員会、図書委員会、図書管理委員会、資料・映像委員、海外委員会、集会委員会、山岳研究所運営委員会など日本山岳会の運営に直接かかわるもののほか、次のような委員会があり、各種の啓蒙活動や自然保護活動、社会貢献活動を行っている。

  • 自然保護委員会
自然保護に関連し、毎月定例の委員会の開催、支部委員との情報交換、自然保護全国集会の開催、機関誌『木の目草の芽』の発行、自然観察山行、シンポジウム・講演会開催、調査研究活動に取り組んでいる。また、他の山岳団体との情報交換なども行っている[21]
  • 科学委員会
山に関係した科学に関連し、最近の動向や新たな知見の紹介・普及などに取り組み、登山と山岳文化の発展に寄与することを目的として、シンポジウム・講演会・探索山行などを開催している。また、「中央分水嶺踏査」事業や様々な「探索山行」など特定のテーマについて、プロジェクトチームを作って、研究や実用化促進などを行っている[22]
  • 医療委員会
日本山岳会の後援か否かにかかわらず海外登山隊に医師を推薦している。ほかにも公開性の強い委員会の開催、会員に限ることなく登山愛好者からの医療相談などにも対応している[23]
  • YOUTH CLUB
2012年(平成24年)4月に発足した若手を主体とする委員会。登山愛好者の登山技術の向上を図るため、机上講習会のほか、沢登り縦走雪山、クラシックルート登攀、フリークライミング山スキー、雪上訓練、雪崩講習など登山全般に渡る実地訓練も開催している。こうした活動を通して中堅・若手会員の育成や獲得を図ることを目的としている[24]
  • 高尾の森づくりの会
自然保護委員が中心となって、2001年(平成13年)1月に発足した森林ボランティアの市民団体。裏高尾小下沢(こげざわ)の国有林を国から開放してもらい、国土緑化推進機構からの資金援助と森林管理署の技術指導を受けながら、荒れた森の手入れや植林作業に取り組んでいる。具体的な活動として「広葉樹を植樹することで針葉樹と広葉樹の混交林の造成を推進」「人工林の間伐によりスギヒノキの巨樹林を目指す」「登山道や歩道の整備、つる切り、下刈り、風景林の修景作業」「森の研修会や子供キャンプ、自然観察会、森づくりボランティア活動支援」などがある。会報「高尾の森通信」を発行[25]

主な対外活動

1998年(平成10年)に創設。登山が好きで山に造詣が深かった秩父宮雍仁(やすひと)親王およびその妃の事跡を記念するために設けられた賞。対象は「登山活動の分野と山に関する文化的活動および学術的業績の分野において顕著な活動もしくは業績のあった個人またはグループ」とされ、現在は会員に限定されない。受賞者の表彰式は毎年、日本山岳会年次晩餐会で行われ、受賞者には表彰状および副賞が授与される。第1回の受賞は薬師義美(日本山岳会京都支部副支部長、大谷高校教諭)による『新版・ヒマラヤ文献目録』の作成とヒマラヤ関係著作翻訳書の刊行と三枝礼子(日本山岳会会員、翻訳家)による『ネパール語辞典』の編著に対するもの[26]
  • 海外登山助成金(旧海外登山基金)
1989年(平成元年)に創設。海外登山の振興を目的に、海外登山を計画する個人・団体(外国隊は当面対象としない)に助成をする。対象は会員に限らない。最初の助成対象となったのは1990年(平成2年)の日本山岳会東海支部(日中友好天山山脈雪蓮峰登山隊)と日本山岳会青年部・高所登山委員会(日本山岳会第1次パミール登山隊)。これまで厳格な審査を通して、先鋭的な登山隊に交付されてきた[27]
  • 雪山天気予報
気象遭難防止を目的とした冬山の天気予報を配信する事業で2008年(平成20年)末から始まったサービス。北アルプス(北部・南部)と八ヶ岳のエリアを対象に、冬期は正月を挟んで約1カ月、春期はゴールデンウィークを中心に無料で配信。期間中は登録されたメールアドレスに毎日発信される。会員でなくても利用可能である。携帯電話の使用が可能であれば、登山中でも受信できる。気象予報士猪熊隆之(株式会社ヤマテン[28] 代表)[29]。登録用アドレス:http://www.everest.jp/jacweather/
  • 登山道調査
日本山岳会と国土交通省国土地理院側図部が協定を結んで行われる「国土地理院が整備する地図における登山道情報の正確性を維持 ・向上させることにより、登山者等の安全性向上に資することを目的とする」(登山道情報の交換に関する協力協定書第1条)取り組み。会員が各自の責任で行った登山中に得た登山道情報を日本山岳会に送り、会はそれを整理・保管し、定期的に国土地理院に提供する。国土地理院で確認後、電子国土基本図に反映させる[30]

  1. ^ 施設”. 日本山岳会. 2018年1月21日閲覧。
  2. ^ 役員”. 日本山岳会. 2018年1月21日閲覧。
  3. ^ 約款 (PDF) 第2章「目的及び事業」より。
  4. ^ a b [平成28年度決算報告] (PDF) 日本山岳会
  5. ^ 公益社団法人日本山岳会 支部
  6. ^ 水野勉「日本山岳会の百年」日本山岳会百年史編纂委員会編『日本山岳会百年史』(本編)(日本山岳会、2007)所収、『目で見る日本登山史』(山と渓谷社、2005)、pp.74-77
  7. ^ 「カラーページ掲載資料説明『日本山岳会の設立場所』」日本山岳会百年史編纂委員会編『日本山岳会百年史』(本編)(日本山岳会、2007)、pp.60-61
  8. ^ 会員数は「創期会員名簿」による。「創期会員名簿」は1905年(明治38年)10月の山岳会創立から1906年(明治39年)末までの入会者を登載。総数393名だが重複して掲載されている者が3名いる。南川金一「『創期会員名簿』に見る創立期間もない山岳会」日本山岳会百年史編纂委員会編『日本山岳会百年史』(本編)(日本山岳会、2007)所収、「日本山岳会『創期会員名簿』登載者」日本山岳会百年史編纂委員会編『日本山岳会百年史』(続編・資料編)(日本山岳会、2007)所収
  9. ^ 『目で見る日本登山史』(山と渓谷社、2005)、pp.78-79
  10. ^ 『目で見る日本登山史』(山と渓谷社、2005)、pp.96-97
  11. ^ 「山頂に残した記念のピッケル」『東京日日新聞』1925年8月9日夕刊(大正ニュース事典編纂委員会 『大正ニュース事典第7巻 大正14年-大正15年』本編pp.661-662 毎日コミュニケーションズ刊 1994年)
  12. ^ 発起人のメンバーは、小島烏水、城数馬、高野鷹蔵、高頭仁兵衛武田久吉、梅沢親光、河田黙の7名。
  13. ^ a b 日本山岳会の歩み 社団法人日本山岳会、2011年2月9日閲覧。
  14. ^ 『新日本山岳誌』(ナカニシヤ出版、2005年)
  15. ^ 「人物コラム『高頭仁兵衛(式、義明)』」日本山岳会百年史編纂委員会編『日本山岳会百年史』(本編)(日本山岳会、2007)、pp.150-151
  16. ^ 「人物コラム『木暮理太郎』」日本山岳会百年史編纂委員会編『日本山岳会百年史』(本編)(日本山岳会、2007)、pp.298-299
  17. ^ 「人物コラム『槇有恒』」日本山岳会百年史編纂委員会編『日本山岳会百年史』(本編)(日本山岳会、2007)、pp.306-307
  18. ^ 「人物コラム『松方三郎』」日本山岳会百年史編纂委員会編『日本山岳会百年史』(本編)(日本山岳会、2007)、pp.322-323
  19. ^ 「人物コラム『武田久吉』」日本山岳会百年史編纂委員会編『日本山岳会百年史』(本編)(日本山岳会、2007)、pp.154-155
  20. ^ 「人物コラム『別宮貞俊』」日本山岳会百年史編纂委員会編『日本山岳会百年史』(本編)(日本山岳会、2007)、pp.332-333
  21. ^ 日本山岳会自然保護委員会
  22. ^ 日本山岳会科学委員会
  23. ^ 日本山岳会医療委員会
  24. ^ 日本山岳会YOUTH CLUB
  25. ^ 日本山岳会高尾の森づくりの会
  26. ^ 日本山岳会秩父宮記念山岳賞
  27. ^ 日本山岳会海外登山助成金
  28. ^ ヤマテンホームページ
  29. ^ 日本山岳会雪山天気予報
  30. ^ 日本山岳会登山道調査
  31. ^ 『日本登山史年表』山と渓谷社編『目で見る日本登山史』(山と渓谷社、2005年)、「日本山岳会百年史年表」日本山岳会百年史編纂委員会編『日本山岳会百年史』(続編・資料編)(日本山岳会、2007)所収
  32. ^ 「 日本山岳会百年史年表」日本山岳会百年史編纂委員会編『日本山岳会百年史』(続編・資料編)(日本山岳会、2007)では初登頂、「日本人による海外登山史年表」 山と渓谷社編『目で見る日本登山史 日本登山史年表』(山と渓谷社、2005年)では第2登としている
  33. ^ 「日本人による海外登山史年表」山と渓谷社編『目で見る日本登山史 日本登山史年表』(山と渓谷社、2005年)所収、「日本山岳会百年史年表」日本山岳会百年史編纂委員会編『日本山岳会百年史』(続編・資料編)(日本山岳会、2007)所収
  34. ^ 「日本山岳会『創期会員名簿』登載者」日本山岳会百年史編纂委員会編『日本山岳会百年史』(続編・資料編)(日本山岳会、2007)所収
  35. ^ 「創期会員以降10年ほどの間に入会した異色会員」日本山岳会百年史編纂委員会編『日本山岳会百年史』(続編・資料編)(日本山岳会、2007)所収
  36. ^ a b 「ナイロンザイル事件関係年表」石岡繁雄、相田武男『石岡繁雄が語る 氷壁・ナイロンザイル事件の真実』(あるむ、2007年)所収
  37. ^ ナイロンザイル事件を法律的側面から考察したものとして、溝手康史『ナイロンザイル事件が提起したもの』(『岳人』2012年5月号)所収
  38. ^ 「『1977年版山日記』に掲載されたお詫びの全文」石岡繁雄、相田武男『石岡繁雄が語る 氷壁・ナイロンザイル事件の真実』(あるむ、2007年)所収
  39. ^ 日本山岳会岐阜支部講演会記録「ナイロンザイル事件」(講師尾上昇)





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