惡の華 登場人物

惡の華

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/17 08:28 UTC 版)

登場人物

声はアニメ版の声優。演(舞)は舞台版の俳優。演(映)は映画版の俳優。

主人公と取り巻く少女達

春日 高男(かすが たかお)
- 植田慎一郎[5] / 演(舞) - 清水尚弥[6] / 演(映) - 伊藤健太郎
本作の主人公。地味で中性的な容姿が特徴。ひかり市立南中学校2年1組→埼玉県立みぎわ高等学校2年B組の生徒。中一の頃から佐伯に片思いをしている。趣味は読書、中でもボードレールの『悪の華』がお気に入り。成績は芳しくなく、自身の内面と現実社会との隔たりに鬱屈を深めている。自意識過剰な性格に加え、内向的かつ潔癖症気味で、対人関係にも壁を作りがちな傾向にある。クラスメイトからの評判はあまり良くない。
偶発的に佐伯の体操着を盗んでしまったところを仲村に目撃され、彼女の下僕と化す。激しい自己嫌悪の中、同時に自分の本質の空虚さや佐伯に憧れる自己矛盾も感じるようになり、迷走の深みへと嵌っていくと同時に、仲村に対する好意が芽生える。しかし、それを仲村から春日を奪い返そうとする佐伯に見抜かれてしまう。佐伯に秘密基地で待ち伏せされ強引に性行為させられたものの、仲村に対する想いが甦り佐伯を拒絶した。その数日後、夏祭りの現地で仲村と心中を企てたものの失敗した。
幻想と苦悶の中で揺れ動く彼の自我の挫折と構築が、物語のテーマとなる。
高校編では、仲村との心中に失敗し、彼女と離ればなれとなり、追われるように大宮に引っ越す。彼女の影を追いながら抜け殻のように過ごす。自分の存在に対して否定的でより内向的となり、独特の自意識過剰は影をひそめるようになる。引っ越しの際に所有していた本を捨ててしまい、それ以来本を読まなくなるが、小説家志望の常磐文と古本屋で逢ってから再び読書好きとなる。常磐と交際を始めて以降は内向的な一面が薄れ、穏やかながら活動的な性格へ変貌していく。クラスメイトとも打ち解け、家族との関係も徐々に軟化しつつある。祖父の死と葬儀のため一時帰郷した際に木下と対面し、彼女から仲村が引っ越していたことと彼女の居場所を告げられた。
家庭環境
一般的な中流家庭で、一戸建ての家に住む。家族構成はやや神経質な母親と、大らかで読書好きの父親がいる。両親に対して反抗的な態度を見せることは少ないが、自らの内面を見せるほどには至っていない関係。高校編では埼玉県の公団住宅に引っ越しており、蔵書は全て処分したため自室は殺風景になっている。
仲村 佐和(なかむら さわ)
声 - 伊瀬茉莉也[5] / 演(舞) - 花奈澪[6] / 演(映) - 玉城ティナ
本作のヒロイン。春日の真後ろの席に座っている、茶髪でボブカットの眼鏡女子。春日と2人きりになった時には感情表現豊かで眼鏡を外すことが多いが、普段は無表情かつ冷淡。目上に対しても非常に毒舌家かつ非社交的な性格で、周囲との軋轢が絶えないが、一切恭順せずに社会規範や常識に唾棄する態度を貫く。自身の弱い面を全く見せず、教師も怯ませるほどの図太い威圧感を放ち、誰に対しても協調せずしばしば暴言を吐く。反抗期を超えた、理解不能の問題児として疎まれている。
偶然に春日の秘密を知った後は、一方的に脅して服従を強いる。要求は主に佐伯に絡んだことが多いが、春日の交友環境を壊すことを目的とせず、春日自身の性欲や背徳的な欲求を全てさらけ出して自覚させることで、建前と倦怠に満ちた日常を壊そうと画策する。自称「変態」。
作者曰く春日は自分の一部で、仲村は外見は仲村みう、性格は自分の妻であり、「クソムシ」という言葉は妻からのメールにあった言葉である。
高校編では、春日との心中に失敗し、追われるように千葉県で定食屋を営む母親と同居。家業を手伝いつつ日々を送る娘の現状を母親は「とても落ち着いている」と述べており、物腰は以前に比べると穏やかになっている。また、眼鏡を外し髪型は黒髪のセミロングと容姿も大きく変わっている。
家庭環境
一般的な中流家庭で、やや古びた一戸建ての家に住む。家族構成は温厚な性格の父親と祖母がいる。5歳の時に離婚しており、母親は同居していない。父親は自分なりに娘を気にかけてはいるが、心情を量りかねている様子で、半ばあきらめ気味。家族交流もほとんどなく、自室も殺風景。
佐伯 奈々子(さえき ななこ)
声 - 日笠陽子[5] / 演(舞) - 秋月成美[6] / 演(映) - 秋田汐梨
本作のヒロインのうちの1人。ひかり市立南中学校2年1組→栃木県宇都宮市に住む高校2年生。黒髪のロングヘアーをしたお嬢様風の美少女かつおしとやかな雰囲気で、「スタイルもよい」と男子からの人気は高い。成績も優秀で周囲からはしっかりした優等生のイメージを持たれているが、それ故に悩み事を多く抱えている。内面では周囲の期待に迎合している自分の在り方に漠然とした虚しさを感じており、自己不一致の悩みを抱えているが、同時に性格は真面目かつ保守的で、常識や社交性も十分に持っている。
春日の言動に自我の導きを見出し、告白を受け入れて交際を始めるが、春日が仲村との間に抱えこんでいる煩悶を薄々察していくにつれ、距離感に不安を募らせていく。自分と仲村との間で揺れて意思が破綻していく春日の優柔不断さに失望して一度は別れたが、後に非常識な行動に傾倒して仲村の心を満たそうとする春日の情熱と、二人だけの退廃的な充足を築いている関係を知るにつれ、模範の裏側に抑制し続けていた渇望と、仲村への嫉妬を露わにしていく。そして、春日を手篭めにしようとして秘密基地で待ち伏せし、自ら進んで服を脱いでセックスに誘い春日のペニスを握り自身の膣に当てがって強引に春日と結合することは出来たもののすぐに彼から拒絶され、激憤した彼女は春日と仲村の秘密基地に放火する。その際に春日に処女をあげたことを破瓜の血を足首に伝わせながら仲村に告白して心理的に優位に立とうとするも逆に憐れまれる。その後、髪をバッサリ切りショートヘアになって春日宅を訪問。自ら春日の部屋のベッドに横たわり、再度春日をセックスに誘ったが春日は受け入れてはくれなかった。
翌日、放火事件に関して警察に自首する。
鑑別所に1ヶ月くらい収容されていたと後に本人が語っている。
宇都宮に引っ越し、同地で高校に進学した。彼氏も出来たが当時のクラスメイトの誰にも引っ越し先を伝えていなかった(高校編)。春日とセックスはしたものの、膣内射精されなかった為、妊娠はしなかった。
家庭環境
裕福な家庭に育ち、瀟洒な邸宅に住む。両親とも上品かつ穏やかな性格で、家庭における奈々子や両親の振る舞いから、上流階級的な家風が散見される。
常磐 文(ときわ あや)
演(映) - 飯豊まりえ
高校編のヒロイン。茶髪のボブカットで外見はどことなく仲村に似ており、春日が関心を抱くきっかけになった。みぎわ高等学校の2年生で、春日とは別のクラス。高身長でスタイルのよい美人で男子に人気がある。アルバイト先の他校の先輩・晃司と付き合っているが、上辺しか見ようとしない態度に苛立ちが募り、春日の告白を期に破局を迎える。直後に春日と交際、春日の友人たちとも打ち解けるようになる。
実は文学好きで、小説家志望だが、学校ではいつも友人に囲まれており、快活さばかりが目立つ。春日と知り合う以前は趣味を共有できる者はいなかった。島田荘司筒井康隆のファン。自身もノートに小説のプロットを書いており、春日に激賞されている。

その他の人物

山田 正和(やまだ まさかず)
声 - 松崎克俊[5]
春日の友人。下の名前はアニメで付けられた。女子に対して、スケベなことを考えている。普段は明るいが、春日が避けられるようになった折には手の平を返して素っ気なく振る舞ったり、兄からDVDを借りて喜んだりする。春日のクラスの女子・まゆの給食費が無くなった際に仲村が盗んだのではないかと最初に言い出す。
小島 建(こじま けん)
声 - 浜添伸也[5]
春日の友人。下の名前は原作では登場しない。太めな山田とは対照的に痩せ型である。眉が濃い。春日は嫌がっているが、しばしば佐伯に関する性的な話題を口にしている。春日と佐伯がデートしているのを目撃し、その話をクラスに広める。これがきっかけとなり佐伯は春日と付き合っていることを公表する。
蛭田 亮介(ひるた りょうすけ)
春日の友人。アニメオリジナルキャラクター。眼鏡を掛けている。元々は1巻のあとがきで作者が山田と書くところを「蛭田にはモデルがいます」と誤って記載し、それをアニメスタッフが勘違いして足したキャラである。後に勘違いに気付いたアニメスタッフは削除しようとしたが、本人はどんな風に言ったか覚えていないが作者が「いや、蛭田いていいじゃないですか、面白いですよ」と発言したことにより残留した[7]
木下 亜衣(きのした あい)
声 - 上村彩子[5]
佐伯の親友。ひかり市立南中学校2年1組→群馬県ひかり市に住む高校2年生。気が強くややキツイ性格で、仲村を嫌い春日を軽蔑している。女子のリーダー的存在で自ら率先して場を仕切るが、潔癖な分度量は広くないため、感情が表に出やすく取り乱しやすい面もある。佐伯と春日が交際を始めたことをきっかけに、その関係に疑問を抱くようになる。春日と仲村の放火未遂事件のあと、佐伯とは絶交状態となる。
高校編では、春日の祖父の通夜に出席し、一時帰郷していた春日と再会する。急に引っ越した佐伯のことをひどいと言っていたが、佐伯の近況と彼女が「ふつうに幸せ」と言っていたことを伝えると涙を流す。佐伯を引き止められず、春日と仲村を追い出したことを後悔しており、自分のやったことが本当に正しかったのか分からないでいる。自分は置いてけぼりで町に閉じ込められていると喩える。
仲村の引っ越し先を知っており、春日に仲村の居場所を書いた紙を渡した。
藤原 晃司(ふじわら こうじ)
常磐の彼氏、常磐とバイト先が一緒で北高の3年生。春日のことを浮気相手かと疑っていたが、そうではないと理解する。春日の挙動が変であったことから自分たちの溜まり場に連れて行く(彼らの溜まり場は後に春日の同級生の女子たちから選ばれた人しか行けないと言われる)。
常磐が”絶対に誰も部屋には入れない”としていたのに対し、彼が何度頼んでも入れてくれなかった部屋に春日をあっさり入れたことで不満を持っていた。常磐と付き合って1年経つが、何かを隠しているようで彼女との間にカベを感じていた。
クリスマスイブのバイト中に目の前で常磐が春日から告白され、彼女に別れを切り出される。フラれた後、店長から肩に手を置かれ慰められる。
友部(ともべ)
特別番外編の主人公。2年1組在籍の男子生徒。片思いの相手・香苗(かなえ)に「普通」と言われたことにより、ある行動を起こす。
下山(しもやま)
声 - 飛田展男
2年1組の担任を務める男性の数学教師。眼鏡をかけている。学業に全く無関心な上に暴言を吐く仲村には手を焼いており、気圧され気味の様子。佐伯の体操着が盗まれた日の放課後に学校の周りを不審な男がうろついていたことを生徒たちに話す。

注釈

  1. ^ フルアニメーションではなく、秒間8コマを中心としたリミテッド・アニメーションとなっている。
  2. ^ 全スタッフのテロップが流れたため不明。
  3. ^ スカパー!BS放送)、スカパー!プレミアムサービススカパー!プレミアムサービス光にて無料放送。

出典

  1. ^ 「惡の華」映画化、押見修造「井口昇監督に撮って頂くことは、長年の夢でした」2018年11月10日 閲覧。
  2. ^ 押見修造×高本ヨネコ対談」『別冊少年マガジン』2011年3月号、講談社、2011年2月9日。 
  3. ^ マガメガ”. 講談社. 2011年9月22日閲覧。
  4. ^ “玉城ティナ、伊藤健太郎に“墨汁”をお見舞い『惡の華』夜の教室シーンの裏側”. CinemaCafe.net. (2019年10月2日). https://www.cinemacafe.net/article/2019/10/02/63751.html 2021年2月3日閲覧。 
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z 『オトナアニメ Vol.30』洋泉社、2013年7月15日発行、116頁、ISBN 978-4-8003-0175-8
  6. ^ a b c “舞台「惡の華」春日役は清水尚弥!ヒロイン2人は花奈澪と秋月成美”. コミックナタリー. (2016年3月23日). https://natalie.mu/comic/news/180671 2016年3月23日閲覧。 
  7. ^ 惡の華Blu-ray・DVD版1巻の特典映像「メイキング惡の華 第一回」の「原作者から監督への要望」より。
  8. ^ 第4巻20話。
  9. ^ 第6巻32話。
  10. ^ 史上初・全編ロトスコープのテレビアニメ『惡の華』4月放送開始”. ORICON STYLE. オリコン (2013年3月29日). 2013年4月7日閲覧。
  11. ^ 井上潤哉. “[Power Push] アニメ「惡の華」原作者・押見修造と監督・長濱博史が対談 (1/3)”. コミックナタリー. ナターシャ. 2013年4月6日閲覧。
  12. ^ 「惡の華」上映会は大盛況、「あえてリミテッドアニメに」”. コミックナタリー. ナターシャ (2013年3月25日). 2013年4月25日閲覧。
  13. ^ 惡の華Blu-ray・DVD版5巻の特典映像「メイキング惡の華 第五回」の「役者の顔をそのままトレースする」より。
  14. ^ 惡の華Blu-ray・DVD版1巻の特典映像「メイキング惡の華 第一回」の「原作者から監督への要望」より。
  15. ^ アニメ「惡の華」実写映像急きょ配信決定 ニコ生4話配信後に”. ねとらぼ (2013年4月30日). 2013年5月5日閲覧。
  16. ^ 「惡の華」の過去描いたドラマCD、仲村の罵声集も収録”. コミックナタリー (2013年5月1日). 2013年10月2日閲覧。
  17. ^ 劇団た組。が押見修造の人気マンガ「惡の華」を舞台化”. ステージナタリー (2016年3月9日). 2016年3月9日閲覧。
  18. ^ 『キネマ旬報』2020年3月下旬特別号 72頁



悪の華

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/25 08:39 UTC 版)

悪の華』(あくのはな、フランス語: Les Fleurs du mal)は、シャルル・ピエール・ボードレールの詩集(『悪の花』とも)。はじめ題名は『冥府』となる予定だった。


  1. ^ 回想を交えた評伝。訳書は『ボードレール』(井村実名子訳、国書刊行会、2011年)。
  2. ^ 副読本に、多田、杉本らによる『ボードレール 詩の冥府』筑摩書房、1988年。のち『杉本秀太郎文粋Ⅰ エロスの図柄』筑摩書房、1996年
  3. ^ 安藤元雄『『悪の華』を読む』がある、水声社、2018年
  4. ^ 阿部・福永・齋藤も、ボードレール論がある。各項目参照。


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