懲戒解雇 該当事由

懲戒解雇

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/25 07:39 UTC 版)

該当事由

具体的にどのような行為が労働者にあれば懲戒解雇となるかは各会社の就業規則の定めによる。

労働基準法上の「労働者の責に帰すべき事由」の例としては以下のように示されているが、具体的には個別に判断される(昭和23年11月11日基発1637号、昭和31年3月1日基発111号)。実際の就業規則においても、これらに準じた構成となっていることが多い。

  • 事業場における盗取横領傷害など刑法犯に該当する行為のあった場合
  • 賭博、風紀紊乱等により職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ぼす場合
  • 雇い入れの際の採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合
  • 他の事業場へ転職した場合
  • 原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合
  • 出勤不良または出欠常ならず、数回に渡って注意を受けても改めない場合

具体的な事例としては以下がある。

無断欠勤
  • 開隆堂出版事件(東京地判平成12年10月27日) - 事前の届をせず、欠勤の理由、期間、居所を具体的に明確にしないままの2週間にわたっての欠勤。正当な理由は認められないと判断し、懲戒解雇を有効と判断した。
  • 栴檀学園事件(仙台地判平成2年9月21日) - 大学の専任講師が正当な理由なく1ヶ月間無断欠勤。業務に大きな支障がなかったこと、勤務成績が他の従業員と比較しても劣ることがなかったこと、上司が再三再四にわたり特に注意したりしなかったこと等から、懲戒解雇を無効と判断した。
経歴詐称
  • 炭研精工事件(最判平成3年9月19日)- 高等学校卒業以下に限定して採用している工員として採用されるにあたり、大学中退であることを秘匿し高卒として申告、また逮捕歴の事実を秘匿していた。「単に労働者の労働力評価に関わるだけではなく、会社の企業秩序維持にも関係する事項であることは明らか」として、懲戒解雇を有効と判断した。
  • 近藤化学工業事件(大阪地決平成6年9月16日)- 採用に当たり学歴不問としていた会社で、中卒を高卒と詐称。懲戒事由の「重要な経歴詐称」には該当しないと判断した(本件では職歴及び家族構成についても詐称があり、就業状況も不良であったことから解雇自体は有効と判断した)。

注釈

  1. ^ 離職理由の番号で懲戒解雇と特定できる。
  2. ^ 雇用保険などの切り替えの際の離職票の確認で発覚する。
  3. ^ 就業規則が存在しないために懲戒を成し得ないのに懲戒解雇がなされた場合、普通解雇の意思表示として判断される(判例として、ジップベイツ事件、名古屋地豊橋支判平成16年1月23日)。一方、懲戒解雇の効力が裁判で争われている場合において、裁判官が労働者の行為が懲戒解雇を根拠づけるほど悪質ではないが普通解雇には値すると判断した場合に懲戒解雇の意思表示を普通解雇の意思表示と認めるべきかどうかについては裁判所の判断は分かれている(肯定例として、日経新聞事件、東京地判昭和45年6月23日。否定例として、第一化成事件、東京地判平成20年6月10日等)。
  4. ^ 就業規則において懲戒処分の対象となる従業員に対して弁明の機会を付与しなければならない旨を規定していない場合において、弁明の機会が付与されていないことをもって直ちに懲戒解雇が無効になるとは一般的には考えられていない。ホンダエンジニアリング事件(宇都宮地判平成27年6月24日)では長期の無断欠勤を理由として懲戒解雇した事案において「就業規則において弁明の機会を与える旨の規定は置かれておらず、懲戒をするにあたっては労使の代表者で構成する賞罰委員会を開くこととされているところ、このような場合、弁明の機会を付与しないことをもって直ちに懲戒手続が違法ということはできない」等として、懲戒解雇を有効とした。一方、ビーアンドブィ事件(東京地判平成22年7月23日)では不正経理を理由として懲戒解雇した事案において、労働者に対する懲戒解雇が「全く最終的な弁明の機会等を付与することなく断行されており、拙速であるとの非難は免れず、この点において手続的な相当性に欠けており社会通念上相当な懲戒解雇であるということはできない」等として懲戒解雇を無効とした。
  5. ^ 離職証明書(会社が公共職業安定所に提出)や退職証明書(会社が労働者に交付)には「労働者の責に帰すべき事由」「重責解雇」である旨の退職であることが記載されるため、ハローワークや再就職先が懲戒解雇であることを把握するのは多くの場合容易となる。

出典

  1. ^ a b c d 懲戒解雇がどれだけ重い処分か知っていますか | ワークスタイル”. 東洋経済オンライン (2022年6月6日). 2022年6月6日閲覧。
  2. ^ 懲戒解雇-絶対知っておくべき10項目(まとめ)”. www.futoukaiko.com. 2022年5月30日閲覧。
  3. ^ 経歴詐称でいかなる懲戒処分ができるか? | 労働問題.com” (2021年6月11日). 2022年5月30日閲覧。
  4. ^ 懲戒解雇-絶対知っておくべき10項目(まとめ)”. www.futoukaiko.com. 2021年8月19日閲覧。
  5. ^ 【退職金】退職金と懲戒解雇・不利益変更 独立行政法人労働政策研究・研修機構






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