差分の差分法 差分の差分法の概要

差分の差分法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/09 08:49 UTC 版)

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差分の差分法のイメージ

一般的な定義

差分の差分法では2時点、もしくはそれ以上の時点で計測されたデータを必要する。図の例において、処置群は線Pで表現され対照群は線Sで表現されている。どちらのグループも処理を受ける前(つまり独立変数もしくは説明変数)の時点1における成果変数(非説明変数)が計測され、点 P1 と S1 で表されている。処置群は処置を受け、両方のグループはその後の時点2において再び測定される。時点2における処置群と対照群の差(つまり、P2 と S2 の差)は処置の効果を説明できない。なぜならば、処置群と対照群は時点1において同じ点から出発したわけではないからである。差分の差分法はそれゆえに二つのグループ間の成果の変数の"普通の"差(もしどちらのグループも処置を受けなかった場合の差)を計測する。その差は点線Qで表される(P1 から Q への傾きは S1 から S2 への傾きと同じである)。処置効果は観測された成果変数と"普通の"成果変数の差(P2 と Q の差)である。

正式な定義

以下のモデルを考える。

ここで は個人 を所与とした下での被説明変数である。 の次元は例えば国と時間を表している。 のそれぞれの垂直的な切片である。 は処置状態を示すダミー変数であり、 は処置効果、 は誤差項である。

ここで

,
,
,
,
,

とし、単純化のために かつ とする。すると

完全に説明変数が外生的であるという仮定の下で

となる。一般性を失わずに、 かつ であると仮定すれば、差分の差分法による推定量は以下のように与えられる。

,

ここでこの推定量は が示唆する処置の処置効果として解釈できる。

仮定

最小二乗法におけるすべての仮定は差分の差分法でも同じく当てはめられる。加えて差分の差分法は平行トレンドの仮定: parallel trend assumption)が必要になる。平行トレンドの仮定とは の値が異なる で等しいということである。上の正式な定義が正確に現実を反映しているという仮定の下では、平行トレンドの仮定は自動的に成立する。しかし であるようなモデルの方がより現実的ではあろう。

処置効果とは観測変数 y と処置を受けなかったとして平行移動した y の値の差である。差分の差分法のアキレス腱はあるグループにおいて処置ではない何かが変化を与えたものの、他は処置群と同じである時で、これは平行トレンドの仮定の破綻を意味している。

差分の差分法による推定量の正確性を保証する為に、二つのグループの個人の構成が時間によって変化しないと仮定することがある。差分の差分法を用いる際には、結果を信用ならないものとする多様な問題、例えば自己相関や Ashenfelter の dip など、を考慮して取り扱う必要がある。


  1. ^ Angrist, J. D.; Pischke, J. S. (2008). Mostly harmless econometrics: An empiricist's companion. Princeton University Press. ISBN 9780691120348 
  2. ^ Abadie, A. (2005), “Semiparametric difference-in-differences estimators”, Review of Economic Studies 72 (1): 1–19, doi:10.1111/0034-6527.00321 
  3. ^ Bertrand, M.; Duflo, E.; Mullainathan, S. (2004), “How Much Should We Trust Differences-in-Differences Estimates?”, Quarterly Journal of Economics 119 (1): 249–275, doi:10.1162/003355304772839588 
  4. ^ Card, David; Krueger, Alan B. (1994), “Minimum Wages and Employment: A Case Study of the Fast-Food Industry in New Jersey and Pennsylvania”, American Economic Review 84 (4): 772–793, JSTOR 2118030, https://jstor.org/stable/2118030 


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