志摩民俗資料館 展示

志摩民俗資料館

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/30 05:41 UTC 版)

展示

収蔵資料数は約6,500点[8]、展示品数は約2,600点であった[1]。所蔵資料の95%が地元の志摩郡5町(浜島町大王町志摩町、阿児町、磯部町=現・志摩市)、鳥羽市度会郡南勢町(現・南伊勢町)からの寄贈品であった[9]。資料の収集は、近鉄グループに所属する地元採用の社員の自宅からまず民具等を集め、次第に社員の親戚や近所の住民に協力を求める方法で行われた[10]。その後、各集落老人会の協力を仰ぎ、資料収集員が各戸を訪問して民具の収集に当たった[11]。資料収集は提供者間の不平等をなくすことと、開館後も継続的な協力を得ることを考慮して、「購入」ではなく「寄贈」の形をとることを終始一貫した[12][注 2]。資料の寄贈を持ち主から取り付けた後も資料の運搬・洗浄・保管には多くの困難があった[14]

常設展示室は「海に生きる志摩」・「暮らしと道具」・「志摩のまつり」の3つあった[1][4]。このうち、第1展示室の「海に生きる志摩」と第2展示室の「暮らしと道具」は開館準備段階から常設展示として決まっており、第3展示室は企画展用であった[15]。「暮らしと道具」では農業等の生業に用いる道具と衣食住の道具が展示される展示室で[2]、収集できた資料から展示の構成が検討されたため、最も展示方法が難しい展示室となった[16]。「志摩のまつり」では、伊雑宮御田植祭わらじ祭り・潮かけ祭り・安乗文楽などをパノラマ展示で再現していた[17]学芸員が1人しか配置されなかったことや、近鉄興行が十分な予算を資料館に割かなかったことから、展示内容は開館から閉館までほとんど変えられることはなかった[4]

常設展に加えて企画展も開かれていた[1]。例えば神宮式年遷宮の催行された1993年(平成5年)には「伊勢神宮の社と神領展」と題し、伊勢神宮の125社の紹介や祭祀に用いる土器の展示などを実施した[18]。第1回の企画展(特別展)は「暮らしのなかのやきもの」であり、日本観光文化研究所が収集していた陶器類や志摩地方でよく使われる常滑焼を新たに入手して展示された[19]。企画展は常設展を補う役割を果たすと同時に、収蔵資料の名称や使用法の調査を進める上でも効果を発揮した[9]。こうした企画展は年4回[注 3]行われ、体験型のイベントも毎月行われていた[1]。毎月の体験型イベントは主にイベントホールで行われ、郷土史の啓蒙活動の場となっていた[9]

展示方法は、模型写真・実物を用い[1]、ケースに収納せずに来館者が手で触れることができるようにしているものが多かった[9]ジオラマによる大掛かりな生活の再現もあった[9]


  1. ^ 「」内の文章は、近鉄興業が報道各社向けに送付した文書の引用である[3]
  2. ^ 資料自体は無償で入手したが、後から謝礼品を持って挨拶に赴いている[13]
  3. ^ 年2回になることもあった[9]
  1. ^ a b c d e f g ワークス 編(1997):97ページ
  2. ^ a b c d e f g 西城(1999):75ページ
  3. ^ a b c d e f g h i "志摩民俗資料館が休館へ 入場者数が減少、来年1月に 阿児"1997年12月19日付朝日新聞朝刊、三重版
  4. ^ a b c d e f 日本展示学会 展示学講座実行委員会 編(2001):185ページ
  5. ^ "星の動きで生活考えて 江戸期の伊勢暦11点展示 阿児町"1997年8月7日付朝日新聞朝刊、三重版
  6. ^ 矢沢(1981):114ページ
  7. ^ 矢沢(1981):114 - 115ページ
  8. ^ a b c "「民俗資料を引き取って」 志摩の資料館閉鎖"1998年2月1日付朝日新聞朝刊、三重版
  9. ^ a b c d e f g h i 西城(1999):76ページ
  10. ^ 矢沢(1981):122ページ
  11. ^ 矢沢(1981):123ページ
  12. ^ 矢沢(1981):123 - 124ページ
  13. ^ 矢沢(1983):63 - 64ページ
  14. ^ 矢沢(1981):125 - 126ページ
  15. ^ 矢沢(1983):66ページ
  16. ^ 矢沢(1983):70ページ
  17. ^ 寺尾(1985):136ページ
  18. ^ "伊勢神宮の125神社紹介 志摩民俗資料館"1993年4月9日朝日新聞朝刊、東海総合25ページ
  19. ^ 矢沢(1983):75, 79ページ
  20. ^ "近鉄興業、近鉄鵜方駅前に民俗資料館を開設―志摩の民俗・工芸を展示"日経産業新聞1980年7月19日付、10ページ
  21. ^ 矢沢(1981, 1983)
  22. ^ 矢沢(1981):111 - 114ページ
  23. ^ 矢沢(1981):118ページ
  24. ^ 矢沢(1983):78ページ
  25. ^ 「志摩半島の生産用具及び関連資料」が国の登録有形民俗文化財に登録されました”. 志摩市教育委員会事務局生涯学習スポーツ課 (2016年3月). 2016年8月16日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2016年8月16日閲覧。





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「志摩民俗資料館」の関連用語

志摩民俗資料館のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



志摩民俗資料館のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの志摩民俗資料館 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS